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RK-AL12/Gen2 発売によせて

RK-AL12/Gen2 発売によせて

ローゼンクランツが理念とする音への追求姿勢を、生い立ち時以来暖かく見守って下さっているのが評論家の林正儀氏であれば、その音の進化の過程を身近で体験頂いているのが村井裕弥氏です。

2010年秋ハイエンドショウでのRK-AL12/Gen1の発表に際しては、村井裕弥氏に講演をお願いしました。そのハイエンドショウの最後のデモに寺島靖国氏が顔を覗かせて下さり、RK-AL12/Gen1の音に対するコメントと貴重なアドバイスを頂戴する事にもなりました。


寺島靖国氏のRK-AL12/Gen1 に対する感想

「フルレンジ一発でこれだけ低音が出るんだぞ!」
「それがすごいのはわかるが、フルレンジなんだからまず中域」
「この作った感じの見せ付ける低音を削って」、
「フルレンジたる中域の音と力にシフトすべき」
「フルレンジで出来る中域がないなら、フルレンジらしからぬ低音はいらない」

このように寺島音楽観にグウの音も出ない鮮やかな理詰めで、瀬戸際まであっさり持込まれた挙句ど真ん中をブン殴られて、生まれ変わりを果たしたのが RK-AL12/Gen2なのです。30万という価格設定の中で開発に取り掛かった訳ですが、技術面に於けるコストを度外視する方針にて再チャレンジしたのです。


当時の回想

男子たるもの更に上回る結果で返したいわけで、新たなRK-AL12は更にどこを目指すべきなのか。話の流れ上、当たり前のフルレンジとして出来が良い物など作っても、もはや自分に恥ずかしくて人様には聞かせられなくなってしまったのです。「寺島さんもやってくれたわい」。これが正直なところでした。ステレオ屋は音の借りは音で返すしかない。


Gen2へ新たな音のテーマ

大口径フルレンジからは分割振動のせいで、音階感をキープした低音の迫力は不可能である。これがオーディオの定説なのですが、だったら誰にも出来なくても俺がやってみせる!。そんな思いからRK-AL12の設計は始まっているので、今更低音の量を削るわけには行きません。

そうなると、フルレンジ一発でしか成し得ない中域の自然な音色のつながり、それと特に中域での倍音構成に分断のない力強さ。寺島さんの指摘にもあったこの二点の完璧さは外せない中で更に、重低音まで音階と階調感を自然でウォームに保ちながら達成する。という業界初の難事業に挑戦する事になったのです。

そして仮に上記の中音への目標と低域への目標が達成出来た時には、"大口径"フルレンジユニット自体の根本的な泣き所である、高域における聴感上の力感の無さ。それが通常のフルレンジスピーカーの何倍も聞き劣りしてハイレベルな低音再現がゆえに余計に悪印象の元になってしまうバランスとなるのです。

これを回避する為には、低域・中域に見合う水準として、"高域の聴感上の力感を最低で5dBは向上させる。"こんな無理難題まで3点セットで達成しなければいけないという設計要件となったのです。

以上が「RK-AL12/Gen2とはどんなスピーカーなのか?」という内容であります。


具体的な解決案は?

ここから技術的な解析の過程を説明させて頂きます。低音の音階感をクリアーかつアナログフィーリングで聞かせるところまで狙うとなると、低音の量感を簡単に調整する為の救世主である吸音材が一切使えなくなる。という事になってしまいます。この時点で並みの設計理論では低音の位相感が狂って眩暈がしそうな音しか出ない。ここの解決方法をこれから述べてみたいと思います。


両側板下部に配した幾何学ブロック

次に中域のキレ、張り、ヴィジブルな音の輝度、これを増幅したあげくに、高域の力感にハイファイな解像度の中で瞬間瞬間に位相補正を行う自動調整機構。これをエンクロージャー内部に組み上げる必要が生じます。

これをこなさないと低音の位相整合が高レベル故に発生してしまう圧力エネルギーの吸引渦に、運悪く偶数倍音が選択的に吸われるという最悪に安っぽい音になる悪条件現象が成り立ってしまうからです。

しかし当社には過去にハミングバードという製品を開発したノウハウがあるので、エネルギーを受け止め、位相整合を施した上で順次交通整理して送り出し再利用する事も可能です。ハミングバードはエンクロージャーの外側に向かって機能する物であったのを、エンクロージャー内部に向かって機能するように改変を行えば解決する訳です。それがこの内部用ハミングバードです。

箱内部のハミングバード

そして、全体の目的機能構造が最大限にチームプレーを発揮出来るように、エンクロージャー内における気流の円滑な捌きと、エネルギーの粗密の移行を極力スムーズに平滑化させる仕掛けがあれば言う事なしとなるので、エンクロージャー上部奥へ工夫された階段形状の気流コントローラー的な構造物が仕込まれる事となったのです。

振動放出フィン(ハミングバード)

さらに細やかな配慮としてバインディングポストの取り付け方法も独特の発想に基づいていると言っていいと思うので紹介させて頂きます。

2点止めバインディングポスト

ユニットからエンクロージャーが受ける振動余波の影響を、バインディングポストと結線されたスピーカーケーブルが極力受けなくてすむように、いったん薄仕立てのプレートに取り付ける形式にして、そのプレートをなんと逆に振動が暴れそうな僅か2点止めによってエンクロージャーに取り付ける構造を採用しました。

何故こうなったかと言いますと、四隅全てをねじ止めなり全周を接着なりという一般的な手法を採ってしまうと、要は確実に取り付くという観点からは最高解なのですが、エンクロージャーを通してユニットからの振動エネルギーの影響を受けるという観点からは「逃げ場がどこにも無い」という、最低解なのです。

ここに目を向けあらゆる要素を考慮に入れると、「止まっているようで止まり切っていない。」という禅問答状態の中に理想解がありそうだ。という思考になる訳です。この構造はニーアクションや体軸を中心としてバランスを取るサーフィンやスケボーをイメージして頂くと解って貰い易いかもしれません。

・・・とこんな風に、数々の振動と気流の問題に正面から立ち向かい、独自の技術を真っ向からぶつけた野新作がこのRK-AL12/Gen2であります。


物質文明の末期的症状

しかし、何故そこまでして現代オーディオに戦いを挑むのかと問われますと、即座に答える事が出来ます。ハッキリ言ってそれらには魅力を感じないし、私自身全く欲しいと思わないからです。

現代スピーカーは音作りの根本から間違っていると思います。性能を追い求めた結果、余りにも音数が増えてしまい、音楽の構成要素の無くてはならない倍音形成が出来なくなるといったジレンマに陥ってしまっているのです。

オーケストラに例えるなら、楽器の数を増やし過ぎて何がどれなのか? 聞き分けられないほどの不協和音現象が起こっているのです。何でも増やせば良い訳ではありません。必要なのは、無くてはならないものと、有ってはならないものの見極め力です。

現代スピーカーを詩にすると、
「凄い音こそすれど、音楽は去りにけり」

今日の世界情勢・社会環境の中にあっては、売れる為の市場迎合主義であり、企業が生き残る為のコストを絞った製品にならざるを得ません。又、かつての名門ブランドもM&Aによって、外観は継承出来ているように見えますが肝心な魂は抜け殻同然となってしまったようです。

その甘いも酸いも知り抜いた本物の分かる人達に、音楽の真髄を掴んで欲しいと願うものであります。欲望を捨てた先に見える真の価値であり、達観の世界を音楽に見出して欲しいと思います。

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