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バーチカルツイン・ブックシェルフ/Revel Audio Ultima GEM

メグ・ジャズオーディオ愛好会・若手代表のK.Iさん

昨年のカイザー・クリスマスイベントで約束した昼飯と交換のオーディオクリニック第二弾であります。今回の対象者はメグ・ジャズオーディオ愛好会のウェブでの広報を担当している若手のホープK.Iさんです。クリニックの開始時刻が遅かった関係で、昼飯ではなく夕飯として焼肉をご馳走になりました。

東京の北区にある小さなビルの6階にお住まいです。エレベーターのドアーが開くなり、いきなりステレオの部屋が眼前に現われたのにはビックリ! 60年を越す人生で初体験でした。倉庫として使ってあった部屋を賃貸マンション用にリフォームしてあるのだそうです。

階あたり一部屋なので、他人がその階に入れないように『エレベーターに鍵が掛かるんです』と言いつつ、ポケットからキーを取り出しロックしたのには二度目のビックリでした! 16畳ほどの広々としたワンルームにステレオが主役と言わんばかりに陣取っています。まるでインテリアショップのショウルームと見紛うようです。

きっとファッション関係かインテリアの仕事をしているのだろうと思って職業を尋ねると、IT関係との答えが返って来ました。それにしても、男の一人暮らしの部屋を訪ねた歴代の中で一番綺麗に片付いていました。

部屋に入って真っ先に目を奪われたのは、幅広のフローリング材です。D.I.Yショップで調達し、自分で敷き詰めたのだそうです。だから釘もボンドも使っていません。「浮いたりがたついたりしないの?」 の問いに、『大丈夫です!』との返事。よく考えられていて、床と板材の間に樹脂系のシートが挟んであるのだそうです。だから歩いても何の違和感もありません。

素材は栗。栗の木と言えば暮れに茅ヶ崎のK.Kさん宅のリフォーム時に、私が一押しの材料として推薦した事があるのですが、色目が気に入らなくて没となった因縁の材料です。オーディオルームの床材の中でも手頃な価格でありながら音は一級品です。

以下はK.Iさんから頂いたシステム概要です

機器種類 使用アクセサリ メーカー 機種名・型番
CDP   Jadis JD3 Drive
デジタル-RCA アコリバ DSIX-1.0PA
その他 ニッシャ  
インシュ J1プロジェクト  
クロックレシーバー   インフラノイズ CRV-555
デジタル-RCA 自作(オヤイデ)  
クロック     PROBOX12
デジタル-RCA 自作(オヤイデ)  
インシュ TAOC  
DAC   自作 PCM63P-K 4パラ
アナログ-RCA 自作(オヤイデ)  
インシュ クライナプロ  
インシュ ソニー 真鍮スパイク
プリアンプ   PLINUS CD LAD
アンバランス-RCA 自作 TUNAMI TERZO
電源ケーブル   Audio FSK
インシュ 金属スパイク  
インシュ 神戸音響  
インシュ J1プロジェクト  
パワーアンプ 真空管ステレオ Jadis DEFY7
SPケーブル オギトーン  
バナナプラグ オーディオテクニカ AT6C67
SPケーブル 自作系  
Yラグ アコースティックリバイブ RYG-1
バナナプラグ カーボン  
SPケーブル AET HIN-SP 2004
インシュ 神戸音響  
SP   Revel Audio Ultima GEM
スタンド クライナプロ MGT-60S
ボード MEI  
ST 村田製作所 ES105
インシュ ハーモニックス RF-909X
インシュ カーボンインシュ  
インシュ フォック  
インシュ レクスト RSスクウェア
電源 ステップアップトランス 自作系  
クリーン電源 中村製作所  
クリーン電源 PSAudio アルティメイトアウトプット
クリーン電源 Audio FSK MGV-1
クリーン電源 CSE FP-500HG
電源タップ アコースティックリバイブ MTP-4
電源ケーブル Audio FSK  
インシュ 山本音響  
インシュ フィートオブサイレンス  
ラック ラック GTラック系  

クリニック開始

ポップス系女性ボーカルを好んで聴かれるそうですが、どんな音で鳴るのか興味津々です。ジャディス(仏)のCDとアンプの妖艶な音が前面に出ているのでしょう・・・。予想通りのようでもあり、そうでもない面もあり、とにかく高級オーディオでしか味わえない音である事は確かです。

