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リフォームに伴うオーディオルーム簡易設計
(TANNOY Definition DC10 T)

リヴィングルームのオーディオ簡易設計

40年振りに大々的に家をリフォームするにあたり、オーディオ熱が復活し始めたと仰るK.Kさん。音の良さそうなラックはないかと雑誌をめくっていた時に、ローゼンクランツのラックが音が良いとの記事に目が留まり、電話での相談を頂戴しました。

「ラックも然る事ながら、オーディオルームの簡易設計もやっていますので、ご相談承りますよ!」と、ご案内申し上げたところ、『幾ら位で?』という事になりました。オーディオ専用ルームではなくリヴィングなので、出来る事も限られている関係上、10万円を切る値段でお引き受けしました。

主だった内容は床暖房対応のフローリングと音響用天井材の選定に始まり、左側の和室の引き戸の形状及び素材の指定。更にその反対側の南側の履き出し窓のブラインド希望からカーテンへの変更アドバイス等があります。ちなみにフローリングは、\18,800/uもする最高級品で幅75・厚15のアッシュに決めました。

床の次に音に大きく影響するスピーカーの背後の壁の処理も細かく助言させて頂きました。施主さんが大らかな方なので、打ち合わせは設計士の方と私に殆ど任せて下さったので、プロ通しの間ではスムーズに進める事が出来ました。

オーディオルームの簡易設計というのは、ファックスやメール、そして電話による打ち合わせで全てを済ませる方法なので、現地へ私が出向く事はありません。途中で有った事といえば、電源工事に入った時点で壁コンセントのHBL8300/BROWNとコンセントプレートを郵送し、電気工事屋さんに取り付けて貰った事だけです。


慌しい納品当日

リフォームも完了し、オーディオラックを納品設置する日がやって来ました。カイザーオペル号はこのところナビの調子が悪いので、納品はシトロエンCXで行く事にしました。とは言うものの、最近購入したばかりのそのCXでは、ETCが使えるのかどうかの確認が出来ていないのです。

カードを入れた際に、向きが反対の場合は「認識出ませんでした」というメッセージが発せられるのですが、反転して入れ直せども「認識しました」とも何も言わないので、不安で未だにETCゲートを潜った事がありません。

昼間の交通量の多い時は後続の車に迷惑をかける恐れがあるので、深夜から明け方の車の少ない時にテストをしておく必要があります。何故か当日はそんな事が気になっていて寝付かれませんでした。

そうしている間に夜が明けようとして来たので、テストをする為に木場インターのETCゲートに恐る恐る入ると、ETCのランプが点きバーが「どうぞ!」と待っていてくれたかのように上がりました。先ずは一安心。湾岸を千葉方面へ走っていると、朝焼けがやけにきれいだったので写真に収めました。


シトロエンCXが取り持つ不思議なご縁

納品する物を車に積み込み、準備万端にて今日の納品先である茅ヶ崎へ向います。久し振りの左ハンドルですからCXに慣れるまでには暫くかかりそうです。K.Kさんのお宅は旧市街なので道が狭く、少し離れた駐車場へ入れる事にしました。

すると、K.Kさんから、『CXは懐かしいですねぇ! 20数年前に私もCXに乗っていたんですよ!』と笑顔で話し始めました。「エッ!本当ですか?」。12月8日に納車されて以来、未だ一度も納品に使った事がないのに、今日は何故かCXで納品に伺おうという気持ちになったのです。

あとで思えば、茅ヶ崎というお洒落な街の名前がそうさせたのかな・・・。類は類を呼ぶと言いますが、何だか、鳥肌が立ちそうです。フランス車のCXに乗る人なんて本当に変わり者ですから、これだけの偶然が一致するのは宝くじに当たるのと同じ位の確立ではないでしょうか?! この最近こんな事ばかりなんです。ツキについているという感じです。

これで、K.Kさんとは一気に打ち解けモードになりました。『CXは電気系が弱く、色々なところでトラブルが発生するので仕方なく手放したんです』。『そうしたトラブルはありませんか?』 

「私はつい半月ほど前に中古で買ったばかりなので、未だ何が何か分からない状態なんです」。「でもXMには3台乗りましたけど、仰るとおり電気系のトラブルに相当悩まされました」。「だから古いシトロエンは絶対に乗るつもりはなかったのですが、程度の良いこの物件に出会った途端に、麻薬のような乗り心地を思い出し、ついつい買ってしまったのです」。


オーディオも過去にはかなりの凝りよう

オーディオについてK.Kさんがおもむろに口を開け始めると、『タンノイのランカスターを持っていたけど処分してしまったばかりです』と・・。『クオードのアンプやAGIのプリアンプは倉庫に今もありますよ』。

CXに乗る位の人だからやはり只者ではなかったようです。部屋に通されると図面で見るのとは全く違った印象です。美術系の大学を出ているという、息子さんの意向が存分に活かされた大変モダンな内装となっています。

