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第5回 構造による音の違い素材 
A&Vvillage 11月号 第58号 P78〜P79

貝崎静雄(カイザーサウンド)

 ● はじめに

 ローゼンクランツはインシュレーターに始まり、ケーブル、オーディオラック、電源タップ、音響床材、音響スクリーン等、数多くの商品アイテムを持っております。その一つ一つの商品全てに「音が良くなる為のカラクリ(構造)」を持って生まれて来ております。素材その物の優秀さが音の良さの第一条件のように思われがちですが、私は構造に秀でる事の方がそれより上回ると思っています。

 もちろん両方良い事に越したことはありませんので、理想は「良い素材で、理に適った構造」である事だと思っております。そこで5回目の今回は、ローゼンクランツの製品に込められた、構造による音の良さの秘密にスポットを当ててみたいと思います。

 その前に一つだけ力を込めて申し上げたいことは、ローゼンクランツ製品はオリジナリティーに富んでいると言う事です。ですから、他の商品からヒントを貰ったり、多くに人たちが良いと言うからそれから学ぶと言うスタンスは、たいがいの場合とっておりません。普段から全く自然体で物事に接していますので、机に座って考えると言う事もしません。
 
 不思議な事のようですが、私には「ある時、突然に、これだ!」と言うような、「ひらめき」や「直感」がよく働くのです。しかし、その後のカットアンドトライには沢山の時間をかけます。そして、しっかりとした技術の積み上げの上に、素晴らしい製品が出来上がっていくのです。

 忘れてならないのは、オーディオ製品を開発するに当たって大切なのは、何よりも耳です。耳とハートが無ければ絶対に良い製品は生まれません。しかし、こればっかりは努力して身につくものではありません。一種の持って生まれたタレントであります。

 ● ローゼンクランツの基本的な物の考え方

<優れた構造は料理の調理技術に似ている>


 私の口癖はいつもこうです、冷蔵庫にある残り物の材料でもおいしい料理を作れること、それこそが真のオーディオのプロであると。すなわち、こう考えてみて下さい。100人に同じ食材を用意し、自由に調理させたら腕前が判るのと同じで、オーディオにおけるコンポ−ネント機器が食材に当たります。腕の悪い人は素晴らしい食材(機器)も台無しにしてしまうでしょう。その反対に腕の良い職人は、その材料を見ただけでどのように調理しようか?、色々とイメージが湧いて来るはずです。そして、その食材を最大限に生かす手法で、いとも簡単においしい料理を作ってしまいます。 

<厳しい淘汰の中で勝ち残った、生き物の多様さに学ぶ>


 自然界の動物においては怪我や病気は直接死を意味します。人間界と違って医者や薬はありませんので、自身の頑健な肉体と自らの治癒力で治すしかありません。また肉食動物においては獲物を取れなくなったら生きていくことは出来ません。その為に、みんな自分の特技を発達させてきたわけで、誰一人としてその中には「横並び」や「模倣」というものは見受けられません。私はそのことに一番感動します。そこからは尊厳すら覚えるのです。ですからあらゆる生き物は全て私の先生なのです。

<生き物に勝るメカニズムは無い>


 いかにコンピューター技術が発達しようとも、ロボットにおいては生き物の動きに比べるとまったくお粗末きわまりありません。特に関節や細やかに動く指先などは五感と直結していて、瞬時にそれも素晴らしい動きをします。また人工で出来た心臓などの臓器もありますが、拒絶反応を示したりでまだまだ前途多難です。以上のような観点から、構造というものについては、生き物が良い先生として私達に教えてくれるといっても誰も異論をはさまないでしょう。

<「歯と歯茎の構造」から生まれたローゼンクランツのインシュレーター>


 「歯応え」とか「食感」とかいって、人間は食事を生きることの為と同時に大きな楽しみにしています。特に日本人はデリケートで感性豊かですから、そうした食文化が発達してきました。その「センサー」として働く構造を、「音に秘められた喜怒哀楽」の表現に利用できたら、世界中にそれ以上のものは出来ないと私は直感しました。

 健康な時にはその有難さは分からないもので、歯を悪くした時に初めて「歯が立たない」とはこういう事かと、その言葉の意味がいやというほど分かりました。100回立ち向かって行っても勝ち目の無いことで、その時は豆腐ですら噛めそうもありませんでした。

