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TANNOY VLZを300Bシングルで鳴らす

お得意様の紹介で東京試聴室に来られ、もやっとした鳴り方のTANNOY VLZの音を何とかして欲しいという内容のご相談です。

『電源ケーブル、スピーカーケーブル、信号ケーブルを全てSA/LABのハイエンドホースにしたところ、高性能な音の方向にシフトして行ったが、とにかく高域がきつくてどうしようもなくなった』。『対策として各機器の足場関係に柔らかい素材を多用した結果、何とかそのきつさを押さえる事が出来たものの、今度は魅力ある楽器の音色は出てくれず悩んでいます』。『自分なりに精一杯やった結果、この先は途方も無い時間とお金が掛かる事が分かり、次なる手を打てず途方にくれています』。

大体の見当が私にはつきましたので、事前に音のプランを考え、予算もリーズナブルな枠の中で色々と見繕って準備して伺いました。F.Sさんのオーディオシステムは、一般のマンションでよく見かける12〜15畳のLDKに、テレビとオーディオラックを挟む形でスピーカーが壁一杯に広げて置かれていました。

私にとってTANNOY/VLZのクリニックは初めてだったのでとても楽しみでした。ところが、その音たるや”ツイーターが壊れているのでは?”と思えたほどです。名機モニターレッドと伺ってはいたけど、その片鱗はどこにも無くまるで壊れたラジオのような音でした。

サランネットを外してみると、ユニットはバッフルのど真ん中に付いています。それを見た途端に、”これは素晴らしい音になるぞ!”という予感がしました。とにかく”箱とユニットの配置バランスが絶妙”なんです。

悪い音がする要素はどこにも見受けられないにも拘わらず、結果は最悪の音になっているのは、コンポーネントに原因があるのではなく、明らかにケーブルや振動対策等のセッティングに問題ありと診断出来ます。

300Bのアンプはキットとして組んだ物で、物凄い数のコンデンサーやら抵抗をあれこれ試し、気がついた時にはパーツ代だけで本体価格の5倍ぐらいのお金を使っていたそうです。

クリニックの最初に行ったのは、スピーカースタンドの下のボードを撤去し、さらに、スピーカーの下に入れてあった薄いゴムシートも全部外しました。これで用意したケーブル類等を聞いて頂いても、その音の良し悪しの判断をして頂くのに「最低限度のコンディションにはなったのかな」と言ったところです。

最初に行ったのがスピーカーケーブルの交換です。SP-RGB2を用意しました。次にアンプとCDプレーヤーの電源ケーブルをBlood Stream1に替えました。続いてピンケーブルをPIN-RGB2にしました。そして電源タップをNIAGARA-St.に替えて聴いて頂きました。

試みる度に、VLZが別人の如く魅力的に変身を遂げて行きます。家庭教師をつけてやった事によって、わが子の成績がグングン伸びるのを見ているかのような音の成長変貌ぶりに、『これなら幾らでも金を掛けてやりたい!』という気持ちになったのでしょう・・・。

私もここまで鳴り方が変わるものかと驚きました。

『とにかくカイザーさんに任せますから宜しくお願いします』。

こうして、強い信任を頂きましたので、VLZ専用のスピーカースタンドをオーダーメードにてお引き受けしました。約1ヶ月の時間を頂き完成したのがこちらのスタンドです。VLZの魅力を100%引き出す事だけを考えて作ったスタンドです。

 

ハードメイプルの板厚は42ミリもあります。生きの良い音をイメージし、そのぐるりは直線でダイヤモンドカットにしました。脚部分はカーディナルスピーカーのマエストロに用いたステンレスと真鍮のハイブリッド構造です。

特にスパイク受けは新製品の”CAPTAIN”。出来立てのほやほやを使います。このスパイク受けはインシュレーターのCOREで得たノウハウを活かして設計しました。その音の特徴は、「きれいな音だけではなく、激しい音や汚い音をも含めて”全ての音を開放する”」ことをテーマとしています。何といっても今日の”CAPTAIN”は記念すべき第1号であります。

今まで使っていたスピーカースタンドは、柱部分、枠部分全部が木で出来ていた関係で、振動がループ現象を引き起こし、いつもでも減衰しない問題がありました。もっさりした音の原因の多くはそのスタンドにありました。

今回のVLZ特注専用スタンドが如何ほどのものなのか?

その音に、たまげた!、驚いた!、ビックリした!

今まで何の楽器が鳴っていたのか判別がつかなかったのに、ここまで変わるものでしょうか。チェロもバイオリンも美しい音を奏でます。それぞれが独立しているにも拘わらず、各楽器の音が空気を触媒として溶け合い、部屋全体に音楽が満るようになりました。

ここまで良くなると壁のコンセントもローゼンクランツお勧めのHBL-8300/Brownに換えましょう。そして50年前の電源環境が蘇るとまで言われたテーブルタップ専用電源ケーブル、コアーなローゼンクランツファンが絶賛する一押しアイテムAC-Maximum32であります。

低音がどこまでも伸びやかに出て来るようになりました。勿論、品の良い澄んだ高音もデリケートさを伴って眩いばかりに揺らぎます。名演奏と言われる色々なディスクを聴いてみたくなった。

”モニターレッド”の魅力をまざまざと見せつけられたのでした。

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