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アバンギャルド:トリオ+バスホーン4台

『オーディオクリニックをお願い出来ますか?』


「ハイ、勿論です! どのようなシステムでしょうか?」


『アバンギャルド・トリオのg1です』


「初期のモデルですね」


『ウーハーはバスホーンが4台です』


「それは、またすごい装置ですね・・・!」


一目惚れで買った、アバンギャルド・トリオ

『スピーカーは6〜7年前から持っていました』。『インターナショナルオーディオショウで聴いて、これだ!』と閃いたそうです。『それに見合う家を半年前に建てたのですが、最初の内はフラッターエコーに悩まされて大変でした』。

『今では、自分なりに満足しています』。

『その半面、本来の能力はこんなものではないだろうとの思いもあります』。

『さりとて、これ以上は為す術がないのも正直なところです』。

『診断共々その道のプロにお願いするしか無いと思って電話をしました』。


「有難う御座います、アバンギャルドのセッティング経験は、

トリオとデュオが2件ずつあります」。

「しかし、さすがにバスホーンタイプは初めてなので、

私自身も勉強になりますのでこちらこそ宜しくお願いします」。


大掛かりなシステムなので、何をどうするのかは伺ってみないと見えて来ません。従って、現場の環境とシステム達に尋ねるのが一番という結論に達し、事前にあれこれ考えたり準備するのは止めにしました。


最初は不快な反射音に悩まされた

閑静な住宅地の一角にあるT.Tさんのオーディオルームは、30畳程の広さで窓は一切ありません。外部からのノイズは遮断され、異様な程の高S/Nを得ています。床はコンクリートに合板パネルの直貼りで強固です。見事に水平が出ています。

壁面の7割程が厚手のグラスウールで埋め尽くされ、それが静けさのポイントだと気づきました。天井には発泡スチロール製のディフューザー・スカイラインと、吸音用に1平米程の帆布と思しき物が市松模様に似たパターンで取り付けられています。

スカイラインのお陰で天井と床との間に発生していた不快な反射音が減り、やっと音の形が見えたそうです。そのスカイラインが2個で69,000円と知ってびっくり! 30個は裕にあるので100万超えといったところでしょうか・・・。


オリジナルの拡散・減衰パネルが全てを救う

耳に続いて私の目に最初に留まったのが、QRDを基にして作ったと思われる高さ2.5mはあるであろう、特注品のジャンボな拡散・減衰パネルです。頭上一杯に手を伸ばしてやっと届こうかという所と、腰あたりの位置に固定された2本のバーに引っ掛ける方式で、設置場所が自在に変えられます。


これには、”シメタ!” と思いました。

気流エネルギーの加減速を自在に操れれば、音楽の抑揚表現が豊かになるからです。勝負は時の運とも言われますが、力強い援軍を得ると共に天をも味方に付けた思いです。3年ほど前に田中調律ピアノさんで見せて頂いた、年輪が生き続けている鍵盤のハンマーを何故か思い出しました。それもクッキリと年輪が目に浮かぶ形で・・・。

カイザーサウンドでは、あたかも血が繋がっているかのように、物性のエネルギーを巧みに引き出してやる技術を”戸籍簿管理”あるいは”加速度組立”と呼んでいます。その技術の生かし時が来たようです。

全ては今日の為に腕を磨いて来た! そんな気になりました。何より嬉しいのは、これほどの場面で通常よりも平常心で居られる事です。この歳になっても地味に成長しているのでしょう・・・。何が起こっても焦らないように、ニュートラルなバランス感覚を常に持っていたいものです。

この時点で、T.T邸のクリニックに確信を得ました。クリニックの音作りの核となる部分が決定事項となったのです。今日のようなこんな閃きが得られると、セッティング・プログラムも楽に組めます。

この部屋に於いては、本家のQRDよりも自前のジャンボ拡散・減衰パネルの方が断然優れています! 私の診断結果をT.Tさんにそう報告させて頂きました。建築デザイナーは全体のバランスを見ながらデザインするので、その部屋にジャストフィットして当然なのです。

しかし、音響専門メーカーが作った製品に比べると間違いなく劣るだろう・・・? 卑下する門外意識がどこかに残ります。専門家の私が太鼓判を押すと、一気に愛おしく思えてくるから不思議です。