 ● ローゼンクランツ製品の構造の特徴

<インシュレーターの構造>


 「歯と歯茎の構造」からヒントを得て、ローゼンクランツのインシュレーターが出来上がっていると言う事は、もう既に後存知の通りでしょう。何も素材の事なるモノを組み合わせさえすれば、振動が減衰するといったものではありません。特に音楽振動というものには感情というものが含まれております。ですから、振動解析の測定器で測っただけでは良い物が出来ないのはその為です。

 また、何時、どんな強さであり、速さの振動がやってくるか分からないのが、音楽振動の厄介なところです。音楽を聴いて、音楽として感じとめる感覚や感情の豊かな人の心無しには、その物の出来、不出来の判断は出来ません。
  • 「歯と歯茎構造」の着眼点は間違っていないとしても、肝心なのはその物としての完成度の高さにあります。今日まで7年間積み上げて来たノウハウの数々が、一歩づつ、一歩づつその完成度を上げてきたものであります。しかし、何処まで行っても完璧と言う物はありません。でも、それを目指す為の向上心を持ち続けるモチベーションが大切ではないでしょうか。
  • 基本的に尖ったオスと窪んだメスのピンポイント支持方式です。その使い方においても、ピラミッド角105度の尖ったオスを上に向けて置くというのはどこにもありません。これは振動の発信源の機器に不要な振動が戻りにくい為の工夫であり、また、音が自然な感じで上に立ち昇る為のものでもあるのです。
  • 金属の響きの方向管理がなされたインシュレーターは、世界広しと言えどもローゼンクランツだけのものでしょう。その構造からは垂直・水平方向に音がきれいに伸び、自然な音楽を奏でてくれるのです。
  • 響きの美しい半田の開発、鉛とスズの配合比を絶妙のブレンドで52,5%の物をオリジナルで開発し採用しております。これも繰り返し耳で聴いて追い込んだものです。
  • 母材と副材の縁を切る為の半田の溝切りの深さは、1/100ミリの精度で追い込んだ「波動コントロール」方式を用いております。これとて全て耳で追い込んだものです。

<ケーブルの構造>


  • 人の耳で聴いて感じるエネルギーの基軸を中心に設計しております。その為に基本となる線径は0,6ミリのOFCの8N銅です。
  • 信号の通る所には基本的に編組型のケーブルは使いません。それは速度が落ちるのと、音が濁るからです。
  • ピンケーブルの場合は0,6ミリ線に100ミクロンの高域補正用の物をブレンドします。この時に右巻きにするか?、左巻きにするか?、また、どの位置にその線材を絡ませるのか?と言った沢山のノウハウが蓄積されています。基本的には右巻きにすると音は開放の方向になり、左巻きにすると音は締まる方向になります。
  • これまた世界に二つと無い、線材から絶縁材、防振材、ピンプラグ、Y端子に至るまで、全ての素材の響きの方向性を管理して組み上げたパーフェクトモデルというケーブルがあります。これは、私自身が何時間も掛けて作る渾身の作品ですから、月に幾つも作ることは出来ません。知る人ぞ知るケーブルなのであります。

<電源タップの構造>


  • ナイアガラと言う気違い沙汰の電源タップを’02初頭に発表いたしました。大変な反響を呼び起こし、今でもやっと製造が追いつくぐらいです。もともと、「私自身が欲しい物を作る!」、それがきっかけです。すると、金属の立場になって考えるという答えに至りました。「曲げる」、「削る」、「叩く」、どれをとっても反対の立場になってみれば嬉しくないものばかりです。
     
