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レビンソンとジェフでDynaudio C-2を鳴らす (動画)

上海オーディオクリニックの最後となるBさんですが、当初、JBL66000のクリニックを予定していたMさんの都合がつかなくなって、ピンチヒッターとして急遽組み込まれる事となりました。

そのBさんは、ディナウディオC2をリスニングポジションに近い位置まで引き寄せ、ビッグサイズ・ヘッドホンのような形のセッティングにて、マークレビンソンNo.26とジェフ・ローランド201で鳴らしています。このセッティングはさすがの私も初めて目にしました。

『音楽を聴くにあたって、座る場所まで制約されるのは望まない! 部屋に心地良く響く音楽を聴きたい! そうした思惑からこのような置き方になった!』と、その理由を教えてくれました。

訪問前からBさんはクリニックを受ける事に消極的だと伺っていたので、何の感想も述べない事にしようと決めていました。にも拘わらず、音を聴いた途端に、根っからの”ステレオ屋の性”が黙っている事を許してくれませんでした。

何故ならば、Bさんの話の内容には納得出来たものの、実際の音との間にかなりのギャップがあったからです。決して押し付けにならないように、次のような助言をさせて頂きました。


一発決め打ち! 2、3センチの移動で音が激変

「ほんの2、3センチ動かすだけで、貴方が理想とする鳴り方になるけど、試みてみませんか?」 

「マーキングさえしておけば、結果が悪くなったとしても、いつでも元に戻せる訳だから、やってみる価値はありますよ!」。

そして、「動かすのは、ご自分でなさったら如何でしょう?」 と持ち掛けると、何の抵抗も無く私の提案を受け入れてくれました。

私の指示に従って25mm後ろへBさんが動かすと、
美しい音楽が部屋中に一気に溢れ始めたのです。

Wさん、Sさん、Oさんは勿論の事、カメラを回していた作家のJ.Tさんまでもが異口同音に、『お〜!』 と驚きの声を発すると同時に拍手が起こりました。その音の激変には私自身まで驚いたのですから、その効果たるや凄まじいものです。

高画質で見るには、右下の歯車マークを押し720Pにして下さい


貪欲さ・逞しさが中国人の長所

『どうしてこんな事が実際に出来るのか?!』 
そんな質問が殺到したのですが、
今回は私自身が教えて欲しい位です???
ピンポイントに入ったのでしょう・・・

それは他でもない、Bさんが元々そのイメージを持っていたから、無意識下であったとしても、執念が引き出した音に違いありません。正に”念ずれば花開く”が目の前で実現したのです。

私は自分自身を落ち着かせつつ「辻褄合わせ式カイザーセッティング理論」を紙に書きながら説明し始めると、その理屈を知ろうとして全員がそのメモに向けて首を突っ込んで来たのです。皆さんの熱心さには驚かされます。自分にとって得になると思ったら中国人はどんどん行動します。


年齢表現の正確性がオーディオの基本

話の初めに、私は彼らにある質問を投げ掛けました。

「電話口に出た相手の人の年齢や性別を瞬時にイメージ出来ますね?」

「それは何を根拠に判断して決めているのでしょう?」

一同シーンとして答えられません。

「日本でもそうなんです」

「今と同じ質問を業界人に問いかけても、
誰一人として答えられる人がいないんです」

「余りにも単純過ぎる事や、
誰にでも解っているような事こそ研究していないんです」

「基本や基礎を疎かにしてはいけません!」

「だから良い音を作れないんです!」

「年齢表現はオーディオにとって一番大切な基本中の基本です!」 

「17歳の乙女の声が、40歳の熟女の声に聞こえては駄目なんです!」
「逆も勿論いけません」

「ローゼンクランツは常日頃から、
この点を一番大切にした音作りをしています」

皆さん分かっていても、正面切って問われると答えに窮します。議論した事もないし、深く掘り下げた事もないから、自信を持って答える事が出来ないのです。しかし、日々の人生の中で色々な年齢の人の声を聞いて、経験を積み重ねているから教わらなくても判る訳です。

