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8畳洋間と八畳和室を合体させるオーディオルーム・リフォーム
(タンノイ・カンタベリー)

Y.Uさんとは10数年のお付き合いになります

ご自宅の隣にあるもう一軒の家を、オーディオルームとしてリフォームしたいとの相談を受けました。八畳の和室と8畳洋間を一部屋にする案です。これは幅に対して奥行きの寸法が長くなる為に音の調和という面で問題があります。最終的には10数センチ縮めて音の調和を図りました。

可能であれば高さ方向も20センチは拡張したいところです。天井を解体してみない事にはその寸法も決めらません。そうしてる内に、“予期せぬ問題が発生!” 梁が裂けていて、二階の座が抜け落ちる恐れがあるというのです。

鉄骨補強が必要とのこと。当初のサウンドデザインを大幅に変えざるを得ません。急遽新幹線で京都まで打ち合わせに走りました。梁の構造を事前にFAXで貰っていましたが、現場で即興的な打ち合わせとなるのは避けられません。


設計には細部の拘り

その梁の構造ですが、右の壁に向かってコの字型に開いた形なので、左右のスピーカーの鳴り方に取り除くことの出来ない瑕疵が生じるのは目に見えています。この場合、90センチと270センチ。即ち常に1と3の固有固定振動となり、ステレオ展開が上手く行きません。

下の左の図面では既に新案での梁を描き込んでいます。右のスケッチにあるように、AとBを結ぶ梁を追加して音のバランスを取ります。


このように理に目を向けなければ、どんなに高価な機器を用意しようとも不愉快な音がつきまといます。今回のリフォームの肝はこの、“天井梁をどう処理するか?!”に掛かっています。

振動の逃げ道を用意するために対称に近い形で僅かに非対称としました。我ながら天晴な閃きです。ここが決まれば出来る事がどんどん見えて来ます。一気に軌道修正が図れます。


怪我の功名宜しく、元の設計よりも随分良い部屋が出来そうです。その分予算も嵩むことにはなりますが、後で後悔するようでは取り返しがつかないので、Y.Uさんには思い切って貰いました。

傑作なのは、梁のT字・十字ジョイント部の振動の走りといなしの手法であります。波模様のザグリ加工を施した板を振動促進材として利用し、どんな音楽表現にも対応出来る長さの組み合わせを仕込みました。

その梁の設計変更に伴い、サウンドフロアーの前後長も1.8kaiser(189センチ)から2.2kaiser(231センチ)に広げました。これは部屋全体に及ぼす音楽の総エネルギー量を考えての事ですが、この変更が後の工事を信じられないほど難しいものにしてしまったのです。


あらゆる表現が可能となるように1枚1枚の長さを導き出すという施工方法になったのです。集中するあまり、施主のY.Uさんから質問を受けても返事すら返す余裕がないほどでした。こんな経験は後にも先にも初めてです。


施工順は、梁 ⇒ 壁 ⇒ 床といった風に普段とは正反対になったのが今回の特徴です。後にも先にもこんな手法は無いものと思います。従って、梁の波板貼りが終わった時点で、“この勝負は貰った!” と、思えたのでした。


筆舌に表し難いほどの難しさだった!

その疲れが取れるのに五日半を要しました。

余程変な寸法比の部屋だったのでしょう・・・

身体がそれを証明しています。

追い詰められた時ほど力を発揮する自分に驚きです。


スピーカーの背面壁に貼る板は年輪の成長に沿って順番に裁断、いわゆる戸籍簿管理した、“志賀高原原木杉”を使います。壁に覗く屋内電源配線も電気工事屋さんに音の良い長さで切って貰う為にマジックで記しておきます。カイザーサウンドは“音のカラクリ”を解明すべく、こうした細かいところまで研究しています。


私達の仕事が終わった後に内装屋さんが床と天井の一部にコルクを貼ることになっています。内装が完成し機器類を運び込み、音慣らしも済んだ頃に最終的なセッティングに伺う予定です。

5月末に完成して伺ったのは8月3日。とてもきれいに仕上がっていました。オーディオ機器が部屋に収まると雰囲気がすっかり変わります。木材の多用と平面部が多いとライブでセッティングが難しくなります。

本物件はコルクを一部に使った事で、セッティングがかなり楽に出来ました。

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