トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅底知れぬ可能性を見せたクレルのスピーカーLAT-1

底知れぬ可能性を見せたクレルのスピーカーLAT-1



 K.Nさんはお忙しい方で日程の都合がなかなかつかず、何とか都合をつけて頂く事が出来たのが19日朝の8時半〜11時までの2時間半という限られた時間でした。そんな状況の中でのクリニックとなりました。クレルのLAT-1というハイエンドマニア向けのスピーカーに、ローゼンクランツのスパイク受けインシュレーターPB-JRU(H)を採用して頂いたのが初めてのきっかけです。その後P0sの専用脚も購入して下さっています。

 その時『素晴らしく音が良くなった!』と最大級の評価をして下さったのです。以下のメールがその時頂いた物です。スピーカーに対しては人一倍強い関心を持っている私自身ですから、オールアルミキャビネットのLAT-1には大きな興味を惹かれておりました。またこのスピーカーは、ステレオサウンドの評論家である三浦氏がウイルソンから換えた事でも有名です。


 秋田のNです。


 ----- Original Message -----
 From: "K.N"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Monday, January 27, 2003 1:36 PM
 Subject: 秋田のNです。


 貝崎 様

 メール有り難うございます。

 呆れてしまうほどの変化がありました。

 当初は、高音の尖りと、低域が出ない感じだったのですが、小一時間の慣らし(?)の後では、

 音楽を構成する一つ一つの音の粒子が、今までよりもずっと細かくなりました。

 当然、ボーカルの口元は締まり、一歩前に出ました。

 バックのオーケストラの広がりも、今まで以上です。

 KRELL LAT-1のような、キャビネットを鳴らさない設計のスピーカーでも、

 今までは、雑音が乗っていたのですね。


 正直な話、感動しています。

 秋田に来られる事があれば、事前にお声かけ下さい。

 いくら言葉で説明しても、この感動は伝えられないと思いますので。

 因みに、私のシステムは、

 P0-S → レビンソンDAC → コヒレンスU → #12 → LAT-1 です。

 それでは。


 心身のリフレッシュが効いた


 こんな朝早くからの仕事は初めてですので、前日は仕事を組み入れずリフレッシュする為に一日のんびりと札幌から室蘭経由で函館まで車のドライブを楽しみました。近くの駅まで迎えに来て頂き、案内されるまま車で後ろを付いて行きます。ほんの2〜3分で新築間もない立派なお宅に到着です。玄関入ってすぐの部屋がオーディオルーム兼書斎になっているようです。どんな方のアドバイスを受けて作られたのか本当に良く考えて作られております。

 部屋に入った瞬間に感じたのは、「何も感じなかった」というのが正直な感想で、ストレスや抵抗が無いといったらいいんでしょうか、とにかくナチュラルなんです。普通オーディオルームに案内されると、どこか気張ったところがあって落ち着かないものです。その点K.Nさんの部屋は上手く出来たまれな例ですね。

 時間も限られておりますので早速システムの音を聴かせていただく事にします。与えられた「制限時間内で最大の効果をご覧に入れるにはどうしたら良いのか?」音楽を聴きながら問題点を洗い出します。

 私の想像していた音とはまるで反対で、「聴き易過ぎるんです」。物凄く上手くまとめておられるんですね。見た目では触る所は何処も無いほど基本に忠実で、完璧な程の左右シンメトリカルセッティングです。音の定位に関してはセンターにビタッと決まっております。もちろん部屋がそうなるように出来ているのもあるのですが、それを差し引いても本当に良く出来ています。ですからつい、「どなたかのアドバイスを受けてのセッティングなんですか?」とお訊ねしました。

 『いいえ自分自身でやりました』。

 『強いて言えばカイザーさんの「重心セッティング」は大きく功を奏したですね』。

 そう言われてみると、まるで「私がセッティングしたらこうなる!」といった見本のようなものです。

 ただ違うところといえばほんの僅かですが、

 スピーカーのスタンディングポジションとかラックの位置が今一歩で、

 良い音のする「カイザーウェーブ」に乗っかっていないだけです。

 でもこの僅かな差が天と地ほどの差になって音楽に現れるのです。


 その一つずつのクリニックの様子をこれから紹介してみたいと思います。

 今日のテーマは「1円もお金を使わないで音を良くしよう」と心の中で決めました。

 その為には何をどうすれば、一番効果があって、興味を持って下さるかという事です。

 昨日のリフレッシュが効いたのでしょうか、今日の私は冴えていて、

 まるで音に色が付いたかのように濃淡まで本当によく見えるんです。


 思いもしない事からやってみる事に


 普通一番最初にこんな事をやっても、音の効果になって現れるようなシステムコンディション等有り得ないんですが、今日のセッティングなら判ると踏んで私はバクチに出たのです。その方法とは?。

