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角界の救世主となるか遠藤

2013年9月4日 緒方喜治

超特急で幕内に駆け上がった遠藤

9月2日に行われた秋場所の番付発表。 遠藤が所属する追手風部屋には、新入幕力士の会見としては異例の40人を超える報道陣が詰めかけた。 日本人力士の伸び悩みが長年の課題の相撲界にあって、まだちょんまげすら結えない遠藤は10年に1度といわれるほどのエリートなのである。

「去年の今頃は学生で全日本を目指して稽古をしていた。1年後の今の自分は予想もできなかった」と戸惑いを隠せない遠藤だが、日大4年で大学選手権と国体を制し、鳴り物入りでプロ入りしたのが今年の春場所。

ほとんどの力士は入門するとまず前相撲を取り、次の場所で初めて序ノ口に番付が載る。 しかし、遠藤の場合は、相撲協会が指定する2冠を獲得しているため、序ノ口、序二段、三段目はパス。 東西60枚ある幕下の番付で、幕下10枚目格付出しと別格の待遇だった。 これだけでも遠藤のエリートたるゆえんはお分かりいただけるだろう。

期待にたがわずデビュー以来、幕下をわずか2場所と史上1位タイのスピードで駆け抜け、新十両の名古屋場所では14勝1敗と、追う勢力に4差をつけてのぶっちぎりの優勝を飾り、十両をたったの1場所で通過。 入門からわずか3場所で新入幕を果たしたのである。 ちなみに、3場所で新入幕を決めた力士は、朝潮、武双山、雅山の3人。 のちにいずれも大関に昇進している。


しこが力士人生の原点

遠藤の強さの秘密は柔軟な足腰と並外れた相撲勘だろう。 これらは、相撲を始めた小学生のころから徹底して鍛えられたしこがすべての源となっている。 「相撲で大切なのは基本動作をしっかりやること」。「だから、しこには特別なこだわりがあります」。

「ゆっくりと体重移動をしながら、足を下ろしたときの腰の構えを意識する」。「小学時代の上野監督からは足を上げたところで3秒制止するように言われました」。「本気で踏むと1回だけでも汗びっしょりですよ」。

今でも出番直前まで、支度部屋の隅でしこを踏んでいる姿を目にする。遠藤にとってしこは力士人生の原点なのだ。


相撲界の伝説「スター誕生10年周期説」

相撲界の歴史を振り返れば、ほぼ10年おきにスターが誕生している。 これを「スター誕生10年周期説」というが、幸運にも今年はその10年目の節目の年なのである。

10年周期をたどると、昭和30年代の後半にさしかかり「栃若」に衰えが見え始めたとき、入れ替わるように柏戸と大鵬が登場し「柏鵬時代」が幕をあけた。 およそ10年間続いた2人の時代は昭和46年夏場所、大鵬が角界のプリンス貴ノ花に敗れて世代交代。

それから10年たった昭和56年初場所、大関貴ノ花の引退に合わせるように千代の富士が関脇で初優勝を飾り、翌場所大関に昇進。 日本列島にウルフフィーバーが沸き起こった。

さらに10年たった平成3年夏場所。 貴ノ花の次男の貴花田が無敵の横綱千代の富士を破り大ブレイク。 「若貴時代」がスタートした。 数々の名勝負を残し横綱貴乃花が引退したのが、平成15年初場所。

あれからちょうど10年。 平成25年を迎えた今年、超スピードで新入幕を飾った日本人期待の「遠藤登場」というわけだ。 遠藤は秋場所の目玉となり、角界の救世主となるか、10年ぶりのスター候補から目が離せない。




遠藤は若貴以来の日本人横綱誕生を期待させてくれる器との評判ですが、相撲勘の素晴らしさは噂に違わぬもので、相撲の申し子のようなその取り口には舌を巻くばかりです。

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