気持ちが込められて誕生したモノと既成品の違いです。価値の本質と機能美を見抜く力は音の設計力にもダイレクトに影響を与えます。何をどう見・観・覧・看・視・診るかであります。見た目のバランスに優れた物は音にも間違いなく良いのです。機能美こそ、デザインと私は考えます。


アバンギャルド・トリオは上出来なまとまり

現在のシステムの説明を受けつつ、情報収集をひと通り終えたところで、トリオの音を拝聴させて頂きます。これだけ大掛かりなスピーカーなのに、聴くソフトの大半が女性ボーカルと聞かされびっくりしました。

わざわざ、一番難しい方法を選ばなくても・・・。

私の頭の中はそう呟くのでした。


■システム概要

CDトランスポート :   エソテリック P-01
クロック : エソテリック G-01
DAコンバーター : エソテリック D-01
プリアンプ : ハルクロ dm10
パワーアンプ : ハルクロ dm68
スピーカー : アバンギャルド TRIO + BASS HORNX4
ケーブル類 : エソテリック、PAD、他

オーディオの頂点に君臨する機器達の奏でるサウンドには、明らかに風格があります。その特徴はゴージャスさに代表されます。しかし、それに圧倒される風もなく、身を置いている世界の空気が同じとでも言いましょうか、T.T氏の音には服の着こなしの上手さに似たものを感じました。

とにかく、オーディオ界の護送船団方式が進まんとする道には限界が見えています。それはエレクトロニクス偏重スタンスを意味し、その枠内で点数を付けると90点以上の出来だと思います。しかし、その同一線上の価値観で良しとするならば、その時点で私の出番はありません。

T.Tシステムの問題を敢えて指摘すると、音の頭の衝撃(アタック)の変換率が70%なのでスリル感に乏しいのです。叩いた音が強く突いた感じに近いのです。これは、話の流れからするとよく理解出来ます。反射音に悩まされた事からスタートしているので、去勢する方向への処置が施されるので当然そうなります。

アタックの強さを保持しつつ、不快なキツイ音や反射音の無いバランスの優れた音が手に入れられるなら苦労はしません。並み居るプロでさえそれは狙って出来るものではないのですから・・・。それを手に入れるには「肉を切らせて骨を断つ」勇気が要ります。数多くの失敗の先にしか存在し得ない音なのです。

私が過去にクリニックで訪問した中で、それが達成出来ていたところは無いに等しいと言わざるを得ません。だからその部分は大目に見なければ、ただ一人としてカイザースクールへの合格者がいなくなりますから・・・。


モノが出す音ではなく、アーティストの芸術表現や感動が欲しい!

「では、この先何を望まれますか?」。


『一言で言うと、音楽に酔えないのです!』。

『ごく希にはその兆しを覚えますが、すぐにアレっと思ってしまいます』。


「実にシンプルで、的を得た言葉ですね!」。

「それは、芸術的感動の不足に尽きます!」。

私が求めて止まないのも正にその部分です。その希求が私の心根であります。音楽は調和が命です。あらゆる音楽表現に於ける調和を図るには、指揮者と同じような遍く配慮が要求されます。その調和の行き着く先、即ちオーディオの究極の姿は一つの理想という極に絞られて行くはずです。


プロフェッショナルな音の手品師

苦手という言葉とは無縁の、どんな表現をもこなしてしまうプロフェッショナルな音の手品師への道であります。言葉は良くありませんが、”嘘つきの天才”という事になります。これが私の目指すオーディオ芸術のデスティネイションであります。 

その達成のみの為に、敢えて常識とされて来たルートとは反対の道ばかりを歩み、何故そうなのか? を、自分の耳で検証し続けて来ました。それは危険と隣り合わせの挫折や恥の連続でしたが、お陰で”オーディオの何たるか”が徐々に解明出来つつあるところです。

私はオーディオショップからスタートした関係上、数え切れない程のスピーカーに囲まれて生活して来たので、物欲面での満足と完成度に於ける不満の両方を体験した特異なケースかもしれません。

