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あわや大惨事に


 この日は、次男のいる京都に10時に着く予定で東京を朝の4時半に出発。いつものように快調なドライビングを続けておりました。夜明けを迎える時間帯には、真っ白い雪化粧をした中央アルプスの峰が、さわやかな朝日に”キラキラ”と眩しいばかりに照らされ、それは、それは、”美しく見事”なものです。


 そんな中央道は、運転していてもストレスなど皆無と言ってもよく、むしろ、新鮮な空気と雄大な景色は私達の身も心もリフレッシュさせてくれるのです。その点、東名を走ると桁外れに多い交通量と、閉じ込められたような気分になる防音壁等によりストレスは最高潮に達します。また、トラックに挟まれた視界の悪い中での運転は、尋常ではない恐怖を感じます。広島から東京まで行くと少なくとも2〜3回はヒヤッとする事があります。

 一宮あたりで、ひどくはありませんが通勤ラッシュに出会い、名神に入った途端に先ほどまでの清々しい観光モードから急に仕事モードに切り替わりました。特に、その先の京都がいけません、かなりの混みようです。

 改札ゲートを出るや否や、全く身動きもしないほどの渋滞です。3車線から1車線に急すぼみするような道路ですから、これではどうにもなりません。この日は日曜日で、京都の町は観光客でどっとあふれていました。息子が住んでいるのは御所の近くですが、そこへ行って手荷物を下ろし、すぐに高速まで戻るだけに2時間以上掛かったのです。疲れがどっと出てきはじめました。

 そこらあたりから、今日のツキが一気に変わったのでしょう。高速道路でシトロエンのワゴン車が故障してしまったのです。九分九厘戻って来たようなものなのに、広島まであと50キロの地点で起こったトラブルです。登り坂に差し掛かった時にアクセルを踏み込んでも、一瞬たじろぐような感じで、速度が上がらなくなったのです。”それほど急な坂でもないのにどうしたのだろう?”。

 2〜3度そうした感じを繰り返したでしょうか、マフラーの警告ランプが点灯したり消えたりし始め異常を告げております。そのうち、かなりスローダウンするようになり、息つき現象が顕著になり、今度はエンジンの黄色いマークまで点灯したので、完全にこれはおかしいと思って車を路側帯に停めました。

 あわてて説明書に目をやりますと、マフラーマークが点いた時は触媒が異常な高音になった事を示していると書いてあります。このまま車を走らしていると危険ですから、すぐに点検を受けるようにともあります。大きなトラブルになる前に、燃料を送り込むのをストップさせるようなシステムになっているのだろうと思います。

初めに右下の温泉マークが点きその後左隣のエンジンマークが点きました。

 停めた場所から行きつけのディーラーに電話をするのですが、山の中ですからすぐに切れます。3〜4度掛けては切れを繰り返す中で相談すると、陸送用のトラックで引き揚げに来てくれることになりました。夕方の5時前でしたがあっという間に暗くなり、この場所では危険を感じるようになったので、一か八かエンジンを掛けトンネルに突入します。

 息も絶え絶えですが、もう少し安全な場所に停めたいと言う気持ちの方が強く、トンネルの中で立ち往生したらどうしようとは思いつつも、それが実際にはどんなに危険な事か想像は出来ているようで出来ていませんでした。何とかトンネルを抜け出すと、今度は長い路側帯がありましたのでさっきよりは大分ましです。ちょうど停めた場所に緊急用の電話があり、それで電光掲示板に故障車ありの情報を流してもらうよう頼みました。

 危険ではあるのですが、かなり外は寒いので、少しの時間車の中にいてラジオで気を紛らしたり、また外へ出て体を動かしたりして体が冷えないように努めました。こんな時は10分が1時間ぐらいに長く感じます。トラックやバスが通る度に風圧で車はかなりあおられます。100キロ以上出ていますから、もしも追突されたらひとたまりもありません。

 やっぱりこれでは万が一を考えると危険ですから、もう一度道路公団に電話をして、赤い円錐状の置物を使って斜線規制してもらうわけにはいかないのか聞いてみました。『車線規制は一寸難しいけど、現地に係りの者を向かわせましょう』と言ってくれました。待つこと30分、パトロールカーの屋根の上に『右に寄れ』と電飾が点いた車と共に、係りの人二人が赤の電飾棒を持って外の車線に誘導してくれます。

 その10分位後に救援のトラックが到着しました。トラックの荷台の前部を持ち上げスロープを出し車を載せようとしますが、もうその時にはエンジンは掛かろうとしませんでした。さて、どうするのだろうと思ってみていましたが、ウインチで少しずつ引っ張り上げ作業時間は15分ほどで終わりました。本当に命拾いです。

 もしも、トンネルの中でエンジンが掛からなくなって停車していたら、恐らく5分も掛からないうちに玉突き事故につながっていた事だけは間違いありません。頭の中では解っているつもりでも、こうした”生身の体験”が無いと、本当の危機管理や問題解決能力は有るつもりでも全く無いに等しいことが解りました。

 事故とはちょっとした「思い込み」や「過信」、また一番いけないのは「ナメタ考え」でしょう。人間の持つ「油断」と言う落とし穴が大惨事を引き起こすものだということが痛いほど解りました。先日の駐車場でのトラブルで底の部分をかなり引っかいていましたので、恐らくそれが原因で故障したものと思われます。


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