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世界最大級のフルレンジスピーカー"Kaiser Tower"

最初で最後なのか?"Kaiser Tower"

エレベーターのドアの高さをI.Oさんに事前に計って貰い、大丈夫と踏んでいたのですが、スピーカーを載せる台車の高さをすっかり忘れていました。私の住んでいるマンションのエレベーターより大分低く、斜めに倒してやっと入るという綱渡り状態での搬入でした。

これほど搬入に神経を使う巨大スピーカーは二度と作るものではないと思いました。"Kaiser Tower"を作るのは恐らくこれが最初で最後でしょう。やっとの思いで部屋に運び込み、緊張が解けた途端一同倒れ込むように休憩です。I.Oさんと息子はベランダでニコチン補給。私は一人でお茶を。

 

一服後、寝かしたままの状態で根元の部分に枕をあてがい、大小のスピーカーベースを取り付け終え、立てたばかりの"Kaiser Tower"です。未だユニット保護のダンボールが付いています。それにしてもデカイです。

スピーカーの設置に先駆け、ラックに機材を配置します。下からEMMのトランスポート、EMMのコンバーター、一つ空けて今回同時注文頂いたRosenkranzのパッシブコントローラー(C-1EX)、一番上には同じくRosenkranzのパワーアンプ(P-1EX)です。2週間後に届くLINNのDSクライマックスが空席に入る予定になっています。

その価格は、な、な、なんと2,940,000円!!。

10日後に拝まして貰いましょう。

 

ラックの下にはオーディオラック用のサウンドステーションも設置予定になっているので、今日は仮セッティングのようなものです。従ってケーブル関係も今ある物を繋いで、どんな鳴り方になるのかを掴んだ上で、能力に応じたケーブルを用意して正式に仕上げる考えでいます。

強制的に決め込まれたスピーカーの設置場所

左の壁面は一見壁のように見えますが、実は観音開きの収納棚なんです。従って、すぐ隣の幅2米半ほどの囲われたような窪みの部分にスピーカーを置くしか選択肢がありません。角度によってはスピーカーが4本に見えて壮観ですが音作りは極めて困難です。

この"Kaiser Tower"はフルレンジの後面開放型なので、正面と同じ音が後ろにも出る仕組みになっています。その複雑に反射する音を直接音とどう折り合いをつけのるか、技量が問われるところです。恐らく1ミリ動かすだけで全く違った音になるでしょう。

私はカイザー試聴室でもあまり動かしていませんが、息子は数十回と言わず微調整して、その音の傾向と音色のバリエーションを豊富なデーターとして持っているので、ここでは私の出る幕はなさそうです。ならばと、食卓用の椅子に座り、高見の見物と決め込みました。

見た目と音のバランスを考慮に入れながら少しずつ追い込んで行きます。かなり良い音になったと思ったら、大きく動かしてはまたやり直し。それを数回繰り返したでしょうか、見事な音を作り上げました。

これで終わりかと思ったら

「ああ・・!」、勿体無いのに崩してしまった

果たして今の音を超える音がその先にあるのか?

私にはその先はない!

きっと後悔するぞ!と危惧しましたが

見る見る内に、「おお・・!、おおお・・・!!」

凄い音になったではありませんか

彼には確固たる信念があったのだろう

始める前は予行演習だといっていたのに

凄い音を引き出してしまった

 

2度目の訪問

リン・クライマックスDSのセッティング

リン・クライマックスDSの入荷を待って再セッティングに伺いましたところ、DSは既に聞ける状態になっていました。EMMで鳴らすCDとの音の違いはどうなのか?、楽しみに聴かせて頂く事にしました。

「う〜〜ん、今の状態だとCDの方が良いですね」

息子が次のように尋ねます

「CDとDSの使い分けといいますか、使用頻度等はどのようにお考えですか?」

『その都度ディスクの入れ替えをしなくても済む、DSが中心になると思います』。『カイザーさんにプランして頂いたカーオーディオでも、CDよりもipodで聴いていますから』。

「アナログとデジタルならいざ知らず、同じデジタルですから両者の音にあまり開きがあると楽しめないし、面白くないですよね」。「しかし、それを実際に行うとなると、かなりの難題ですよ」

「とにかく色々な曲をかけ足でかけて頂けますか?」

10分程でしょうか、確認に掛かった時間は。CDとDSの音の違いを大体掴みました。

『・・解りました!』

「この音だと、先ずクライマックスDSに繋がっている配線の配置転換や、方向性のチェックをしましょう」。「コンピューター関係は信号のやり取りが双方向だから関係ないだろうと思われますが、色々なファクターによって、こちらが良い、こちらが良くない、といった違いが意外と出るんですよ」。

