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100億円の借金を持つ男


 昨日NHK.で放送された番組です。御覧になられた方も多いと思いますが、東京在住の不動産屋の話です。バブルの頂点の時には借入金がなんと3,000億円もあったという、その彼の波乱に満ちた人生がオープンにされる。

 初めは焼き鳥屋をやっていて最盛期には都内に20店舗展開していたが、従業員に1億5千万円ほど使い込みをされて無一文になった話からです。そんな喰うや喰わずのドン底のある時、知り合いの不動産屋が大きな物件を持っていたが、売れないで苦労をしていた話を聞いて、「じゃあ、俺が売ってやるよ!」。といって、あるゲームセンターの経営者に話しを持ち込んだら乗り手に船であっという間に売れてしまったという。

 その時手にした手数料が「ナント!1億2千万円」。”たった!一声掛けただけで”、である。その時俺にはまだツキがあると思ったそうです。それが不動産業を始めるきっかけとなり、それから3年程で一気に、都内に70件のビルを所有する大実業家になってしまった。

 当時銀行は次から次に競って融資の好条件を提示してきて、全くの借りて市場だったらしい。ひどい話の一例が10億の物件に対して13億貸すというような話があったという。値が上がり続けるという事に誰もが疑いを持たない、まさに不動産は金のなる木と信じ切っていたのでしょう。

 危機感を感じた、時の政府はとうとう総量規制という形で不動産向けの融資に制約を設けてしまった。それを機に資金繰りが苦しくなった業者が売りに転じ土地は値下がりを始めた。遅れまいと急いで売りに出しても今度は買い手がつかず、資産価値はドンドン目減りして最終的には100億円の借金が残ったと言うのである。

 この話の何について語りたいかというと、今までの話はプロローグであって肝心な事はこれからです。その借金の清算について債権者に集まってもらって協議した結果、少しずつでもいいから商売を続けながら返済して下さいということになったらしい。最後に一つだけ残ったビルの家賃収入が月に100万円その内25万円を生活費に貰い、残りを10件ほどの債権者に案分して返済するのだが、時間の掛かるところは完済するのに8千年かかる計算になるという。

 その方法で返済を続けている途中で、その中の日債銀が破綻して不良債権を受け入れ先の信託銀行に譲渡したことにより、債権者が変わった。その担当者が彼のところに来て一括清算の話を切り出した。精一杯まとめて支払ってくれれば「残りは債権放棄してもよい」。という内容らしい。30歳前後の行員の肩書きは主任という。「5億の金の決済をこんな若い主任に任せるはずは無い」と、彼は思うが、とりあえず口からいい加減に「500万なら何とか出来る」、というと、「それで構わない」、という。

 1/100の金で残りの借金は棒引きにするという、信じられない話に彼はさらにカマをかけて、「止めた!200万でないと出来ない」。というと、またそれでも「O.K」という、”オカシイ?・・・”しばし考え込んだ後、「いや、いや、やっぱり出来ない!50万でどうだ!」。「それでも結構です」。といって5億円の債権はいとも簡単に放棄された。そしてその時の書類を彼は見せた。さすがの私もこの話にはビックリしました。5,000円借りて5円返済です。

 即ちこのからくりは、公的資金の導入により不良債権を丸ごと国民の税金でその受け入れ先の信託銀行は手に入れたことになります。だから損は最初から1円も無かったという事になります。

 ずさんなやり方で貸し込んだ銀行の経営責任者は何の責任も取らずに、「しら〜」、としていられるのです。役員報酬も退職金もタップリ貰った事でしょう。この様に責任をあいまいにして本人達は怪我一つしないで最終的には国民にツケとなって重税を押し付ける格好で一件落着。


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