 PADのスピーカーケーブルの結線の順番と場所を変えるだけの事です。お訊ねするとこのケーブルはバイワイヤリング用の変則的な物です。すなわちプラスとマイナスでペアーではなく、プラスとプラスで1本のケーブルの形をしているというのです。

 パッと見ると結線間違いをしているのではないかと思わせられます。1本のケーブルから低域用のプラスと高域用のプラスに繋がれているのですから、「これで音が出るのか?」と最初はビックリしました。


 色の持つエネルギーを利用する


 赤いケーブルが高域用のプラスに繋がれているのを低域用に、紫のケーブルが低域用に繋がれているのを高域用に入れ替えるのです。私がやったのでは何か手品をしたと思われてもいけませんのでご本人にやってもらいます。

 もう一つマイナス側も黒いケーブルが高域側に繋がれているのを低域側に、そして低域側に繋がれている青いケーブルを入れ替える形で高域側に変更して貰います。すなわち最初に繋がれてあった状態から見ますと高域側と低域側の担い手を交代させただけです。この色の持つエネルギーの強さの関係から見て組み替えてやったのです。紫より赤の方がエネルギー的に強いですから、負荷の大きい低音側に赤を担当させてやるのです。これ即ち加速度結線です。

変更前 変更後


 エネルギーの方向に合わせてやる


 それともう一つパワーアンプのチャンネルAとBも低域用と高域用とを入れ替えてみます。正面から見て内側にあるパワーブロックを低域用に使うようにしてやったのです。もちろん外側に高域チャンネルを受け持たしてやります。これは「エネルギーが生まれて成長する方向」について合わせてやる考え方です。以上の事を一先ず片チャンネルだけ変えて聴いてもらう事にします。

変更前 変更後


 その結果は?


 『凄い!、面白過ぎる・・・!』。

 ご自分で結線し直したK.Nさんと私の二人だけが体験した音です。

 この事については恐らくご本人さんから感想のメールを頂けると思います。

 その効果の程を確認して頂いたところで、もう片方のチャンネルも揃えて完了です。両チャンネル変更した後の揃った音はエネルギーが3割アップしたようです。機材のポテンシャルが高い分効果の出方が大きいですね。


 機材と部屋との3和音構成


 写真に埃の跡がありますように、オーディオラックを4センチほど前に出してやります。これは床との振動の関係のあり方の調整なんです。

 重たいラックの脚を支点に、後ろの壁までの距離と前の壁までの距離の比率配分が変わります。これによってラックの脚と脚の幅との3者間の和音に変化が現れます。

 この3和音構成が美しい響きを持っているか否かが音に重要な影響を与えるのです。これは無限に存在しますので探し出すのは大変困難を極めます。もちろんその方法は床をコブシで叩いて探ります。



 カイザーゲージでスピーカーセッティング


 今現在スピーカーが置かれている任意の位置を基準に音を測ります。音を測るとは?即ちどんな音かを耳で感じ取る作業です。0.15カイザー(157.5ミリ)毎に音が良く感じる波のように繰り返す周期性を持っている事を提唱しているのが「カイザーウェーブ」なのです。


 壁から測るのではありません


 先ず初めにスピーカーの後ろでも前でもどこでも結構です。

 測りやすい所にカイザーゲージの青い山を合わせます。

 後でそこを起点に前後に移動させますので、

 どちらの方向にも青い波が3波ぐらいは測れるようにしておいて下さい。



 本来はエネルギーの起点から


 スピーカーのコーンの付け根の近い所のある場所に、へそに相当するようなエネルギーの起点になるところがあるのです。これはスピーカー毎に位相軸が違いますので、特定する事が難しく測りにくい為に、測りやすい所から測って下さいと言っているだけです。映像のプロジェクターで例えて言うなら3波の光源軸に相当するように思って頂ければ結構かと思います。


 正反対の音を先ず見つける


 次にこのゲージの使い方、読み方を説明いたします。山に合わせ込んだところを仮に「夏」と思ってください。谷間になる前後の半波長の位置が「冬」と思ってください。この山と谷の音の関係は正反対の性格の音を示します。例えば低音が膨らみがちなのと、やせ細った低音の関係のように同じスピーカーなのに0.075カイザー(78.75ミリ)位置が前後しただけでまるで正反対の表情に変化するのです。高音を例に挙げますと寝ぼけたようで抜けが悪い音だったり、耳を差すようなキツイ音だったりします。

 正反対であっても良く似た春と秋


 同じ半波長ずらしてもほとんど音の変化を感じない場合もあります。それは貴方の耳が悪いのではなく、「春」と「秋」のように季節が似ているのです。こうして最初の位置が春若しくは秋に近い所に置かれているとしたら、更にその半分、即ち1/4波長のところに大きな音の違いとなって感じる「夏」と「冬」が存在しているのです。この2パターンを試みて頂ければこの4ヶ所の中に理想に近いと感じるポジションが必ず見つかるはずです。


