トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅暗幕を張り巡らしたAVルーム(フォステックス/G1302)

暗幕を張り巡らしたAVルーム(フォステックス/G1302)



 昼間なのに明かりを消すと映画館のように真っ暗


 部屋全体に暗幕を張り巡らしているのは事前に送って頂いた写真から分かっていました。にも拘らず、部屋に足を踏み入れた途端、思わず後ろに身を引いてしましました!。


 壁面だけならまだしも、床まで黒い布で覆っているのでとても異様な雰囲気。会話の声も無響室にいるようで普段とは大きく違います。


 ありとあらゆるルームチューニング材が・・・


 K.Mさんはビジュアル派だからきれいな映像を追求するあまり、暗幕の量が増えて行ったのだと思います。また、音についても試行錯誤と苦労を物語る、諸々のルームチューニンググッズが部屋の至るところで目に入ります。


 壁面をカーテンで取り巻くというこのようなアプローチは、音像定位を第一のテーマに掲げるのであれば、音の乱反射に悩まされる事もなくプラスに働く有効な手段であります。

 しかし、音楽を聴く喜びであり、その美しい音色や魅力も味わいたいのであれば、響きというものを抜きには語れません。何事も行き過ぎはいけません、ほどほどにしましょう。


 こんな時こそ”カイザーセッティング”がお勧めです。


 スピーカーの発する直接音の第一波と部屋の反射によって次々と生まれる間接音を上手く波動に乗せて、辻褄合わせをする方式の倍音セッティングの事を”カイザーセッティング”と呼んでおります。


 診断の結果、低音が結構淀んでいましたので、先ず手を付けたのがジャンパーケーブルの交換でした。音の良い長さの157.5ミリで作ってありますので、まとまりのある音になるのです。
 
 床一面に張り巡らされた黒い布の上に石のベースを置き、その上にスピーカーがセットしてあります。本当はベースごと調整したいのですが、大変そうだったのでスピーカーだけを小手調べ程度の感じで1〜2センチ動かして調整しました。


 スピーカーケーブルの方向性を疑ってみる


 そして、次の指摘点はスピーカーケーブルの結線の方向についてです。そのケーブルには大きな矢印がハッキリと入っていますが、どう聴いても反対だと私は感じたので、「だまされたと思って反対に繋いでみませんか?」と促しました。

 硬いケーブルなので変更に手間取りましたけど、繋ぎ変えた瞬間、「こっちがいい!」と誰でも分かるほどの違いです。


 K.Mさんは不思議に思ったのでしょう・・・

 『どうしてこんな事になるのですか?』
 
 方向性はどのメーカーも線引きした時の導体の方向によって決めるのですが、その後、絶縁材、防振材、シースといったケミカル材、更に端末端子等諸々の物性の方向性が加わり、最終的にそれらのベクトル合算値としてそのケーブルの方向性が決まります。

 その結果、音抜けの方向が変わって来るのです

 メーカーとしては同じように作ったつもりでも、製品毎に方向性が変わるという曖昧な結果になるのはその為です。カイザーサウンドのクリニックによるそれらの膨大なデーターでは、半数以上が指定の方向と反対の方が音が良いという結果になっています。

 ケーブルの方向性というのは決して鵜呑みにしないで、必ず繋ぎ変えた上で音の良いと思う方向で使う事をお勧めします。


 セッティング技術こそが製品開発の糧


 カイザーサウンドは沢山のクリニックを通してこのような疑問点を次々と解明してきました。現場で起こるそれらの疑問点の一つ一つが次の製品開発に役立っています。

 ローゼンクランツの手作りケーブルは勿論の事、量産品のMusic Spiritのケーブルに於いても、その都度ドラムを巻き返して次の工程に入りますので、方向性に関しては狙ったとおりの物が作れるのです。

 こんな手間とコストの掛かるドラムの巻き直しまでやるところはどこにもありません。全ての物性の方向性管理をして生産し、なお且つセッティングまで行なうのは世界広しといえど”カイザーサウンド”だけであります。

 ”流れるような音楽性の高さ”

 これはローゼンクランツ製品を手にされた人達の共通した感想ですが、方向性管理された物作りを裏付けるデーターです。


 ケーブルメーカーも方向性の原因究明が出来ていません


 他のメーカーでもやればいいのにと思うでしょう・・・?。

 それは無理というものです。

 導体以外の物に方向性があるなんて事を言うと、目を三角にして否定するに決まっています。業界人のほとんどは科学的に証明出来ないものに対しては、信じようとしない固定観念の強い人達ばかりですから。

 万が一やろうと思っても、導体以外の物性の方向性をチェックするノウハウも持ち備えていません。

 何より悲しいのは、感性という一番頼りにしなければならない己自身を測定器として信じる事が出来ないのですから、その時点で完璧にアウトです。


 フォステックスのG1302は独特の気流を生み出す


 商品は買って頂いて取り付け交換すれば済みますが、クリニックにお伺いした時でないとその技術的な中身までは見る事も確認する事も出来ません。

 要するに一番お徳度の高いのは何かという事になりますが、今日の場合はスピーカーのモディファイ=加速度組み立てであると見立てました。

 フォステックスのG1302に採用されているユニットは、コーン紙とエッジに独特のHR形状が施されている為に回転力が生まれます。


 従って他方のユニットとの微妙な角度やトルクのずれがあると、スピーカー直前の空気の渦の出来方に大きな変化が生じてしまうのです。

 身近な例えですと、船に付いているスクリューが作り出す水の渦をイメージして頂くと分かって頂けるでしょう。このユニットは気流を切り裂くようなデンジャラスユニットなのです。

 だから取り付けには精緻の極みをもって対応しなければなりません。それが加速度組み立てをお勧めした理由であります。

 指先に掛かる微妙なトルクを感じ取り、両者のユニットの調律を計らなければなりません。それは誰れ彼においそれと直ぐに出来る技術ではありません。

 体験した多くの人達が『技術を超えた神業だ!』と言うのはその為です。


 ----- Original Message -----
 From: K.M
 To: info@rosenkranz-jp.com
 Sent: Sunday, May 24, 2009 12:26 AM
 Subject: 本日はありがとうございました。

 貝崎さま

 お世話になります。

 本日はお忙しい中、貴重なお時間を頂きありがとうございました。貝崎さんと同じ時代に日本に生まれたこと、そして巡り会えたご縁に感謝します。(決して大袈裟ではなく)

 今までもHPを拝見させて頂きながらも、ある意味距離を置きながら他人事のように『世の中には凄い人もいるもんだな』みたいな感覚でした。それが突然の一本の電話で・・・他人事から自分事に。

 改めてクリニックに来て頂いた方の感想などをHPで拝見させて頂く毎に、まさか自分にもこのような体験ができるのかと期待と不安が入り混じっていました。で、実際に我が家に来られて・・・正に評判に偽りなしです。

 怒涛の如く的確な指摘を頂きながら、音が生きた音楽へとまざまざと変化していく瞬間を体験した時、これはもう、知識とか経験値といったものを遥かに超越した、職人技という言葉は表現しきれない位の『目から鱗』状態でした。誤解される表現を承知の上でですが、もう『神の領域』だと思います。

 また息子さんとの絶妙のバランスで段取りもよく、4時間近い時間があっという間に過ぎていってしまった感じです。まだまだ消化不良状態ですが、これからはセッティングの悩みからも解放されて純粋に自分の好きな音楽だけに浸れそうです。

 ただ、別の悩みが出てきてまた恐いのですが・・・(笑)
 今後ともどうぞよろしくお願い致します。
 息子さんにもよろしくお伝え下さい。

 K.M


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