言葉を替えると芳醇過ぎるきらいがあるので音に若さと軽快さが欲しいところです。そこらあたりの調整は適材適所となるよう、電源ケーブルの配置転換や電源タップからの給電方法を大幅に変更しました。

スピーカーの背後の壁が斜めになっているので、オフセットセッティングのような形が気になる程度で、とても上出来だと思います。彼の几帳面な性格が音に現れています。惜しむらくは音の定位に若干の捩れ現象が見受けられました。


スピーカースタンドの方向性が反対

研ぎ澄ました診断モード一杯の耳が不自然な気流の動きを察知します。強力なKT88トリプル・プッシュプルのアンプでドライブされた音が、スピーカーから勢い良く出ているにも拘らず、途中で失速してリスナーまで届いて来ないのです。向かい風を受けているような印象です。

原因はスピーカースタンドの響きの方向性にあります。左右どちらも前後の向きが反対です。メーカーのロゴマークが付いているので、誰だってマークが前になるように設置するのは当然ですが、実はこれが大きな落とし穴なんです。左の写真はLチャンネル。右の写真はRチャンネルの前後を入れ替え、後方から撮影した物です。

物性の響きの方向性まで品質管理しているメーカーなど何処にもありません。作っているメーカーには悪気は無いのでしょうが、音の結果から見ると本当に罪作りです。しかし、慎重に聴けば誰にでも判ります。

マークに関係なく前後を必ず確認して、
音の良い向きにして使うように気をつけましょう。


固定観念や机上の空論に振り回されない事

今日のもうひとつの大きな問題点はスタンドの下に敷いているセラミック系のベースであります。素材もさる事ながらその寸法比が良くありません。折角素晴らしい音を奏でるべく床材を用意出来たのにも拘わらず、わざわざ音を悪くする物を自分から進んで使っているところに問題点があります。これはサッカーで言うオウンゴールに相当します。

スピーカーからの振動が床に伝わっては駄目だ! という固定観念なる縛りが頭の中で出来上がってしまい、自分自身で確認するなり検証するというメカニズムが機能不全に陥ってしまってはいけません。

スピーカーの振動は床全体にスムーズに放出移動させてやるのが、エネルギー運動的には正解なのです。それが、大方の人はスピーカーと床との間で振動を遮断すべきだ! との嘘の理論(机上の空論)がまかり通っているのが現状です。

この点については声を大にして叫びたいです。

スピーカーベースを外し、尚且つスピーカーをベストポジションにセットした状態です。鬱屈したような鳴り方がなくなり、伸びやかで朗々とした鳴りっぷりに変わり、響きも自然に近い感じになりました。


ケーブル類の見直し

元々種類の違うスピーカーケーブルを3本使い、バイワイヤリング方式にスーパーツイーターを足して鳴らしてい事がピントがズレる原因となったのではないでしょうか・・・。

基本に忠実という意味合いからしても、スーパーツイーターを外し、一気にバイワイヤリングも止めてシングルワイヤリングにして、一番シンプルな状態で聴いて貰います。狙い通り滲みのないスッキリした音が出現しました。

次は、金属と木のハイブリッド構造のスパイク受けインシュレーターと、ローゼンクランツのエコスパイク(SK-42)とPOINT BASIEの音を比較します。前者はスパイク受けの木部と床材の木が同素材なのでまろやか過ぎて音のアタックや切れが甘くなりました。


栗の木の床材が大成功です

ローゼンクランツのSK-42とBASIEのコンビネーションはさすがです。更に栗のフローリング材との相性も抜群です。ペンライトを照らしスパイク受けBASIEの響きの方向性を示すAマークが背面になるように揃えると一気にリアルな音になるのが分かります。

この音を聴いてしまっては堪りません。素晴らしいパフォーマンスです。今日試みた諸々の処置の中で一番大きな変化であると共にコストフォーバリューが高いとの判断でお買い上げとなりました。

最初の見立て通り栗の木のフローリングが素晴らしく、それを活かす事を最大限に注力してクリニック及びセッティングをさせて頂きましたが、その甲斐あって本当に素晴らしいサウンド空間となりました。

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