トップカイザーサウンドマランツPA-01モディファイ実験記マランツPA-01モディファイ実験に参加して

マランツPA-01モディファイ実験に参加して





 今日は貝崎さんよりお声をかけていただき、オーディオ仲間のNさんと共に楽しい実験に参加することとなりました。PA-01の音は以前Nさん宅のシステムで聴いたことがあります。派手さはないものの素直な音楽表現力を持ったいいアンプだという印象を持っておりました。

 カイザーサウンドの店内に一歩入って再びその音に触れ、そのときの印象が間違ったものでなかったことを再確認できました。普段店で耳にしている最高級の真空管アンプと同じような伸びやかさでスピ−カーを鳴らしています。人間に例えるならばやんちゃで元気一杯だけどもいい子といった感じでしょうか。


 シャーシーの内部を見せてもらいました。中央後部にデンと大きなトランスが腰を据えています。その前方には横一列に放熱板があり、それらのスキ間に回路基盤が数枚ほぼ左右対称の形で配置されています。その質素ながらもキチンと配列された内部の様子を見ると、そこから出て来る音とイメージが重なるのが当然と言えば当然、不思議と言えば不思議な事です。

 今日の実験のメインはトランスの取り付けネジによる音の変化を調べる事です。目の前に6個のネジを並べてもらいました。ステンレスネジ、ユニクロという青白いメッキの鉄ネジ、クロメートという金色っぽいメッキの鉄ネジの3種類。それぞれがトラスというネジの頭が丸っこい形状のものと、バインドという平べったい形状のものとがあり、3X2=6種類というラインアップです。


 貝崎さんから6種類のネジの名前を書いた紙を渡されました。6種類のネジの音の良さの順位予想をしろとのことです。なかなか難しい問題ですが、多分頭が丸くすそが自然と拡がっているトラスネジのほうが頭が平べったくつぶれた様なバインドネジよりも音が良いであろうという事は何となく想像がつきます。

 ネジの材質の方は最も高級感があり(実際価格は3〜4倍)、非磁性体のステンレスが一番、金色っぽい暖色系のクロメートが二番、ユニクロが安っぽいので最後かな・・・といった感じでしょうか。

 それでは実験開始。初期状態でトランスに取り付けてある純正の変形六角形のネジを4本取りはずします。
 そしてトランスとシャーシーの間にローゼンクランツのマイクロベースMB-18をキチンと方向性を揃えて4個挿入し、その上から先ずトップバッターのバインドのクロメートネジを締めていきます。

 最初はネジによる音の違いが分かるだろうかと一抹の不安があったのですが、スピーカーから音が出た瞬間にそんな不安はどこ吹く風、あまりの音の違いにビックリして思わず腰を浮かしてしまいました。音の伸び、音場の拡がり、音の流れのスムーズさが段違いです。

 テストソースとして使っているのは今局地的に大ブレークしているミッチーこと三橋美智也です。ミッチーの楽しい歌声が目の前にグンと迫ってきます。ネジ1本(本当は4本+MB-18)でこんなに音が変わるなんて・・・、

 振動の制御による音の変化の大きさに毎度驚かされます。

 二番手は同じくバインドのユニクロネジ、こちらは音に生気が失せて、音楽が暗く、寂しく感じるようになります。暖色系のクロメートネジ、青白い寒色系のユニクロネジ、メッキの色のイメージがそのまま音として伝わってくるようです。スゴイ!スゴ過ぎます!!
 つづいては、期待の星ステンレスネジ、世間一般で最も評価の高い材質です。しかし残念ながら音はハズレ。なんだか音が堅苦しくチグハグに聴こえます。

 貝崎さんの解説によると、トランス、シャーシーが鉄製なのに対しその間で振動の橋渡しをするネジがステンレスという異種金属だと、振動のモードの違いからお互いの呼吸が合わずリズムが狂ったようになるとのことです。確かにそういう音ですので、そういう理論が成り立つのであろうと思われます。しかし決してステンレスが悪いといっているのではありません。良い悪いではなく、あくまでも適材適所、周りの物とのバランスが大切という事なのでしょう。

 次からはトラスネジ、先ほどは真打ちだったステンレスネジが今度は前座のトップバッターとして登場です。やはりトラスの形状から見る通リ、音がスーッと自然に拡がっていきます。先ほどのバインドネジと音の伸び、音場情報の豊かさがまるで違います。