「そんな立ち位置から観た私独自の採点だと25点となり、残された伸びしろの方が未だまだ多い事になります」。楽しみがそれだけ残っているのです。


90点と25点、この意識の違いはどこから来るものなのでしょう・・・。


「上層への上昇は調和と破壊の繰り返しによってのみ起こり得るものです」。

「それも層が高くなるに従って勢いが必要になります」

「積み上げて来た今の調和を壊す勇気がおありでしょうか?」


『はい! 平気です!』

『お任せしますので、好きにやって下さい!』


ここまで太っ腹で託して頂けるのは、今までで片手にも届きません。

後で思うに、厳しい言葉を口にしてしまいました。しかしながら、真剣勝負の中で出た言葉ですから、それ以上でもそれ以下でもありません。胸の中にある真の言葉しか出て来ないのです。

だけど、向こう見ずに見える私にも、読みというものがあります。「この人には真意が伝わる!」 と思えればこそ、発し得た言葉です。言い換えると、T.Tさんの格・徳・信などが引き出した言葉なのかもしれません。それは又、私のアバンギャルド・トリオへの挑戦であり、T.Tさんへの宣戦布告であったように思います。


オーディオ・アスリートを自覚した瞬間

何故ならば、T.Tさんは芸術家です。そんな人を前に口にするのはおこがましいですが、私は自分の事を”オーディオ・アスリート”だと思っているからです。アーティストではありません。オーディオ・アスリートです。

では何故「オーオディオ・アスリート」なる新語を口にしたのか?

私の音作りの根幹はスポーツ、特に野球から来ているのです。ボールをバットの芯でインパクトした瞬間の音、芯を外した時の鈍い音や手に跳ね返って来る振動の走り方、手元で伸びる回転の良い球筋と、それを受けた時の手に感じる衝撃やパーンと響く乾いたミットの皮の音・・・。

それらの全てが音楽の緩急や強弱、あるいは抑揚等とダブらせ、エネルギーとして等価交換出来る特殊な能力を育んでくれたのです。これは私の中にある、私だけの音楽とのコミュニケーション術なのだと思います。だから人に伝えることも教えることも出来ないのです。俳句と野球の故郷松山ならではです。

何をとっても、音楽を貪るように聴いた青春と重なります。楽しかった事も辛かった事も音楽が全部受け止めてくれました。かけがえのない人生です。思い起こせば今の頑張りが効くのも、不屈の精神が備わったのも両者のお陰です。

小さい頃から相撲も大好きでした。栃若全盛期です。組み合った体から相手がどう出て来るかの間合いも、腰や腕を通して伝わる感覚から相手の動きを読んだり見切る能力なども、インシュレーターやボードの振動の受けとかいなしにとても役立つのです。

元ネタがこんなのですから、私と話しをしてもエレクトロニクス畑の人達にとっては、宇宙人と話しているようでさっぱり分からないと思います。だけど私にとっては正確無比に音楽を紡ぎ出せるのですから、こればかりは説明がつかないのです。 


音を計る物差し”カイザーゲージ”を発表

そんな独特の音楽感受脳が、カイザーゲージ(音を測る物差し)の発表に繋がったのだと思います。音楽の良し悪しは長さと密接な関係があるのは誰にも分かっていた事です。その良し悪しに、長さの周期性がある事を発表したのは世界で初めてだと思います。それも具体的な数字を示しました。

更にはその中でも、音の正確性に関係する”理の波”と、人間の移ろい易い感情と関係する”気の波”の二つを発見したのが大きい出来事です。この二本柱がカイザーセッティングの幹となっています。この長さの周期を360°の位相と関連付けると計算通りに音が作れるのです。

カイザーゲージに込められた音の法則性

・理が52.5ミリ周期

・気が157.5ミリ周期


エレクトロニクス偏重の弊害

他の業種は分かりませんが、エレクトロニクスを学びエレクトロニクス畑の先輩達から教わる仕事は、特に大企業では顧客目線よりも企業内部の顔色を伺うモノ作りに陥る懸念があります。相撲界の八百長、柔道界のパワーハラスメント問題も根底に潜んでいるモノは同じで、目に見えない束縛や圧力を感じてしまう空気だろうと思います。