「カエルにどうして泳げるのか?」 と尋ねる質問のようなものです。

この歳を重ねるという問題について説明してみたいと思います。年齢を測るには高い音のキーと、そのエネルギーで測っていると私は結論付けています。年を取る毎に、高い声が出なくなると共に声の力も弱くなります。

従って、音の正確さは高音が担っていると私は信じています。例えば木は年輪で何歳の木であるかが分かります。その木は春の訪れと共に新緑の葉や芽が姿を現し、花が咲き、実を付け、秋には紅葉し、冬に落葉します。こうして一年はカウントされるのです。


カイザーゲージに込められた音の法則性

カイザーゲージは小・中・大の三つの波から構成されていて、その内容は次のような考え方が基になっています。52.5ミリを1倍長とすると、中音は3倍長、低音は18倍長となります。

■小の波(52.5ミリ)=高音(緑・G)・・・年齢を表す正確さ

即ち緑(Green)という色が歳を数えるキーとなる色だと私は定義づけています。これは何人も介入する事の出来ない時の経過という「理」の部分であります。それを音に置き換えると、正確さが命の高音域を司るツイーターの役割となります。

■中の波(157.5ミリ)=中音(赤・R)・・・移ろい易い感情表現

次は年齢とは全く関係なく、不安定に移ろう気分・感情の世界(気)であります。血流の変化(赤=Red)は顔色に現れます。これは中音域を司るミッドレンジ・ユニットと密接な関係があります。カイザーゲージでは157.5ミリです。

■大の波(945ミリ)=低音(黒・B)・・・迫力と力の世界

沢山の色が重なるほど黒に近くなります。あらゆるすべての物を受け入れたのが迫力と力の世界(黒=Black)です。黒は低音域と関係し、色の中で一番安定感のある音を構築します。低・中・高の波長の足並みが始めて揃う長さが0.9kaiser(945mm)で、一番バランスの良い音です。


年齢も立場の違いも関係なく堂々と激論を交わす

彼らを通してもう一つ驚いたのは、年齢も立場の違いも関係なく堂々と大きな声で激論を交わすのです。日本ではご法度ですが、夢中になると相手を指差しながら話すのです。言葉が分らない私は、今度こそ喧嘩になったな! と思うのですが、そうではないのです。

そんなシーンが頻繁に起こるのだから驚きです。大阪のおばさんも、2勝8敗位できっと負けるでしょう。こういう場では大人しい日本人はひとたまりもありません。その日本人が場の主導権を握るには、相手から尊敬されるだけの技術や能力を身に付けるしかないと体得しました。

こうした貪欲さが中国人の長所だと思い知った次第です。日本人だと周りを気にして遠慮したり躊躇する場合が殆どです。今の両国の国力の勢いとその差を表している端的な例です。

そしてこの後、今回のオーディオクリニックに縁のあった上海のオーディオ仲間の人達で、私達二人の歓迎会と慰労会を開いてくれる事になっています。総勢11人が囲む和やかな食卓はいつまでもいつまでも話が尽きませんでした。

宴の最後に皆さんに一言挨拶させて頂きました。「今回の縁を取り持ってくれたZさんの尽力があったからです! と彼を称えると皆から拍手が起こりました。その彼とは意見が噛み合わず最初からぶつかりました。でもそんな事を乗り越えられたのもオーディオという共通の趣味があったからだと思います。

皆さんとこうしてお会い出来た事を嬉しく思うと同時に、このように歓待して下さった事に感謝申し上げます。涙腺が緩んだ私の視界は水の中にいるようでした。

一人ひとりと握手を交わし、再会を誓いました。

「最低15回は上海に来ますから!」

と得意の風呂敷を最後に広げてお開きとなりました。

再見!(ざいじぇん) 上海

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