大画面TVと共にオーディオ機器も届いており、既に開梱された状態で早く正規のラックに設置して欲しいと言わんばかりです。そのラックの組み立てに取り掛かるにあたって、棚板のピッチをどうするか迷った挙句、均等幅に組んで実際に機器を入れてみたところ、放熱の問題を考えるとパワーアンプの上の空間が明らかに狭い事が判明しました。

SACDプレーヤー LUX D-08
プリアンプ LUX C-800f
パワーアンプ LUX M-600A
スピーカー TANNOY Definition DC10 T

面倒でも1ピッチ(52.5mm)分、プリ部を狭める方向で組み直しです。集中力を持ってトルクコントロールを施したものを、勿体ないけど棚板1枚分だけばらさなければなりません。従って、このラックの組み上げだけで3時間近くを要してしまいました。楽器のように慎重に組み上げるので、それはそれは神経を使います。このように一切手抜きをしないのがカイザー流であります。

次は壁の中の配管にスピーカーケーブルを通す作業です。機器の方に予算をかなり使ってしまったとの事なので、スピーカーケーブルに関してはMusic SpritのSteadyにしました。スズメッキ処理してあるのでノイズにも強く、大変タフなケーブルであります。

これは\1.300/mと決して高くはありませんが、人の声を中心にとてもナチュラルな音で、長時間の視聴にも絶対に疲れる事はありません。三菱電線でオリジナルの線引きをして貰った私の拘りの自信作であります。

スピーカー背面のバインディングポストへの結線も、カイザー寸法に則り、音抜けの良い157.5ミリでSteadyの被服部をカットします。付属のメッキされた金属製ジャンパープレートの音が良くないものだから、ジャンパーケーブルも同一線で作ります。長さは勿論157.5ミリに統一しました。

電源タップにはローゼンクランツのエントリーモデルのPW-3を、壁コンセントからタップまでのACケーブルには、オレンジ色が特徴のBlood Stream1を選びました。K.KさんはAV併せて楽しまれるので、とにかく人の声が自然に鳴るように配慮してプランさせて頂きました。

正方形のスピーカーボードの振動処理速度と処理量共に到底追いつかないので、音がこもり気味となります。これは事前に伺っていなかった物です。床その物は私が推奨した最高級のアッシュ無垢板ですから、そのまま使った方が圧倒的に雄大且つ緻密な音楽を再現出来ます。

とは言え折角買われた物なので、むげに却下というのも角が立ので、結果は分かっていながら両方の音を聴いて頂く事にしました。言わずもがなではありますが、フローリングに直接置いた時の方が楽器の鳴り方そのものが断然自然です。機器を買ったお店の見立てだったのでしょうが、勿体ないけどそれは外す事にしました。

最終的にセッティングを終えたK.Kさんのリヴィングです。ディスプレイとスピーカーはシックに背壁と共に黒でまとめ、大人の落ち着いた雰囲気を醸し出しています。オーディオラックの黒の鉄脚と無垢のハードメイプルも部屋のインテリアに溶け込む形で申し分ありません。


カイザーオーディオラック/Gen2の凄さ

"カイザーオーディオラック/Gen2"4段タイプのAR-850は機能性に優れると共に、ルームチューニング機能を盛り込んだ、とても音の良い画期的なオーディオラックであります。2月発売予定のオーディオアクセサリー144号のオーディオラック特集でも取り上げられる予定です。

3.2ミリ厚の鉄板を絶妙の反射角度に折り曲げ、四方に音楽エネルギーを跳ね返す構造となっています。棚位置のピッチも52.5ミリのカイザー寸法での調整が可能なので、音楽を構成する和音を保ちながらも機器の高さに応じて対応出来る、音楽性と機能性の両立が特徴です。

更に豊富なオプションが用意されていて、鉄柱に"ブラスプレート(真鍮製の鳴き板)"も自在に取り付けられ、それのネジの数とトルク管理によって音楽のエネルギー調整が可能となっています。

多彩で先進のメカニズムを持ったオーディオラックです。特にオプションとして豊富なラインナップを誇っているのは、スパイクとスパイク受けインシュレーターです。完璧を期すならラック専用のベース/サウンドステーションType3があります。

カイザーラックに収まったラックスのCDプレーヤーとアンプ類の梨地仕上げも、壁のクロスやカーテンとも同化するような風合いなのは、さりげない中にも高級感が漂い仕事後のリラックス出来る空間となったのではないでしょうか。

聞かれるのはクラシック音楽が殆どと仰います。幸いにも30畳はあろうかというLDKなので、音の広がりといった面では申し分なくゆったりとした上質な響きが印象的です。

これは空間の広さだけで得られるものではなく、使っている素材が良質だからこそ得られるものです。昨今の石膏をベースとした新建材で囲われた、無味乾燥で味気の無い部屋での音に慣れっこになっている私の耳も、今日の音のご馳走には喜んでいます。

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