日本エレクトロニクス株式会社が瀕死の状態に陥っているのがその証明です。80年代まではその日本の和が長所として出ましたが、90年代からは世界の潮の流れが変わりそれが裏目に出始めたのです。

護送船団方式とは、皆で一緒に進めば怖くないので、オーディオセッティング技術に目を向けない、モノの性能や能力に過度に頼る方法を意味しています。横並び的思考からは革新はありません。革新あってこそ保守があるというのが私の考えです。

個々の機器の単発的グレードアップをベースとした音の提案方法ではノーという答えが明確に出ようとしています。金額的多寡もさることながら、本システムに於いては終着駅に既に到着しているのではないでしょうか。若しそうでないとしたら、次は全く違った音の駅に案内するのでしょうか?!

不足しているのはハンドリング能力です。


いざ! クリニックの開始です!

特別誂えの拡散・減衰パネルを、これ以降はジャンボ・ディフューザーと呼ぶ事にしましょう。さて、それをどう使いこなすかです! そのジャンボ・ディフューザーの効果を最大限に活かして使うのに、私だけが分かるのではなく、T.Tさんご本人にもその効果が認識出来なければ意味ありません。

「その為には、それ以外のルームチューニング関係の物を、この部屋から一旦出してから行いたいのですが如何でしょう?」。


『分かりました、それでは運び出しましょう』


「スッキリした所で、ジャンボ・ディフューザーだけの反響音を確認して頂けますか?」


『スピーカーの外側で若干響くぐらいです』


片側あたり6枚のジャンボ・ディフューザーがありますが、先ず右側から調整したいと思います。前から2/3辺りのところで響きの良い場所を最初に決めます。「その前にいつでも元に戻せるように、テープでマーキングしておいて頂けますか?」。

T.Tさんにはその場での説明は省きましたが、ジャンボ・ディフューザーの位置調整は、オクターブ和音を元にした考えに則って行うものです。従ってピアノの調律にも通ずるところがあります。2/3あたりに目をつけたのは”ソ”のイメージを作りたかったのです。

これはピタゴラスの音階に由来します。

次は最後尾に位置するジャンボ・ディフューザーをオクターブ高い”ド”に準えて配置します。このように長さと間隔が音楽的響きの魅力を備えた位置関係にして行きます。これは弦楽器のネック部に付いてあるフレットを思い起こして頂くと分り易いでしょう。


”機器の相性”と同時に”音楽の理”を手にして欲しい

カイザーサウンドのオーディオセッテイング理論は、オーディオ機器の相性は問いません。とは言え、決して軽視しているのではありません。相性は良いに決まっています。しかしながら、それが金科玉条のようになって、もっと大切な”理”の部分を疎かにしてしまっては、砂上の楼閣のように頂上を目前にして崩れるのは間違いありません。

基本の理をしっかり構築した上で、オーディオのグレードアップに挑んで欲しいと思います。

オーディオ技術も日に日に進化を遂げています。何十年前の教えを頼りにオーディオと向き合っていたのでは時代に取り残されてしまいます。”理”となるべきはずの骨格が歪んだような環境では、如何に優秀な機器と言えども実力を発揮する機会すら与えられません。

今回のケースを例に取ってみると、ジャンボ・ディフューザーの位置関係が正に音階や調律に関係するところです。先ほどフレットの話をしましたが、息を吹き込むトランペットやフルート等の気道の長さの調整によって音を出す楽器と、ジャンボ・ディフューザーの位置関係とはこれまた同じ理屈であります。

ジャンボ・ディフューザーに息を吹き掛けるのはスピーカーですが、遍く方向に空気を押す故、特定づけた音を抽出ヒアリング出来ないだけで、加速度配置後の魅力的な音の違いは誰にでも分かります。私の場合はそこの部分のベクトル分解力を訓練の中で身に付けたので、”どうすればどのような音になる”というのが分かるようになったのです。

しかし、同じ現場に居合わせなければ、水と油の階層が違うように理解の往来が効かないので、クリニックの場での処置後の音の凄さは解って貰えません。いくら私が文章で訴えようとしても不可能なのですが、このウェブをご覧の方には、「そうなのかなぁ・・・?」程度の関心を持って頂けたら充分です。


