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オーディオルーム完成にヴィンテージ(TRUSONIC-628)で
システム構築

気に入ったスピーカーにやっと出会えた

20年近くオーディオから遠ざかっていたけれど、念願のオーディオルームも新築と共に叶い、ステレオを買うべく東京へ何度も足を運んだと伺いました。しかし、自分のハートを射るようなスピーカーに出会えなくてしょげていた時、ある店でヴィンテージスピーカーを聞いて、「こんな音が欲しい!」と初めて身体が反応したそうです。でも、こんな話を聞さかされると、オーディオ界にとっての今日までの50年はなんだったのか? と、ブルーな気分です。

後は、スピーカーの下に『ローゼンクランツのインシュレーターを敷いて、どれだけ音が変わるのかを知りたくて電話をしました』と仰る。又、20年以上も前に、広島のカイザーサウンドで買い物をした事があると聞かされ、その声と共に名前を思い出した次第です。

ご本人の希望は雑誌の評価が高かった「CAPTAIN」だったようですが、スピーカーの四隅の足の高さよりも低い為、間にかませ物が必要と分かりました。単に高さ稼ぎの為だけに余分な物を用意するのは音にとって良くないので、予算が少し高くなるけど、どうせならとPB-BIGUの試聴をお勧めしました。

電話を頂いた一週間後には丁度広島に帰るので、その時に試聴品をお持ちする約束をしました。この度購入されたビンテージスピーカーを私は聞いた事が無かったので勉強も兼ねて伺いました。


TRUSONIC Model-628の基本的セッティング

電話の中では38センチのダブルウーハーの3ウェイに12セルのホーンを載せていると伺っていた関係で、かなりの大型を想像していたので、ほぼ正方形と言える箱にはちょっぴり拍子抜けしました。後日調べてみたところ、それは約50年前のスピーカーで、TRUSONIC Model-628でした。

Y.Kさんが好んで聴かれるのはクラシックが殆どで、たまにジャズを聴かれるそうです。早速、ソナタ、コンチェルト等ピアノやバイオリンを中心に聴かせて頂きました。ご本人は気に入っているようですが、私には問題点が幾つか目の前に浮かんでいます。


実力の1/3の状態に見て見ぬ振り出来ず、調教せずには居られない

特にダブルウーハーにしてはピアノの音に全く力が感じられないのです。今位の迫力であれば、もっと小さいスピーカーでも間に合います。嫌な音を抑える方向で調整して行くと、大抵の場合は今鳴っているような音になります。カイザーウェーブの谷間に相当する音で、それは躍動感に欠けこじんまりとした箱庭的な音楽に留まります。

ダイナミックな音の方向へ目を向けると、短所の部分も丸見え状態になるので耐えられなくなるのです。こうした症状の時の判断として、スピーカーの位置調整に目が行く人は先ず居ません。殆どの人はケーブルは愚か、アンプを取っ替え引っ替えする羽目になるのが落ちです。


やじろべえ・バランスの崩れた音とは?

やじろべえのバランス図を二つ書き、左図のようにバランスが崩れている状態のままで合わそうとすると、天秤計りの要領で中心からずれたところで持ち上げて初めてバランスが取れます。ゆらゆらと揺れて非常に不安定です。

即ちバランスの崩れている時には、音の傾向が反対方向のアンバランスな物を持って来て丁度バランスが取れるのです。この間違いの連鎖に入ってしまうと、最後まで間違いを犯しつつ不安定な中でのバランスを求めざるを得なくなるのです。

だから、どことなく音が落ち着かず、得意な表現と苦手なものが極端に出てしまいます。理想は右図のように、左右の真ん中で天秤計りのバランスが取れるようでなくてはなりません。オーディオで一番大切なのは、最初にボタンの掛け違いを起さない事です。

ここが迷路に入り込む岐路であります。オーディオとは本当に厄介な代物です。皆さんこうして高い授業料を納める事になるのです。幸いにもY.Kさんは私の助言があったから、音の迷路に嵌まり込まなくて済みました。運の良い人はどこまで行ってもついています。

せっかちにも、すぐにスピーカーの下にインシュレーターを入れて試そうとなさるので、「先にやる事があるので、その確認作業が済んでからにしましょう」。と言って、彼を制止しました。


振動と気流の時間軸を揃えるプロの腕を披露

スピーカーベースとその上に設置しているスピーカーの位置が気になって仕方がないので、図を書き示し乍ら、振動の往来のずれによって引き起こす音の滲みについて説明し、その是正を一番最初の仕事にしました。次にオーディオラックの位置調整です。クリアテープのマーキング位置まで前に出します。

ラックとスピカーの位置出しを終えて初めて、スピーカーの下にインシュレーターを入れる事が出来ます。ダブルウーハーですから、安定感を考えて迷う事無く前2点・後ろ1点支持にします。

スピーカーの上に載っている12セルホーンとツイーターは後付によるプラスオンの物だったので、先ずは回路から切り離してオリジナルの628のみで調整を取りました。後日の訪問時にプラスオンをした状態でチューニングしてみたいと思います。

BIGUインシュレーターは38センチダブルウーハーの瞬間のエネルギーに対しても、余裕を持って捌くだけのポテンシャルを持っています。クラシックを好んで聴かれるY.Kさんに大いに喜んで頂ける事でしょう。オーディオラックとケーブル類はティグロン製との事。


真空管アンプは長野のサウンドパーツ

サウンドパーツは良心的な価格と安定した性能で信頼を集める、ガレージメーカーならではの行き届いたサービスと、魅力あるオリジナル製品を開発する優秀な存在です。

プリアンプ :Love Five
パワーアンプ :Love Three/PX25push-pull
アナログ・PL :Sound Parts Original
CDプレーヤー :LINN IKEMI
Audio Rack :Tiglon
ケーブル類 :Tiglon


天の声に渇を入れて貰おう

スピーカーのセッティングをすると見違えるような音になりました。ピアノの左手で弾く和音の重なりの重厚さなど先程とは雲泥の差です。ステレオはやはりセッティングが大切ですね。味わい深い素晴らしいスピーカーです。

全ては波動で成り立っているのですから、その波が調和状態になければどうにもなりません。セッティングによる腕の差がこれだけ出る事に対して、どうして納品設置のプロであるはずの販売店側はこのようなメッセージを発しないのでしょう。

価格戦略で攻めてくる通販・量販に負けない為には、今は店の中で講釈を述べている時ではありません。オーディオ専門店の生き残りは腕を磨く事にしかありません。現場に出るべきです。戦国時代の武将のように各地から実力者が現れて欲しいものです。

今鳴っている音に比べて、現代のスピーカーの実体の無さは嘆かわしい限りです。パッと聞きの情報量が多いだけで、だからそれがどうかしたの?! という感じです。それはスピーカーに限らず、車も、ファッションも似たような傾向を示しています。

Y.Kさんにも何度も上京して、オーディオショップを回ってみたけど欲しいと思えるスピーカーに出会えなかった、と言われているではないか。

製造者よ! 自分が本当に欲しい物を作れ! (天の声)

販売者よ! プロとして良い音を納品しろ! (天の声)

消費者よ! 物を買うな感動と価値を買え! (天の声)

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