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新進アメリカンハイエンドSPの雄"MAGICO V3"

「ケーブル大全2011」のレビューがきっかけ

先頃発売になった「ケーブル大全2011」を読んでいて、Rosenkranzのピンケーブル/PIN-Harmoniousのレビューに目に留まり、その文章が染み入る様に体に入って来る不思議な感じを覚えたので、全体をじっくりと読み直してみた。と仰るM.Kさん。

すると、どの製品レビューも悪く感じられないよう苦慮して書かれた様子が透けて見えるようになります。方やPIN-Harmoniousは、美辞麗句の並べ替えに過ぎない他のケーブルレビューとは印象が全く違い、読めば読むほど”聴いて感じたそのままが正直に書かれている”、という結論に至ったそうです。

上述の如く、閃きにも似た体験をしたM.Kさんの電話での声が上ずっていたので、私の質問を挟みながらお話を伺う事にさせて頂きました。まず初めにシステムの概要をお尋ねしたところ、以下のようなハイエンド機器をわずか半年ほどの間で一気に組んだと聞かされ驚いた次第です。

プリアンプ アキュフェース C-3800 \1,785,000
パワーアンプ FMアコースティック 411 \4,042,500
SACDプレーヤー プレイバックデザインズ MPS-5 \2,625,000
スピーカー MAGICO V3 \3,675,000
 

これは今回の相談の対象となるメインシステムですが、サブはOCTAVE管球アンプとクレモナを中心とした物で、両方併せるとスーパーカーが買えるほどの金額になります。

ケーブルでシステムのチームワークを図りたい

「買った機器の音には満足しているが、電源を含めたケーブル類を見直す事によって、システムの完成を計りたい」というのがM.Kさんの希望でした。これだけのシステムだと、ピンケーブルに今回ほどの強い期待を寄せても、それだけで問題が解決するほど単純なものではないので、先ずはクリニックを受ける事をお勧めしました。

私のスケジュールが盆明けから9月一杯までは詰まっていて、空いている日は1日しかなく、無理に時間を作って頂いての訪問となりました。

問題点が目に見える形で現れています

「こちらです!」と案内された8畳の部屋にはハイエンドコンポが二組。お互いに居心地が悪そう。『窮屈だ!何とかしてくれ!』と悲鳴が聞こえて来そうです。特に致命傷なのが、スピーカーとアンプが2枚のベースにまたがって置かれている点です。

 

こんな風に置かれた機器は時間差のある振動に煽られ、位相歪が発生し音の滲みの原因となります。当然エネルギーもロスします。細く尖り過ぎのスパイクもエネルギーロスを引き起こしますが、更に輪を掛けたようにスパイク受けベースも全くの力不足です。

そんな大きな問題点を一気に解決してしまうほどの強力なスパイク受けインシュレーターが、今夏発売されたばかりの”Captain”であります。今日の陰のM.V.P.と言っても差し支えありません。

クリニック開始

その目からうろこの設置法をご覧に入れましょう。古雑誌4冊を用意し、その上にスピーカーをスパイクごとザックリと載せます。スピーカーを片側に倒して浮いた方の雑誌を一つ外し、そのスパイク部分にスパイク受けを宛がったままスピーカーをそっと下ろすのです。この作業を4回行えば、スパイク受けに傷をつける事も無く、一人で楽にこなせます。

 

分厚い4枚のベースが部屋幅一杯に隙間も無い状態だったので、2枚取っ払ってメインに鳴らしたいMAGICOだけをベースに載せる事にしました。こうするとスピーカーをベースごと動かせるので、音楽を聴きながら音の良い場所を探し出す事が出来るのです。このスピーカーとベースの振動のバランスとタイミングの最適化は、四股とてっぽうで四肢のバランスを身に付ける相撲の基本のようなものです。

スピーカーの間に置いてあったパワーアンプ/FM411をラックに収め、パートナーとなるCDプレーヤーとプリ達が一連の動きが出来るよう同じラックに組み替えました。

 
クリニック前   クリニック後

FM411のスピーカー端子が独自規格の為、バナナ端子を介して繋ぐ方法を採ってあります。その各部材のマッチング(加速度組み立て)を取って配線するようにしました。

ローゼンクランツの強力アイテムを順次投入

本日採用したしたスピーカーケーブルはSP-RGB2aです。これはアンプとスピーカーのグリップ力が確実に上がる強力なアイテムです。次に行ったのがM.Kさんが一番関心を示されたピンケーブルの結線です。勿論PIN-HarmoniousをCD、プリ間とプリパワー間の2ヵ所とも使用しました。

電源部だけをそのままに、この段階で試聴して頂きました。ジャズがお好きなようで、カーティス・フラーを聴きました。想像通りだったのかかなり満足のようです。

リバウンドの発生

これからじっくり仕上げて行く予定だったのですが、M.Kさんに夕方から急用が出来たので、「急いで欲しい」と言われちょっと慌てました。音の計算は立っているのだけど、これだけの大手術となると全体のバランスが整うまでに時間がそこそこ掛かるので、残された時間がギリギリです。

急いで電源周りの配線に入ります。役割分担ケーブルの最新型である30番台シリーズを用意しました。壁コンセントからタップまでは、50年前の生き生きとした電源を蘇らす事をテーマとしたMaximum type32を使います。プリにMusic Conductor type35、CDプレーヤーにDA/Maximum type36、パワーのFM411は直出しなのでそのままです。勿論電源タップはNiagara type4です。

満を持して音を出してみると私の読みと少し違って大人しい音になった。この鳴り方にM.Kさんの表情がすぐに曇ってしまったのだ。不安げに口から出て来た言葉は「大人しい音になりましたね・・・」でした。

「15分位で良さを覗かして来ると思います。その後更に15分で見違えるよう化けると思いますので、このまましばらくご辛抱下さい」。とは言ったものの、こういう時は時間が長く感じます。

しかし、出来の良い子で予想通りグイグイ良くなって来ました。M.Kさんも安心したのか、「信じられないほど良い音になって来ました」。「嬉しいです」と満面の笑顔に変わりました。

インシュレーターの王様「BIGU」の登場

スピーカーの足場は完璧に取りましたが、それに引き換えラックの機材に関しては何一つ出来ていません。棚板間のスペースの関係上インシュレーターを挿入出来そうなのはCDプレーヤーしかありません。

本当は全部の機材の足並みを揃えてやるのがセオリーですが、その中でも一つだけ処置するとなると、CDに決まりです。その点では大変付いていました。BIGUをCDプレーヤーの下に入れるや否や、今まで埋もれていた音が一気に爆発しました。この音の変化にはM.Kさんは腰を抜かさんばかりに驚いていました。

ローゼンクランツはインシュレーターの王様

そう呼ばれるのも伊達ではありません

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