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DIATONE/DS-3000とLUX/L580で組んだ初のコンポーネント

音も出ていない段階での相談

オーディオに関する電話相談に於いて、我が耳を疑ったのは今回が初めてかもしれません。

『アンプとスピーカーを中古で買ったのですが、実のところ繋ぎ方も分からないレベルなので、CDプレーヤーの購入の相談を含めてセッティングをお願い出来ませんか?』

このような信じられない言葉が、電話口から聞こえて来たのです。

「繋ぎ方も分からないで、アンプとスピーカーを買ったのですか??」

『はい、そうです!』

「随分無鉄砲な買い方をしたものですね!」

『若い頃からバイクに夢中だったので、ステレオを買うお金など全く無かった!』というのが理由のようですが、今ではその好きなバイクの商売をしているのだから幸せな事だと思います。


ある物を利用し、素晴らしい音楽を紡ぎ出す

今回はこうした特異なケースである事と千葉といえども深川からは十数キロと近いので、現場の状況を把握した後に改めて戦略を練り直し、再訪するつもりで伺いました。ところが、オーディオラックに打ってつけの作業台が目に留まったのと、予め準備していた物が使えると判った事で、とんとん拍子に物事が進んで行ったのです。

その作業台はスチール製のL字アングル脚とパイン材と思しき無垢板で出来ており、私の振動に対する考え方と相通ずる面があり、音にとって大変都合良く出来ているのです。

作業を進めながら色々と話を伺っていると、Sさんは人と会って話をする事が基本的に好きだとの事なので、この人だ! と決めたら、とことんその人と付き合いを深めて行くのが自分のスタイルだと聞かされました。このへんも私と似ています。

今回私にステレオの仕事を頼もうと思ったのも、ローゼンクランツのウェブを見て、私にステレオの調整を託してみたい! という気持ちになったと打ち明けてくれたのです。


頑張り屋のSさん

休みも殆どとらず、家に帰るのが夜中の12時〜1時だと聞かされた時には、若い頃の私とそっくりだと思いました。私がオーディオショップを始めた頃は、二十歳前後の若いお客さんの語らいの場となっていたからです。

Sさんは40歳を越えたばかりですが、バイク人口が激減している今のご時勢に、70台ほどのバイクを展示していると聞いて驚いてしまいました。他人事とは思えず、ステレオの話はそっちのけで、「もっと在庫を減らした方が良いですよ・・・!」と、自分の苦労話を交えながら経営のアドバイスをしている自分でした。

オーディオの設置を予定している部屋にはバイク関連の工具や趣味のミニチュアカーが一杯で、何から手を付けて良いのやら戸惑うほどでしたが、要らない物を別の部屋に片付けてくれたのでセッティングも捗ります。

ラック代わりとなる作業台にCDプレーヤーとアンプを載せ、スピーカーも凡そのところに配置するとイメージが徐々に固まって来ます。50キロを超えるスピーカーは流石に直置きする訳にはいきませんので、用意して来た丸型ウッドブロックで前2点による3点支持で受ける方法を採りました。


昔を思い出させてくれたDS-3000

20年以上前の事ですが、このDS-3000には苦い思い出があります。納品時の事です、ユニット側を手前にして二階の部屋に持って上がる際に胸に圧するようになり、金網がへしゃげると同時に中域のボロンドームが卵の殻の如く割れてしまったのです。当時の日本のメーカーは良心的で、修理代はとても安く不幸中の幸いで済んだ記憶があります。

SさんがDS-3000とLUXを選んだ理由は、若い頃に抱いた憧れが印象として残っていたのが理由のようです。用意して来たケーブル類はSP-RGB2とPIN-RG1、それに電源ケーブルのBlood Stream1です。壁コンセントもハベルのHBL-8300/BLに交換しました。

CDプレーヤーはマランツのSA-8003、これは昨日までカイザー東京試聴室でデモ用に使っていたモディファイ仕様です。結線を終え、とりあえず音を出してみましたが、最初にスピーカーから出て来た音はそれはそれは酷い音でした。

すぐには旨く鳴ってくれないだろうとは思っていましたが、キンキン、カンカンの音は耳のみならず目まで覆いたくなるような音で、Sさんも不安そうな顔をしていました。

ダイヤトーンに限った事ではありませんが、80年代の日本製品は馬鹿丁寧と思えるほどに作り込んでいました。スピーカーユニットを留めるキャップスクリューの頭には鳴き止めのゴムキャップを被せています。しっかりDIATONEのロゴが入っています。

その頃の主流は性能一辺倒で僅かな付帯音もマイナスと考え、徹底したSN重視に重きを置いていたのです。ゴムキャップは楽音の響きを殺ぐ事になり、各ユニットとの響きの調和を紡ぎ出す事が出来る、加速度組み立てという特殊な技術を開発した私に於いては無い方が良いのです。


渾身の加速度組み立て

かくなる上は徹底した”加速度組み立て”を施さない限り、この剛性の塊のようなスピーカーからふくよかな音を引き出す事は不可能です。全てのユニットのネジを外し、配置換えをした上で入魂のトルクコントロールを施します。


私のテクニックに一体何が起こっているのか!?

見る見る音が良くなって行くものだから、Sさんは驚きを隠せないようです。ネジを締める行為に於いては、バイク整備が専門のSさんだから、その可能性に閃きを覚えた事と思います。

次はインシュレーターのPB-COREをCDプレーヤーに使いました。音の輪郭が明瞭になると共に情報量が大幅にアップし、予想を遥かに超える音質改善に設計した自分自身でもちょっとビックリ!

この時代のラックスはアンプの底がいびつな形状をしている為に、インシュレーターの設置が難しいのでそのままにしました。最後にスピーカーとウッドブロックの間にBABY(E)Uを入れて完成です。

一気にスピーカーが化けました!

BABY(E)Uの事をお客さんから”小さな巨人!”とよく言われますが、インシュレーターのBABY(E)Uは本当に凄い能力を持っています。20年前にDS-3000を納めた時の事を思い出すと、ステレオ屋として10点位の仕事しか出来ていなかった自分が恥ずかしいです。

今では誰にも負けないステレオ屋になった!

そう胸を張れる自分で居られる事が何より幸せです

全てのお客様に感謝申し上げます

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