  • そこで、金属に「どうして欲しいのか?」と尋ねると、「私がなりたい形のままに、金属を流して欲しい!」と言う声が聞こえてきました。なりたいようにしてあげる。こうした考え方が出来るようになったら、必然的に何をどうすればいいのか、答えがどんどんと出てくるようになりました。溶かした金属は北から南に向けて流す。信号の流れに沿って入り口に当たる所を南にして作る。
  • 基本的なデザインは車をイメージしての設計です。その大半は鋳物ならではの強みの曲線を多用しています。側面から見て真ん中にキャビンに当たる大きなマル。その前後にタイヤに当たる小さなマルを二つ、その後フロント面を斜めにカットし、底面も水平にカットした物です。それらの全ての寸法は音の良い長さの単位として発表しております、1カイザー(105)の整数倍にて設計しておりますので、振動の時間軸が揃い、「音を音楽に変えてくれるのです」。
  • ワイヤリング技術。元になるケーブルはもちろん0.6ミリの7本撚り、それを3パラ構造にしてあります。一つのロールから0,15kaiser(157,5ミリ)に切って行き、その切った順番に信号の流れの方向と合わせて組み上げて行くのです。その際、どのように撚るのかと言うのが企業秘密なのです。もちろんローゼンクランツの「音楽情報電気振動エネルギー理論」に則って、行きと帰りの方向性はプラスもマイナスも、勿論アース線まで同一方向に向けて組んで行きます。

<サウンドフロア−の構造>


  • 既存品で手に入る最高の物でも、せいぜい楢の無垢木で出来た厚さ10ミリ程度のフローリング。この場合、ヒワリを避ける為に長さは70〜80センチの物を1枚づつ繋いでいく工法ですので、ベターではありますがベストではありません。ローゼンクランツのサウンドフロアーはハードメイプル材で出来ていて、厚さ21mの縦方向継ぎ無しの1本通しです。
  • その構造は、米松で出来た根太材を殆ど隙間なく22,5mmピッチで敷き詰め、目の詰まった硬い木を後ろから前に来るに従って順番に柔らかい木を並べます。これは振動の習性を利用したもので、音が前方に流れるような配慮からです。勿論、木の根元から枝先の方向と地磁気の流れの方向も完璧に揃えてあります。基礎になる根太材はこの様な考え方で施工してあります。こうしてネジ釘だけで組み上げて行きますので、引越しの際取り外す事が出来ます。
  • 次に楓の床材はというと、幅の不揃いの物を使うのですが、狭い物を中心にして次第に外に行くに従って広くなるように組み上げていきます。こうして広がりのあるサウンドステージが演出出来るようになるのです。これも振動の習性=(狭いところから広いところへ行きたがる)を利用したものです。

<ミラクルサウンド・スクリーンの構造>


  • 最近の建物は、プラスターボードにクロス張りといった新建材がほとんどで、音にとっては最悪です。あまりにも、建築業者に音楽のことを理解した者がいないのか、いまだかつて、音の良い試聴室に出合ったことが私にはありません。試聴室を作るということは、要するにバクチみたいなものなのです。
  • そうした不幸なことを避ける意味からも、スピーカーの後ろに波状に簡単に立て掛けるだけでO.K!。あっという間に、あなたの部屋をカーネギーホールのような美しい響きに変身させてしまう強力な芸術作品です。その考え方は、ハードメイプルの素材そのものが持つ美しい音色を、部屋中に万華鏡のように拡散させようというものです。
  • 天然木の3次元にわたる響きの方向管理は言うまでも無く、音の良い長さの単位=1kaiserを採用して、音の波動パターンを作り上げるものですから、ハーモニー面からいってもパーフェクトと言ってよいでしょう。1本のポールの寸法は高さ1942.5mm、直径52.5mm、こけしの様にくびれては太くなる形状を5パターン繰り返す非常に美しいデザインです。それは工業製品などはるかに超えて、まるで命がある生き物のようです。

 ● 結び

 音の良い長さの単位=1kaiserを発見してからと言うものは、ローゼンクランツの商品設計の基本はそれを元に成されております。それ以来、幾つもの製品を世に発表してきましたが、全てが大ヒットとなっております。そして、お求め頂いた方達からは「どの製品も同じ音楽スピリッツを感じる」。また、「ローゼンクランツ製品が増える度に、音楽性が上がって来る」。と言う、感動にも似た手記を頂いております。 特に、たった今、完成したばかりのミラクルサウンド・スクリーン等は、見ているだけで幸せな気分になれるから不思議です。この「1kaiserと言うのは、音楽を奏でる波動の根源!」だと、今では確信するに至りました。

A&Vvillage 11月号 第58号 P78〜P79に掲載されています。

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