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再生現場から感じるソフトの問題点



ピュアーオーディオの世界で定着しなかったグラフィックイコライザー

 オーディオの再生側、すなわちピュアーオーディオの世界から見た場合にはグラフィックイコライザーは定着しませんでした。そうした大勢の流れと同じように私もグラフィックイコライザーに興味を持つことはありませんでした。それは仮に導入したとしてもどう調整したものが理想なのか、また下手にさわって元の音楽をスポイルしてしまってもいけない・・・。そんな自信の無さや、「いくら調整しても答えが出ない世界だ」と思った私の固定観念と先入観が大きかったようです。


「イモーショナルな部分にまで影響を及ぼす

 しかし、'04年の秋にカーオーディオの世界に参入する事になったのをきっかけに、否応無しにグラフィックイコライザーと向き合うようになりました。それまではある帯域のレベルを上げ下げしてレベルバランスを取るぐらいの物としか思っていなかったのです。それが調整していくうちに間違いである事に気がつきました。音楽の抑揚やイモーショナルな部分にまで影響を及ぼす事が分かったのです。


奥の深いグライコ調整

 情けないかな、使う前の段階から無意識下で「自分には無理だ!、出来ない!」と決めて掛かっていたのです。やってみて出来そうな感じがすると、楽しくなり、嬉しくなり、俄然やる気になる子供の感覚と同じです。正直言って、難しいなんてものじゃありませんが、それだけにだんだんと音楽のエキスが抽出されてくる様子を感じれると夢中になります。また、触ると崩れる、そんな連続です。

 試みる度に多様な変化をするのですが、その中から「何か法則性はないものか?」私の脳の集中はピークに達します。燃料メーターの針も目に見えてどんどん減り、ふと気がついた時には夜は完全に明けています。10年程前にカイザーゲージの元となるスピーカーアタッチメントとの格闘をしていた時に似ています。

 2台のデモカーのイコライジング調整に掛けた時間は驚きに値するほどです。それぐらい短期に集中して取り組みました。そのイコライジング調整というものは大変奥深く、ある帯域のレベルが一ヶ所0.5デシベル違っただけでも雰囲気がガラッと変わってしまうほど怖いのです。

 「音楽のエッセンスが抜け落ちているのはこれが原因だったのだ!」。

 これで長年分からなかった音楽ソフトから感じる謎がやっと解けたと思いました。


マスタリングが拙いとソフトを買いたくなくなる

 買えども買えども満足のいくソフトに出会えなかったのは、ディスク製作のマスタリング時においてのイコライジングの拙さからくるものがかなり占めていると思います。特にこの数年あたり前からそれが顕著な傾向にあります。そこらあたりを境目に私のディスクを買う量が極端に減って行ったのです。

 また、ビット数を上げたりサンプリング周波数を高くとるなど色々な試みでリマスタリングされ再発売になるアルバムがあります。確かに音そのものは良くなったようだけど、肝心な音楽の魅力が失われてしまったと感じるケースが多いのは私だけではなく音楽ファンにも共通のようです。

 全てがそうだとは言いませんが、元の方が音楽のエネルギーが凝縮されていて良かったと思うことが多いです。

 
 


 左のディスクはオリジナルマスターテープからリマスタリングした物で、これは初版の物に比べると数段良かったですが、右のディスクは24bitでリマスタリングした物で、これに関してはいずれも音楽のエネルギーが薄れ、ただきれいになだけで音楽の魅力は遠ざかってしまいました。



  カーペンターズとサイモン&ガーファンクルのディスクです。初版時にはLPの音に比べてCDの音はひどいものでしたがこの2枚は最近見事に甦ったディスクです。

 ハービー/ハンコックの名盤Maiden Voyageは同じRudy Van Gelderの手によるものですが、元の方が聴き手にグッと来るものがあります。


ミックス手法も大きな問題

 技術革新による高性能化はいつでもどこでも手軽に音楽を楽しめるようになりましたが、その一方で音楽性の欠落も見逃せません。特に問題なのは別々にテイクした物をミックスする方法です。性能の良いステレオで再生すると、うそ臭さがすぐに分かってしまいます。それは富士山の写真の上に人物像を張り合わせた合成写真と同じような不自然さなのです。


イフェクターを使った度の過ぎた低音の量

 ラジカセやミニコンポで聴いた時に音が良く感じるようにという狙いが根本の原因だと思うのですが、特にポップスやロックのジャンルではあり得ないような低音がドスンドスン鳴るディスクが多いのも最近の傾向です。テレビのコマーシャルに似た傾向なのか、注目を引く為に音を大きく入れて迫力や音の良さを訴えようとする手法にも閉口します。

 こうした風に幾つもの問題点を抱えたディスクですが、リスナー側からの願いは素直な音作りを望みたいものです。料理に例えていうなら素材の美味しさが分かる料理にして欲しいのです。

 化学調味料主体の料理は御免です。


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