「はい、繋ぎ換えました、これで聴いてみて下さい」

『情報量も違うし、ノイズっぽさがなくなりましたね』

クライマックスDSの加速度組み立て

「次に気になるのがリンのDSプレーヤー本体です」。「中がどうなっているか、底蓋を外して見ても宜しいでしょうか?」

『はい、問題ないです』

底蓋のネジをフロント部分から後ろに向かって外していますと、最後の4つ目にはワッシャがありません。入れ忘れたのかもと思いつつ反対側のネジも同じように外していると、やはり後ろの一箇所だけワッシャが入っていません。

音作りの段階で意図的にやったのでしょうか?。変わっているというか、拘りなのかは今の段階では分りません。右の写真にありますように、ネジ8個に対してワッシャが6個しかありません。

 

開けた内部を二人でしげしげと見て、やおら問題点を見つけ出します。先程から聴いていて感じた事ですが、音の安定感に乏しいというか、どこかそっくり返ったようなところがあるんです。心臓部である基盤が天井にぶら下がる形で付いているのがその原因であると診断しました。

 

 

基盤等、部品全てが天吊状態のクライマックスDS

基盤の両エンドに3本ずつ、そしてその真ん中をアルミ棒で押さえる形で3本、要するに9本のネジで吊り下げられているだけです。分厚いアルミ無垢材として得られる筈の耐振面での恩恵が30%しか生かされていないように思えます。

しかし、如何に問題点を指摘したところで、構造上どうする事も出来ませんので、ネジの組み換えや、そのトルクコントロールによって、振動の流れにストレスを溜め込まないように、”加速度組み立て”をやってみましょう。

スピーカー等色々な面で、I.Oさんにとって”加速度組み立て”の効果は何度も過去に体験済みですから、高価な機器であってもすんなり任せてくれました。信頼頂けるのは嬉しい限りです。

筐体の精密加工には驚き

傷をつけないよう一つ一つ慎重にやります。小さな筐体には驚くほど精密な加工が施されています。本体とふたの部分に遊びが少ないが故に、雑な組み立てをしようものなら、きしみが発生しかねない危険性をはらんでいて、それは歪っぽさや音の滲みへと繋がってしまいます。

”これがリンの伝統なんだ!”と言われても、ハイエンドの製品にこれだけの危険を冒してまで、このコンパクトサイズに拘り抜くのは、設計の立場からすると艱難辛苦この上ありません。良くも悪くも、この頑固さこそ英国魂なんでしょう。

凄い手応えは伸びしろの証し

このクライマックスDSには、呆れ、感心しながら”加速度組み立て”を施して行きますと、凄い手応えと共に期待感がふつふつと湧いて来るのが分ります。これは今までに感じた事のないものです。

”驚くほどの伸びしろ”と言ったらいいでしょうか。バルセロナ五輪決勝で岩崎恭子さんが見せてくれた、ゴール直前での驚異的な追い込みが私たちの目に焼きついています。正にそれに似た感じです。

そんな初めての手応えを脳に刷り込みながら、最後に本体と底蓋の当たりを見ながらミクロの調整をし、ネジのトルクコントロールを施して完了です。緊張のあまり手にはうっすらと汗をかいています。

さて、もう一度DSをラックに戻し、結線し、再試聴です。

『Ohh!』

いやはや!、凄いの!何の!

完全に化けました!

EMMに勝るとも劣らぬ音です

本体価格280万ですが、この音の違いをDSバージョンアップメニューとして80万円アップで案内しても、聴いたが最後、この差なら「毒を喰らわば皿まで」の諺のように、クライマックスDSオーナー全員がアップグレードするのではないでしょうか。

その差の大きかった今までの一番はエソテリックのトランスポートでしたが、リンのDSが伸びしろの大きさであっさりと抜いてしまいました。それ位大きな違いが出ました。

ウッドブロックからサウンドステーションに変更

さて、本日の仕事のメインとなるオーディオラックの受け方を、ウッドブロックからサウンドステーションに変更します。今回納品するのは現行のセカンドモデルではなく、幅105ミリのハードメイプルの板を1枚1枚手作業で組んで行くオリジナルモデルです。

 

倉庫に数年間眠っていたのが出てきたのです。音は良いのだけど組むのがあまりにも大変という理由でお蔵入りになった商品です。納品前日に5年振りに組みましたが、思いの外上手く組めました。でもやっぱりこの構造は大変です。組む度に次はやりたくないと思ってしまいます。

