トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅アバロンのダイヤモンドをクリニック

アバロンのダイヤモンドをクリニック



 過去にJ.MラボのAlto Utopia Beのシステムの時にもクリニックさせて頂いたのですが、今回CDプレーヤーを除いてほとんど総入れ替えとなったので、改めてクリニックに来て欲しいと頼まれました。

 気になるポイントは左右の音が不揃いであるのと、ディスクによってバランスが大きく崩れるので音楽を楽しめないと仰います。特に中高音域において本来楽器が持っているはずの自然な響きがしないし、低音部はリズム感に乏しい・・・。

 ざっとこんな感じのようです。

 当社でセッティングしたシステムが奏でる音楽を一度なりとも体験すると、バランスの崩れた音に対しては即座に身体が違和感を訴えるようになります。ですから今回のような出来事はよくあることなのです。


 その間ご自分なりに色々と試みられたようです。アンプに至っては500万円超の物になり、ケーブル類にも100万ほど使ったそうですが、結局は元々使っていたローゼンクランツに落ち着いたようです。


 振動を寄せつけない考え方のエンクロージャー


 聴かせて頂いた音は生気に乏しいもので、音楽を聴いているという意識は薄くしか働きません。とにかく楽器の音として脳が認知し難いのです。ここまで音楽振動を束縛してしまうのはやり過ぎではないでしょうか。

 それは、子供が親の顔色を伺いながら恐々遊んでいる様子に似ています。スピーカーという物は、微弱な信号にも忠実に反応出来る状態でなければなりません。特に俊敏性が何よりも先んじられるべきです。それが音楽のリアリズムに直結するのです。


 アバロンは鳴り難いスピーカーの代名詞


 スピーカーの下に高性能なインシュレーター(BIG BOSS)が入っていてこの音なのは、私の膨大な過去のデーターに照らし合わせても普通では考えられません。

 ”どうして?”ではなく、”だからこそ”、アバロンが鳴り難いスピーカーの代名詞のようにいわれるのでしょう。こんな時は下の写真のようにわざとスピーカーを変な向きにして聴いてみると、スピーカーその物の現状バランスが良く分かるのです。


 それにしても銭食い虫です。トランスポートとコンバーターを併せれば300万円は軽く越えるはず。ざっと見積もっても、ケーブルやインシュレーター等まで入れれば、センターラックに収まっている物だけで1,000万円は行くでしょう。


 ”毒を喰らわば皿まで”の気持ちがあってでさえも、一筋縄では行きそうもありません。


 出来る事にも幅が有る


 ”クリニックによって改善される幅がどれくらいなのか?”、両者の間に大きなギャップがあってはなりません。私はクリニックに入る前に急きょローゼンクランツの試聴室へI.Oさんを強引にお連れしたのです。

 当社のカーディナルスピーカー/The Maestroはアバロンとは対極の鳴り方をするので、その両者間のどこらあたりが落としどころとして可能なのかを知って欲しかったのです。自分でもビックリですが、無意識にそういう行動を取っていたのです。


 果たしてどこから手をつけるべきなのか?


 わずか30分ほど聴いて頂いただけで渋谷までとんぼ返りしました。”さて、どこから手をつけるべきなのか?”。しばらく頭を抱えて考えましたが、今日の私にとっては、この優秀コンポの力を引き出すのに、ラックのスパイクにGIANT BASEを履かしてみるしか宛がありません。


 音質改善、音質向上度合いがちょっと心配でしたが、これは効きました!。とにかく基礎体力面の底上げをしておかないと、この後次々試みる技術的効果の先読みと判断に迷いが生じます。 


 本格的クリニックの開始です


 そのアバロン/ダイヤモンドの各スピーカーユニットに耳をそばだてて音の動きを探りますと、ツイーターこそいいものの、ミッドとウーハーの取り付けの向きの違いによって生じるハーモニーバランスにバラつきがあります。

