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再現性の高さ

一流と呼ばれるには

錦織選手がプロテニスの世界で日本人として初めてトップ10にランキングされ、トッププレーヤーの仲間入りをしました。これは彼がここ数年に渡ってそれだけの結果を出してきたことに対しての評価です。

スポーツの世界では高度な結果を出す人を一流と呼びます。それはモノ作り、医学、芸術等の分野でも同じです。ここでいう「結果」とは、別の言い方をすると再現性の高さではないでしょうか。つまり、まぐれで良い結果が出てもそれは一流の仕事ではないということです。

私が身を置いているオーディオ分野で、それに相当する内容が何かと考えてみると、素晴らしい音楽再生を可能とするコンディション作りに尽きると思います。即ちオーディオセッティング技術であります。

機器による音の違いはやむを得ないところはありますが、お客様が熟慮の末選んだものですから最大限尊重するべきです。大切なことは、音楽家が表現しようとしている意図を汲み取り、抑揚等の表現を近づけることです。


情報量は多ければ良いというものではない

オーディオ界では情報量の多さを重要視する風潮がありますが、それを巧みに使いこなせて初めて価値は生まれるもの。オーディオ機器の情報量の多さが性能の高さに繋がるのは否定しませんが、いくら量が多くても情景描写や感情表現がリアルに感じなければ、ただの音の羅列にしか過ぎません。

大半は多大な情報量を持て余しているのが実情ではないでしょうか。少ない情報でも元の音楽表現に近い動きが重要であり、時間の流れの中における動きが元の音楽に似ていることの方が大切なのです。

不味い料理が沢山あってもうんざりするのと同じです。与えられたどんな食材からでも美味しい料理が作れるようにならなければ、料理人として一人前とは呼んでもらえません。


価値を見極められる能力と取捨選択する判断力

ネット上に溢れる情報も同じです。量が多いことが何人にとっても有利に働くとは限りません。価値を見極められる能力のもとに取捨選択する判断力が重要です。


期待に応える結果を出すのが一流

道具は使いこなせて初めて効力を発揮します。オーディオ屋にとって大切なのは、どんな機器であってもどんな部屋であっても、音を音楽に変えられるだけの腕を磨くことです。

この業界ではモノの良し悪しだけにしか目を向けない傾向がありますが、それではいつまで経っても腕は上がりません。用意されたものがどうあれ、再生音を音楽表現力と感じられる物理的動作に持ち込む技術を高めるしかありません。

それには訓練、つまり、一流のアスリートのように日々の鍛練と経験を重ねて行くしかありません。ありとあらゆる機器の音や環境の音を経験し尽くすことです。そうして演奏家の意図する表現に近づける再現性の高さを磨くのです。

これがオーディオ屋の真の仕事です。