 この4者の中で音の良い勝ち抜き組み二人の間の音を聴いて追い込んで行けば、理想と感じる音のバランスに近づくはずです。そして最終的に1ミリの違いでも聞き分けられるように誰でもなれますので、面倒でも根気良く頑張って欲しいと思います。

 何回も勝ち抜き合戦を勝ち抜いたポジションがその部屋とそのスピーカーとの3和音構成の美しいところです。その見つかったポジションが「カイザーウェーブの青い山」のところに相当するのです。従いまして、その場所に改めてカイザーゲージの青い山を合わせ直して頂きますと、先の山と後ろの山にも音の良い場所が存在していますから簡単に探し出す事が出来るようになります。


 貴方の部屋に於ける幕の内最高優勝は?


 何ヶ所もある青い波の山は相撲でいうところの勝ち越し力士と思って下さい。同じ勝ち越し組みでも「8勝なのか?、9勝なのか?、はたまた12勝か?、あるいは全勝のポジションなのか?」探し出してみて下さい。その理想のポジションにピンポイントで入った時は本当に素晴らしい音楽が部屋中に満ち溢れます。それを手にするには何よりも根気が一番です。


 今日のクリニックの結論


 ここまではお金を掛けないで音を良くする方法を採りましたが、これから先はラックの下のスパイクにスピーカーと同じようにインシュレーターを入れて頂ければ、音楽の足並みが揃って見事な音に変身しますから是非そうしてみて下さいとご案内させて頂きました。もう一つ電源タップの良い物を入れて頂くと更に見違えるようになる事は間違いありません。

 「物と違って、こうした技術だけというのは価値が目に見えませんから、お金を貰うというのは本当に難しいんです」と半分愚痴にも似たような事を述べますと、『とんでもない、これほど目に見える形の物はありません』と高く評価して下さったのでした。

 今日は本当に時間が充分ではなかったので、改めて徹底したセッティングをして欲しいと再会の約束をしてお別れ致しました。


 ありがとうございました

 ----- Original Message -----
 From: "K.N"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Sunday, May 23, 2004 9:02 PM
 Subject: ありがとうございました

 秋田のK.Nです。

 先日は、感動的なクリニックにお見え頂き、本当にありがとうございました。

 ご連絡が遅くなりました事を、まずはお詫び申し上げます。

 あれほどのノウハウだとは思いませんでした。

 心から感謝申し上げます。


 正直な話、お見えになってすぐに、#12の筐体の上の数カ所を指で押さえていらっしゃる姿は、私の理解出来る範囲を超えていました。突然、スピーカーケーブルの低域を赤・黒、高域を紫・青に繋ぎ変えようと言われ、いよいよ「怪しい世界」かと思いきや、明らかに繋ぎ変えたチャンネルの音量が大きくなりました。信用していないようで申し訳ありませんでしたが、思わず、プリのバランスを確認してしまいました。

 「カイザーゲージ」についても、「壁からの距離を測ったとしても、スピーカーのどこに合わせれば良いのか解らない」という勝手な理由付けから、購入していませんでした。懇切丁寧に使用方法をお教えいただき、ありがとうございました。

 その後、スピーカー位置を17.5センチ程後ろに動かす調整(これが一番のポイント)、センターラックを僅かに前に出し、パワーラックを4センチ前に出し、アブフューザーの天地方向を変え、その下のタオックを並べ替える。この、一連のチューニングを、一つ一つ音を確認しながら進めていかれましたね。

 その結果、一つ一つの音の曇りが物の見事に剥げていきました。部屋全体が協力し合って音楽を奏でていきます。言葉の綾ではなく、立毛筋が縮み鳥肌が立ちました。「金属引き出しのLAT-1は、難しいスピーカーだけれど、ピンポイントで決まった時には、恐ろしい能力を出す」というはじめの説明を思い出していました。

 小さなインシュレーターから始まった貝崎様との出会いを、大切にしていきたいと
思います。思えば、LAT-1から始まる一連のシステムは、納得いくまでの試聴やしっかりとしたアフターサービスがあってのものです。そして、今回、床板を叩きながらピンポイントでセッティングすべき位置を割り出して下さった貝崎様、色々な方達のおかげで、今日の音楽があります。ただただ、感謝です。

 私たちは、音楽であれ、絵画であれ、演劇であれ、芸術に触れる為に対価を支払います。今回は、インシュレーター1個も発注していない私が言うのもおかしいのですが、貝崎様の職人の技に対する対価をきちんとお支払いしていきたいと思います。長いお付き合いをお願いいたします。

 それでは。


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