第14回 音と音楽の違い・・・その1
A&Vvillage 5月号 第67号 P74〜P75

貝崎静雄(カイザーサウンド)


  ● オクターブ和音
 人間は音の大きさや高さに敏感であると共に指数的な感覚も持っています。また、それらを表すにはデシベル(dB)、ヘルツ(Hz)と言った単位が使われますが、いくら音階の基音になるラの音が440Hzと言われてもピンと来るものではありません。
 
 それを音楽的な音の高低を表す場合には、ドレミファソラシ(CDEFGAB、ハニホヘトイロ)等の7つの音階名が利用されます。その音階は1オクターブで一巡し、オクターブ毎にドレミ・・・となります。同じドでも1オクターブ高くなると周波数は倍になり、反対に1オクターブ低い音は周波数が半分の関係になります。

 二つの音の周波数が倍や半分のオクターブの関係にある音が和音としてはもっとも調和します。これでオクターブの周波数関係が音楽的にも物理的にも大変重要だと言う事がお分かり頂けましたでしょう。


  ● オクターブ和音を元に設計
 
 ローゼンクランツの製品はこのオクターブ関係を重要視して設計しておりますので、それを使った人達は一様に『音から音楽に生まれ変わった!』と言う表現をされるのです。 それらプロダクツの最たる物は、スピーカーベースのサウンド・ステーションやこけしの形をした音響拡散装置のミラクルサウンド・スクリーンに帰結するのですが、電源タップのナイアガラシリーズにもシッカリと活かされております。

 ただ単に波長が倍の関係にあるから音楽性が高いと勘違いされても困る事があります。それは、音には心地良く感じる音とそうでないのがあって、その谷間の不快に感じる音が整数倍にあったならば、余計に苦痛感が増幅されるのです。これが俗に言う不協和音です。


  ● 誰にも愛されるインシュレーターを目指して

 BABY(ECO)の愛称で親しまれております背広のボタンのような形をしたエントリーモデルのインシュレーターがあります。インシュレーターの王様であるローゼンクランツがどんな音楽を表現したいのかは、これ一つ試して貰えれば充分に解って頂けます。今ではすっかり有名になりましたエコブラスは、真鍮にシリコンが入った自身が鳴かないエコロジーなハイテク素材です。


 インシュレーターであるBABYエコ自身は泣きませんが、ステレオが良い音で鳴るようになるのです。それを今以上に誰からも愛されるよう、次世代モデルとしてただ今研究開発中です。

 ほんの少し形状を変えるだけで全体にわたって周波数エネルギーバランスが変わります。誰のどんなシステムの中で使われても、上手くそれらの長所を引き出せるような製品にするべく、素材、構造、寸法比等を練りに練って、更なる高い完成度を目指して「音のカラクリ」を研究中です。


  ● 「能動体と受動体」の両者の関係

 音として感じるのは発する側だけに起因しているのではなく、部屋の中にある物体全てを巻き込んだ発音体となって私達は音として感じます。すなわち能動体と受動体の両者の関係の結果による音であります。ステレオを良い音で鳴らすヒントの全てはここに有ると言っても過言ではありません。

 能動体(コンポーネント)の方には皆さん強く意識して音の良い物を選ぼうと努力されます。しかし一般には、部屋をも含めた受動体である家財道具までの音を考えた上では購入しないものです。加えてもう一つ厄介な事は、それらの置かれている部屋との位置関係がこれまた音に大きな影響を及ぼすのです。

 本棚やオーディオラック、あるいはテーブルをほんの2、3センチ動かしただけでも良い音にコロッと変わる事があります。それは床の振動波長パターンや部屋の空気の疎密波の反射パターンが変わる事によって起きるものです。クリニックにお伺いした先で私が簡単にそれを実現してしまう事に皆さん驚かれるのですが、手品でもないれっきとした物理現象ですから何の不思議もありません。


  ● 「音痴な部屋」と「物の音痴な位置関係」

 スピーカーと部屋との位置関係はカイザーゲージの所で説明いたしましたが、ここではもう一度おさらいの意味も込めて触れてみたいと思います。一言で言ってしまいますと、部屋が音痴な状態にある訳です。その崩れた音程やテンポを直してやるには部屋の寸法比を変える訳にはいきませんので、スピーカーが部屋の能力に歩み寄ってやるしか方法はありません。

 すなわち、スピーカーの歌い始めの場所を色々変えてやると、その内、部屋がコツをつかんで上手く歌える場所が見つかるようになります。丁度和音が乗るようにハモッて来る感じがします。これが「カイザーウェーブ」に乗った状態と思って下さい。こうなると部屋中に音楽が充満した状態になりますから、どこで聴いても心地良い音楽を感じる事が出来るのです。


  ● 音に大きく関係する寸法比

 ラックの棚板やオーディオボードの縦・横・厚さの寸法比は音にとって大変重要です。先日次のような体験をしました。過去に2度お伺いした事のあるお客さんのお宅での出来事です。前回クリニックさせて頂いたのでその時の音は私の記憶にシッカリと残っております。

 それが今回はどこかしら音に迫力がありません。それと同時に音楽の美味しいエキスが無く、どこか旨みの無いステーキを食べているような感じなんです。見たところ大きく変わった所はなく、私の目に入った事と言えばCDトランスポートの下にオーディオボードが履きかえられている事ぐらいです。以前は金属製のものでしたから、それよりは当然良くて当たり前と思いその部分は疑う事はしませんでした。

 しかし、それ以外は際立って変えたところは無いという事ですので、それでもと思い「カイザーゲージ」を当てて見ました。すると、縦・横どちらも「カイザーウェーブ」の谷間です。何事もやってみれば必ず結果が出ます。

 「念の為にこのボードを外して聴いてみませんか?」といって実験です。

 「この寸法が犯人だろう?!・・・」と一人頭の中でつぶやきながら・・・。
 
 黒く塗ってあるので素材は分りませんが、仰るにはハードメイプルの集成材との事。持って見た手応えではハードメイプルというよりはソフトメイプルの質感です。外した結果は案の定迫力ある音が戻って来ました。ただ床に直置きですから、わずかなブーミー感は拭えません。そこは一考の余地があるとしても、素材としては申し分ないはずですから、音楽性に欠けていたのは音痴な寸法比から来るものだというのが私の診断結果です。


  ● 生きている人間そのものが楽器

 私の二人の息子はどちらも楽器を巧みに操りますので、身の回りには多くの楽器があります。今回もオクターブという関係の音をシッカリと体感しておこうと思いキーボードを叩いてみるのですが、全く音楽になりません。私は楽器が弾けません。だからこそ音楽を聴く事が好きなのです。楽器が弾ける事と聴いて感じる耳の良さはこれまた別物なんでしょうね。

 カウント・ベイシーが鍵盤を一叩きしただけで音楽を感じさせるのは本当に凄いものです。そして私達人間は、その何の部分を、どう音楽と感じるのかは説明のつかないところがあります。間合い、タイミング、強弱、緩急、イモーション・・・。

 結局のところは音楽に理屈は必要なく、

 聴いて楽しく思ったり、悲しく感じたりする事が生きている事そのものに繋がるのではないでしょうか。

 もしかするとそれは逆で、生きている事が音楽している事なのかもしれませんね。

 そう考えれば、誰もが「人間という楽器」を毎日弾いているのではないでしょうか・・・。

A&Vvillage 5月号 第67号 P74〜P75に掲載されています。


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