 しかし、パッと聴いてすごいと感じるのですが、やはり鉄とステンレスがどこかでケンカをしているようです。今ひとつ音楽がウソっぽく聴こえてきます。

 次はトラスのユニクロネジ、これはいいです。音の拡がり、音楽性ともバッチリです。ただやはり少し寒い感じがして、歌唱力抜群のミッチーがお金のため、義務で歌を歌っているような感じがします。
 最後は大トリ、トラスのクロメートネジ、これは聴く前から結果は分かっていましたが、実際聴くと予想どおり、オーディオ的にも満点です。今まさに目の前で楽しい歌謡ショーが行われているようです。

 一般的にトランジスターのアンプは情報量が多くオーディオ的には魅力があるのだけれど、音の生気、人肌のぬくもりといった表現力は高級な真空管アンプに一歩も二歩も及ばないという印象があります。

 しかし今聴いているマランツPA-01は余分な響きが全くなく、あくまでストレートに音楽の喜びをその小さなシャーシーをいっぱいに使って表現してくれています。定価15万円のアンプからこんな音、音楽が出てくるなんて・・・。

 超重量急の大型アンプは何のために必要なのでしょうか。そんな疑問が湧いてきます。

 モディファイ実験はまだ続きます。今度は内部配線のチェックです。各基盤を繋ぐ内部配線はほとんどすべてコネクターにより着脱可能になっています。それを一本づつ外し、貝崎さんが手に持って方向性のチェックをします。逆方向になっているものは向きを直し、そのときにケーブルのねじり方がきついものは、ねじり方を少しゆるめ、また全くねじっていないものは、適度なねじりを加えていきます。

 そのほかにも結束の方法を変えたり、結束バンドを白から黒いものへと変えたり、基盤の取り付けネジの方向性をチェックしたりと少しずつ細かな工夫を加えていきます。

白の結束バンドは音が散る感じがします。 黒はエネルギー感タップリの音がします。

 そしてその度に音は、伸びやかでストレスなく音楽を響かせるようになり着実に進化をしていきます。PA-01の可能性は一体どこまで大きく拡がるのでしょうか。音が良くなる毎にスピーカーの存在を忘れてしまうような自然さが加わってくるようです。ヴォリュームを上げなくてもリスナーの方へ音が空気のようにフワリと届いてきます。

 音、特に音楽をいい状態で聴こうと考えるのであれば、いい機械を揃えるのではなく、今あるものの力を充分に活かすべく工夫をする事が重要なのではないか、そんなことを教わったような気がします。

 他にも色々な実験をしました。ローゼンクランツの最新作、超弩級電源タップ「ナイアガラ」の比較試聴です。以前からある同じくローゼンクランツのPW-3と比べてみました。さすが同じブランド同士、音のバランスは驚くほど似ています。しかし音の拡がり、情報量、解像度、すべてのファクターで大きく差がつきます。トランスのネジと同様、電源タップ一つでこれだけ音に違いが出るとは誰しも想像できないことでしょう。

2002年1月5日発売予定のNIAGARA

 しかし、もっと驚いたのはスピーカーターミナルとスピーカーケーブルの端末の間に入れるスピーカーアタッチメントです。長年オーディオをやっていると、信号経路に直列で何かグッズを加えるということには大きな抵抗を感じます。

 いかに貝崎さんがおすすめのものでも、なかなか体が受け付けません。しかし、実際に取りはずしてみてビックリ、スピーカーアタッチメントがないとまるで音楽が命を失ってしまったかのようです。音が沈み、スピーカーのコーン紙から音が離れてきません。

 片チャンネルだけ外してみると、そのチャンネルだけ音が鳴っていないように感じるほどです。この差は極めて大きいものです。電源タップの差の2倍から3倍はありそうです。

スピーカーアタッチメントSP-8N(P)

 もしアンプやスピーカーを新しい物に変える計画がおありならば、是非このスピーカーアタッチメントを加える事を検討してみられるといいでしょう。幸いローゼンクランツには機器の貸し出し制度がありますし。

 本当にオーディオの世界は人生と同じ、奥が深いですね。カイザーサウンドへ行ったのが夕方の6時半、盛り沢山の実験が終わり店を出て家路に着いたのが夜が白み始めた朝の7時、丸半日夢の世界を楽しませていただきました。眠気はピークを迎えていましたが、帰り道自転車をこぐ私の胸はホット、ホットでありました。

〜完〜  めでたし、めでたし


← Back     Next →