 これが今回のクリニックの重要ポイントとなりそうです。

 ウーハーからツイーターまで音が自然につながる為には、ネットワークの完成度はいうまでもなく、ユニットとエンクロージャーが倍音波動としてつながらなければなりません。

 それには各ユニットのエネルギーであり、響きの方向性がダイナミックなフォルテからピアニシモへ昇天消失して行くよう同一軸に是正してやる必要があります。


 バッフルの厚みに驚き


 お客さんの許可を得てユニットを外してみると、そこには信じられない光景が・・・・。バッフルが厚いというのは情報として知っておりましたが、実際に10センチほどある現物を見ると明らかにやり過ぎだと再認識しました。



   錦糸線と内部配線の関係


 さらに驚いたのは内部配線です。1本の素線が2ミリはあろうかという太くて硬い単線が3パラで捻ってあるのです。そしてスピーカーターミナルが折れないように硬い添え木がかましてあります。


 この点においてはどうなんでしょう?。ご存知のようにスピーカーユニットにはボイスコイルが巻かれてあります。柔軟な動きが出来るようにと、そこからとりわけ細くて柔らかい錦糸線で繋がっているのです。

 そこに太くて硬い線が繋がれますと、高速道路からいきなり細い路地に突っ込んで行くような状態が起こります。エネルギーをロスしたくないという気持ちは分りますが、何事も極端はいけません。エネルギーの流れをコントロールするアクセルとブレーキはスムーズが一番です。

 基本的には太い、重い、硬い、キツイといった音の構成になるスピーカーですから、とりわけエネルギーバランスや響きの方向、そしてネジのトルクコントロール等のデリケートな調整が大きく効いてくるのです。


 加速度組み立て


 当社の誇るスピーカーの加速度組み立て技術を施したわけですが、金縛りのようであった音の硬さは取れ、リズム感も出てきましたし、メローディーも美しく流れるように生まれ変わりました。

 この問題点を解決する方法を発見開発したのは数年前ですが、その技術はカイザーサウンドだけが持つ唯一独自のものです。

 その効果はポテンシャルの高いスピーカーほど顕著に現れ、どこにでもあるような安物の楽器であっても、名演奏家の手によって演奏されたかのように見事に名器へと変身するのです。


 変則な部屋なので気流のコントロールが大変


 これだけいびつな部屋ですと、左右のスピーカーを前後、左右等、正確にセッティングすればするほど音は変になります。それは直接波と反射波の複雑な干渉によって起こる現象です。



 対処療法的手法と物理的現象解明へのアプローチ


 正直言って、この問題を解決する方法として、これといった計算式は現段階で存在しておりません。手っ取り早い方法としてよく知られているのが、ルームチューニングパネルを使って、空気を複雑かつランダムに反射拡散させるやり方です。もう一つはカーテン等の吸音材を使う方法です。 

 こうした方法にある一定の効果があるのは認めますが、前者においては、音を荒っぽく切り刻んでしまうので、美しい響きや味わい深さが欠如する方向になります。後者は音楽の生気を萎えさせてしまうのが難点です。

 私の長年の研究は、発生してしまった嫌な音を消す事に務める”対処療法”ではなく、”根本解明”を目指すものであり、魅力ある響きや音色を生み出す”メカニズムの原理”そのものであります。


 いびつな部屋にはいびつな辻褄合わせしかありません


 魅力ある音とはスピーカーと部屋との共同作業によって生み出されるものです。それは人付き合いと同じように、如何に相手の気持ちを汲み取るかに掛かっているのです。

 その2本のスピーカーのハーモニーポイントを見つけ出すには、宝くじを引き当てるほど確率の低いものですが、唯一その可能性があるとすれば、心の耳を澄まして聴く事ができる鍛え抜かれた地獄耳しかありません。


 そんなわけですから、ご覧のように左のスピーカーなどはわずかではありますが外振りになっております。右のスピーカーはほんのわずか内振りですので、両スピーカーとも左流れになっています。

 これが今日のセッティングのキーポイントです。


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