 

ラックから一旦機材を下ろし、サウンドステーションに入れ替えます。そしてもう一度機材を元あった場所に収め、クライマックスDSを予定していたラックの真ん中に入れて基本フォーメーションが組めました。

次にインシュレーターを入れて仕上げに入ります。I.Oさんのところにはローゼンクランツのインシュレーターが沢山余っています。DSのサイズと音の傾向を鑑みDADDYを使いました。

加速度組み立てを終えた時点でその音の変貌振りに驚かされたのもつかの間、更に追い討ちを掛けるように、その先の先に驚愕する音が待っていたのです。何という伸びしろでしょう。PB-DADDYも凄いがクライマックスDSは3段ロケットいやもっとかもしれません。

ここまで処置前と処置後の音の変化の大きさは私の経験の中でダントツ一番です。クライマックスDSをお持ちの方は是が非でも加速度組み立てとローゼンクランツインシュレーターのペアーで攻めて欲しいですね。

ケーブルをRGBaシリーズに変更

電源ケーブルは今日のところは触らず、デジタルケーブルとラインケーブル、そして、スピーカーケーブルを最近のRGBaシリーズに変更します。

■付属の光ケーブル ⇒ DIG-RGB2a
  か細い音から力強く逞しい音に

■BAL-RGB2 ⇒ PIN-Harmonious
  楽器の織り成すハーモニーと埋もれていた音が溢れ出る

■SP-RGB3 ⇒ SP-Rosenkranz
  音の切れ、ノリの良いリズム、強弱のコントラストが際立つ

一新した信号系ケーブルによってスピーカーの口径がワンサイズ大きくなったような鳴り方に変わりました。更にサウンドステーションの効果も凄いのでしょう、"Kaiser Tower"から生々しく臨場感ある音楽が余裕たっぷりに鳴っています。

”カイザーセッティング”によって部屋の隅々にまで音楽が満遍なく届きますから、ソファーに座って読書していても、ダイニングテーブルで食事していても上質な音楽を楽しめます。

この鳴り方はどこにもない芸術性と豊かさ、そして安らぎを与えてくれます。しかし、ひとたびボリュームを上げようなら、眼前にステージが展開し生演奏さながらの迫力が得られます。

"Kaiser Tower"と共にI.Oさんには素晴らしい人生を歩んで頂きたいと思います。

 

3度目の訪問

新製品のAC-Add On/33を4本使用

クライマックス DSとリンケージされたインターフェース関係の電源ケーブルに継ぎ足し用のACケーブルを繋ぎました。オリジナルのMaximum33に比べると長さが半分太さも半分ですが、性能はほぼ同じの優れものです。名前はAC-Add On/33と言います。

AC-Add Onは着脱交換式でない機器用の直列追加型ACケーブルです。主に混変調ノイズを発するインバーター式冷蔵庫やテレビ、あるいはパソコンの周辺機器用として開発しました。ノイズっぽさが無くなるのは勿論ですが、何よりも音の立ち上がりが良くなります。

同時に低音楽器の力感が増します。高い周波数にも低い周波数にも効きます。特に冷蔵庫に繋いだ時が顕著です。費用対効果は最高です。耳達者な上得意さんを中心にかなり売れています。

AC-Add On/33 (0.9kaiser)
  \37,800(税込)

最高級ケーブルの納品

クライマックス DSのようなデジアナ機には、通常はAC-Maximum DA/36を使いますが、I.O邸のようにプリアンプの代わりにパッシブコントローラーを使う場合は、AC-Music Conductor/35を入力機器に使う事をお勧めしています。 

I.Oさんは初代AC-Music Conductorを使って頂いたのですが、聴き比べの結果、大幅にSound UpしたType35に入れ替える事になりました。

■その表現の違いは”実在感”です

次はローゼンクランツケーブルの頂点に君臨するピンケーブルの最高傑作PIN-Ocean & PIN-Messageです。価格は驚くなかれ2本1組で\934,500です。ペアー使用で本領発揮するオーシャンとメッセージは完全なるコンビネーション設計です。

■その最大の特徴は”芸術性”です

リン・クライマックス DSはこれ以上は無いであろう布陣の歓待を受け、音楽の新たなる地平へと羽ばたこうとしています。I.Oさんは「芸術や感性」の仕事で世界中を駆け巡っていますので、昇竜の如く”Kaiser Tower”と共にどこまでも昇って行って欲しいものです。

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