T.Tさんと私の音の摺り合わせの開始

右側のジャンボ・ディフューザーの適正配置が終わったところで、どれほどの効果があるのか、左右の音の違いをT.Tさんに聴き分けて貰おうと思います。これは非常に高度な聴く技術を要します。スピーカーの正面に頭を置き、右に左に交互に頭を移動して左右の音の違いを聴き分けるのです。

右はピントがピタッと合って音色も美しく、各々の楽器が単独としても浮かび上がったように聞こえます。未処置のままの左の音はというと、輪郭がぼやけて音に滲みが有った事に気づきます。T.Tさんもこの違いはしっかりと分かったようです。

この聴く技術を身に付けて貰うと、段々高度になって行くこの先の音の向上度合いについてのコミュニケーションが取り易くなります。この一発目の確認作業が上手く行ったので早いテンポで事が進められそうです。


左右のジャンボ・ディフューザーの和音設置が揃うとどうなるか?

同じ要領で左のジャンボパネルも適正配置を行います。コンベックスで測って左右を同じにするような事はしません。同じように出来ているようでも何一つ同じ物はないので、その違いを考慮に入れた中でピンポイントに追い込む大変高度な技術であります。左右を同じにするようでは未だまだ修行が足りないと言えます。

左右共にジャンボ・ディフューザーの適正配置が終わりました。これで初めて聴くに値するセッティングの第一楽章が始まった訳です。先ほどと同じ曲をT.Tさんに聴いて頂きましょう。

『理由は分かりませんが、確実に良くなっています』

『ピタッと揃った感じがするのと、音の輪郭に滲みが無くなりました』


ジャンボ・ディフューザーを使った更に高度な加速度設置

パネルはどれも同じ寸法で作られていますが、それに限らずどんな物でも僅かには違いがあります。それを見切り、どのパネルをどこに配置してやるのが、一番魅力的な音を奏でるか! それが”加速度設置”のテーマです。

先ずは全体を見渡し6枚の中のどれを主軸に配し、どこへ配置するかを決めます。次に大事なのは最後に抜けて行く6番目のポジションです。この二つが決まれば後は流れに吸い寄せられるように決まって行きます。そのイメージ配置図が次のスケッチです。

 
左の壁面   右の壁面

簡単と思うかもしれませんが、6枚のパネルの配置パターンの組合せは膨大な数に上ります。これを逐一聴いて確認していたら何ヶ月も掛かってしまいます。ちなみに1番を先頭にした組合せだけでも114通りになり、全てを合わせると700近くにもなります。


瞬間と永遠は繋がる同一なもの

理屈から行くと、最高得点から最低までそれだけの種類の音が存在する事になります。それは写真家が機関銃の如くシャッターを切るのも瞬間の美を求めるからですが、瞬間の美は永遠の美でもあります。

私の行う加速度組立なるものはこの行為と全く同じで、永遠なる時の流れを手に入れるが為の瞬間なのです。それは空気の疎密波(縦波)の0⇔1の切り替わるタイミングの精度出しそのものなのです。

瞬間(理)を逃さないシャッタータイミングも、何千分の一、何万分の一の電気、空気のスイッチングも、多様な声紋を正確に再現するには答えは自ずとそこに行き着くしかありません。極めようとすると、プロの世界はどこまでも奥が深いのです。

私のセッティングスタンスも正にそうで、同じ物でも、何をどう配置し、どの順番に、どの方向に、どのように結線するか? とにかく使いこなしには滅法うるさいのです。それはその音の違いがどれほど大きいかを怖いほど知っているからです。

適正な音階バランスを構築した一回目の和音設置時と、更に高度な加速度設置を施した音の差は、音楽の感情移入が更に深いところまで分かるようになります。ビブラートや抑揚が細やかに再現されるのでその世界に吸い込まれそうになります。


妥協を許した時がカイザーサウンドの死ぬ時

カイザーサウンドの最大の力は、現場で必要と思ったものは必ず商品化するところにあります。ありとあらゆるジャンルの製品があるのはその為です。親子二人でやっている零細企業にしては、信じ難い数の製品アイテムを持っています。

これだけのアイテムを持っていると、ハッキリ言って利益は全て商品に化けてしまいます。商品化したいモノが頭の中に一杯あるので、儲けは全てそちらに消えて行ってしまいます。

