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トールボーイ型スピーカーはロックを上手く鳴らせない



 カーディナルシリーズに続いてマジックシリーズというスピーカーの第1弾を現在開発中ですが、次の三つのテーマを持って取り組んでいます。

 @ スタンドに乗せるのは地震の時に心配だという声がありましたので、ミュージカリティーと同価格帯のフロアー型を作る事に決めました。

 A カーディナルシリーズは完璧主義を貫いたフルレンジスピーカーですが、もう少し鳴らし易いスピーカーも必要だろうと思ったのが二つ目の理由です。

 B 三つ目はトールボーイタイプでありながら、トールボーイ独特の重苦しくて抜けの悪いドロンとした音を払拭する事です。即ちカイザーサウンドの技術力の高さを証明する為でもあります。

 以上のようなテーマを元に開発に取り掛かりました。そして一つだけ条件を付けました。それはエンクロージャーの開口部を下に向けて大きく取る事です。



 振動の方向性と付帯音放出を考え抜いた設計

 半月ほどで図面を書き上げて来ましたが、その奇抜なデザインを見てさすがの私もちょっとたじろぎました。

 私はすぐに返事をせず、しばし考えました。そこではたと気がついたのです。今までに見た事も無いような形状や構造を考え発表するという事は大変勇気の要る事です。

 何故ならば、結果が悪ければ責任の全ては自分に跳ね返って来るからです。あれこれ注文をつけるのは簡単ですが、ゼロから考えたその発想力と勇気を尊重し、何一つ変更する事無く、「それで行こう!」と決めました。

 その設計の意図であり理念には説得力があり、なるほどと納得の行く事ばかりでした。その詳細については次回に触れるとして、ここではトールボーイの現状分析について口を開けてみたいと思います。


 聴く音楽とスピーカーが合っていない

 現代のスピーカーはトールボーイタイプが主流ですが、そのトールボーイ最大の弱点は、ビートの利いたロックが気持ち良く鳴ってくれないところにあります。これはどの製品という事無く、トールボーイタイプ全般にいえる事ですが、その原因は高さ、幅、奥行きのいびつな寸法比によるものがほとんどです。

 ホームシアターを楽しむようになった頃からこのトールボーイが出現し、特に投影型スクリーンや大型ディスプレイの売り上げと同時進行で増えるようになりました。

 他方ソフトの売れ行き面に目を向けますと、ポップスやロックが全体の80%以上を占めていて、残りがクラシック、ジャズ、その他となっています。それを考えると、消費者のニーズとスピーカーの魅力度の関係が背を向け合っている訳ですから上手く行くはずがありません。

 トールボーイタイプは音が良いから伸びたのではなく、スピーカーの幅をスリム化する事によって、物理的に収まりが良いという設置上のメリットが大きかったのと、どこのメーカーもがトレンドと受け止めそれに向けて一斉に走ったのが本当の理由です。

 こと音作りに関して総括するならば、動機不純であったというか、鳴り難い方式だという事を見抜けずに暦ばかりがめくり続けられているのです。

 どちらにしても、トールボーイでノリの良いスピーカーに私は出会った事がありません。

 オーディファイルの皆さん!、特にロック好きの方!、トールボーイタイプのスピーカーには心して向き合って下さい。


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