腕一本で稼ぎ、その貴重なお金で誕生させた商品はどれも思い入れがあり、我が子のように可愛いです。勿論性能も超一級です。ローゼンクランツ製品は外れがないと言われています。更に増えれば増えるほど音楽表現が高くなとも言われています。創業以来音楽の理に則った音作りを貫いているので一切のぶれがありません。

これを作れば儲かるという動機で開発したものはありません。必要と判断したから誕生した物ばかりです。そこがカイザーサウンドのカイザーたる所以です。妥協を許した時はカイザーサウンドの死ぬ時と思っています。


何を拠り所にして購入意思決定するのか?

ミュージシャンが楽器を購入する時は、必ず手にとって音を確認してから買います。それは同じ型式のモノでも大いに音が違う事を知っているからです。だから必ず自分の耳で確認し納得して現品を購入します。

方やオーディオ製品の買い方はというと、評論家のレビューや賞に選定された製品を中心に購入します。要するに他人任せが多いのです。オーディオ機器と楽器では、こうまで売り方買い方に違いがあるのです。

しかしローゼンクランツユーザーは違います。自分の感性の価値観に照らし合わせて購入されます。自分の主権を持っている方達です。だから売上の9割以上がリピーターとなります。これは脅威の数字です。


スピーカーの位置調整(仮セッティング)

大型バスホーン1台で150キロ超なので動かしたくても簡単には動きません。本当は3.7センチ前に出したかったのですが、人手を得た上で次回にトライします。従って、部屋とスピーカーの関係は無視してバスホーンとトリオの位置関係のみを合わせる事とします。これだけでもかなりの改善は見込めます。

トリオを21ミリ後ろに下げます。この21ミリという数字が位相的に、どれぐらいずれているかという説明をこれからしたいと思います。カイザーゲージの短い波長は52.5ミリです。その半分の26.25ミリが180°の逆相になります。

21を26.25で割ると0.8になります。180°の0.8は144°となるので殆ど逆相に近い位置になります。トリオ部が144°先走りしているとも言えますし、バスホーンが216°遅れているとも言えます。

これが私の耳に届いた判断であります。従って、逆相に近い状態から位相が揃った時の音をこれからT.Tさんに聴いて頂く事になります。さて、どのような音になるのでしょう。

今日テストCDに頻繁に使っているのは、石川さゆりです。このディスクはCDRに1枚1枚丁寧に焼いた高音質と評判の高いディスクです。私はT.Tさんの真後ろにいます。イントロが鳴った瞬間に私の方に振り向いて、『見事に良くなりました!』と合図を送ってくれました。私の睨みが当たった瞬間です。次回にバスホーンを動かした時がカイザーサウンド(音の帝王)になると読んでいます。


ハルクロ・パワーアンプの位置調整

バスホーンとトリオの間にハルクロのパワーアンプが置いてあるのですが、プリアンプからパワーアンプへ繋ぐXLRケーブルが短い関係で、僅かに両者の音を遮る形で邪魔をしています。許せるギリギリの調整をしても数センチほどしか動かせないのですが、その中で絶妙の位置と角度を探し出します。

 

それだけでも大きく変わるはずです。これもかなり効きました。更に両者の繋がりが良くなりスピーカーの音ではなく、各楽器の音色をイメージするようになりました。この差は大きいです。

 
音を遮っている処置前   折り合いの良い処置後

カイザーマジック

今のところは打つ手打つ手が決まっています。私のやり方は音を聴きながら調整する事はありません。聴いたデーターを元にイメージを確立した上で、決め打ちするところが他の誰とも違う点です。

人はこれを”カイザーマジック”と呼びます。

これはそれまでに聴いた音のデーターマップを、脳内方眼紙に正確にドットマーキングしているからです。これは見える形での試みですが、それまでに氷山の水面下にはどれだけ多くの失敗の残骸が眠っているかは誰も知る由もありません。

要するに99の失敗を隠して、残りの正解の1つをクリニック時に取り出して使っているだけです。昔の人からよく聞かされた言葉に「苦労は買ってでもしろ!」というのがあります。それを実践するのみです。そう言いつつも、プロならば苦しんでいる無様な姿は見せるべきでないと思います。


オーディオの「理」は、音の良い気流にあり

さて、先ほどまで行ったクリニックの殆どは気流のコントロールです。スピーカーがアクティブに動かす気流と、部屋やルームチューニング材によってパッシブ的に反射変化する二つの気流を主に調整しました。

オーディオの三要素は「電気」と「振動」と「気流」です。

その中でも、最後に耳に音楽を届けてくれるのが「気流」です。

音を良くしようと散々試みても、最後はどんな気流のパターンが耳に届くかに掛かっています。それが音の良し悪しに直結します。その為に音楽好きはオーディオ機器やグッズにあれこれと拘るのです。

空気には直接手が付けられるので、音の革命を起こせる可能性があります。しかし、オーディオの最後の勝負を気流が握っていると結論付けている人は皆無だと思います。振動はその一歩手前であり、電気は二歩手前になります。そう確定付けた場合、今までのオーディオ界は電気畑が一人で頑張り過ぎたと言えます。

私は振動畑の人間ですが、この最近は電気のノイズ面を徹底的に研究しました。そして今、気流問題に一番力を注いでいるところです。カイザーの格言として口を開けるようになると、ゴール間近を感じさせます。

これからのオーディオ界を牽引するには、

気流>振動>電気の意識配分で取り組むべきです。

音の良い気流の獲得を目的に、電気で振動を発生させる。

これぞ、オーディオの「理」であります。



世界のオーディオ設計者が驚く

製品を近々発表します。

諦めていた音が目の前に出現します!

その名は、Stream Reviver!

音楽の命の流れを蘇らせる者です。

次回クリニック時には、試作段階の物を公開出来る予定です。


電源ケーブルの適材適所の決定付け及び配置転換

次回は電源タップのナイアガラ・ハイブリッドを中心とした電源周りの提案と、アバンギャルド・トリオの脚にジャイアント・スパイクとジャイアント・ベースを装着して、電気・振動両面の基礎固め、足場固めを行う予定です。

これから次回に繋がるその予行演習をしておきたいと思います。各機器に接続してある電源ケーブルの適材適所を見切り、どのケーブルをどの機器に接続するのか? 又、どのコンセントからエネルギーを貰うのか? をゼロから見直します。

加速度配線と呼ぶ技術です。

先ずは全ての機器から外した電源ケーブルを床に並べます。ペアーとなっている物には同じケーブルを使う事を前提とします。届く届かないの問題も考慮にしなければなりません。ここまでは、誰が考えても選択の余地のない部分になります。

その先が腕による差の部分となります。それぞれの能力や特徴を見越して全体の足並みが揃うように調和を取ってやらなければなりません。従ってここは経験がモノを言うところです。導体の構造や防振、シールド対策、あるいは持った重さの手応え等あらゆる情報を駆使して適材適所を決めます。

T.Tさんに1本ずつ手渡し、私の指定した機器に繋いで貰います。それが終わると、アナログ機器とデジタル機器の回路を分離したアイソレーション電源や、タップのどこから電気の供給を受けるかをイメージします。

 

結線を終えた状態でシステム全体を見てみますと、活き活きとした感じを受けます。そしてその周りの空気は先程とは違って、システム全体に自信が漲って来た風に見えるから不思議です。

力率に無駄がなくなり、色々な音の変わり身の速さが際立ち、俊敏な動きになった印象を持ちます。特に引き足の速さが顕著です。各機器の連携プレーが良くなったというのがぴったりな表現です。


3回の訪問で仕上げる事になりました

とにかく大掛かりなシステムなので、お伺いしてみないことには、何が出来るのか? どこまでの可能性を持っているのか? どんな希望をもっておられるのか? を中心に第一回目は小手調べという形でクリニックしました。

打ち合わせの結果、オーディオの事はよく分からないのでとにかく良い音、感動する音にして欲しい! その結果判断したいとの事でしたので、初回を含めて3回で仕上げるという話で落ち着きました。

2回目までに必要な物を準備するのに3週間の日にちを貰い、本格的なカイザーサウンドの音作りに入りたいと思います。


2度目の訪問はこちら

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