トップ情報音のカラクリ第19回 機器と共に部屋の寸法比による美しい響きが大切

第19回 機器と共に部屋の寸法比による美しい響きが大切

 名録音盤カンターテ・ドミノ

 オーディマニアの誰もが持っているディスクの一つに「カンターテ・ドミノ」というのがあります。ご存じでない方もおられるかと思いますので簡単に紹介させて頂きます。スウェーデンのストックホルムにある個性的なレーベル、そのプロピリウスは教会音楽を中心とした録音で有名です。中でも世界中のオーディオファイルのハートを掴んで離さないのが、今回私が話題に取り上げるアルバム「カンターテ・ドミノ」です。

 ストックホルムのオスカル教会で'76に録られた時の機材は至ってシンプルです。20〜30年前ですと、どこででも見かけたルボックスの民生用オープンリールテープレコーダーA77とパールTC4マイクロフォン2本のみでミキサーなしで録った物です。

 '70年代当時は生録会というのが頻繁にあって、20キロぐらいあるオープンリールを背中に担いで歩く光景をよく見かけたものです。ですから、その頃は巷で生録の良い音をよく耳にしました。テープの音の凄さはレコードの比ではなかったですね。

 カンターテ・ドミノのディスクの不思議なところは、どんなシステムで聴いても良い音がする事です。それは魔法にかけられたといってもよいほどです。この最近あるお客さん宅で聴く機会があったのですが、思わずウットリと聞き惚れてしまいました。その事について私は息子に何気なく話しかけました。

 「よっぽどマイクロフォンのセッティングが良かったんだろうネェ!」。

 少し間をおいて、彼の口から出てきた言葉は私にとっては冷酷なものでした。

 『・・・・・違うね!、どこに立てても良かったんだよ!』。

 「ウム・・・?!」。

 私のこめかみにナチスマークに似たのが出来たのが分かりました。

 『いつも親父自身が人にそう言っているじゃない、部屋のどこで聴いても同じように良い音がしなければ駄目だって』。

 『スピーカーをベストポジションに配置するというのは、丁度それの逆バージョンなのよ』。

 部屋の寸法比が良くない為に起こる問題点

 そうなんです、良い音がしないのは部屋の寸法比や建築に使われている材質が悪いのが大きな原因で、その辻褄を合わせる為に「カイザーゲージ」を使ったセッティングによって響きの良いポイントを探し当てているわけです。そのセッティングの説明については、過去に何度か触れておりますのでここでは省かせて頂きます。

 美しい響きのする部屋でしたら、スピーカーの置き場所はほとんど選ばないはずです。機材側にばかり良い音を求めようとするのではなく、部屋にももっと目を向けるべきです。冷静に分析するなら機器の性能20に対して、部屋の影響が80くらいと思って頂いてもよいでしょう。カンターテ・ドミノのディスクがどうして音が良いのかの結論としては、そのホールのどの場所でも良い音がしていたから、どこで聴いても、どこにマイクを立てても、良い音が聞けたし、良い音が録れたはずだというのです。

 また、このディスクの録音機材はどう多めに見ても100万円でしっかりお釣りがくるでしょう。大手のレコード会社に収まっているようなミキサーは億の単位のものですが、それを通したからといって良い音の保障がある訳ではありません。そうしてみると「良い音になる条件とは?」と考えてみたくなりますよね。
 
 美味い牛の肉はどの部分を食べても美味い

 ちょっと横道にそれますが、これに通じる面白い話をふと思い出しました。栃木県の大田原で那須牛のステーキを食べた時の話です。そこのご主人曰く、『フィレとかロースとか牛のどの部位の肉が美味いのではなく、美味い牛はどこを食べても美味しいんだ』というのです。この名言にはさすがの私も120%納得しました。目の前の鉄板で焼いてくれながら、美味しい牛になる為の育て方など聞かせてくれるその話が酒の肴ならず肉の肴になるんです。

 牛を育て、精肉店を営み、ステーキハウスでは自ら焼いて食べさせてくれる。これほど説得力のある話はちょっとありません。傍らにいた奥さんがボソッと一言、『あの人の恋人は牛なんですよ、とにかくお肉の上手な買い方はね、美味しいその牛の安い部分を買う事なのよ』。栃木なまりのその言葉に釣られて、帰りがけには沢山のお土産を買っていました。

 機器による測定と人間の感性による判断

 リスニングポジションにマイクロフォンを立てて、スペクトラムアナライザーで低音から高音までの周波数特性をバーグラフで観察するという方法が、一番科学的で理に適っていて説得力があると皆さん思いがちなのではないでしょうか。大いに参考にはなるでしょうけど、決定的な判断の材料にはならないと私は思います。

 ちなみに3箇所でデーターを録ったとしましょう。ほんの僅かずつ違うそのグラフから何を読み取り何をどう処置すれば良いのでしょう。美しい響きや倍音を感じ取ることが出来るのでしょうか?。CDプレーヤーとアンプ間の信号ケーブルを交換する事を思いつくのでしょうか?。あるいはパワーアンプの下にインシュレーターを入れることを思いつくでしょうか?。

 この位置で録ったグラフがこうなったから、これで申し分ないと結論付けることが出来るでしょうか?。機械は音楽の感情やテンポなど複合的なものを同時に計る事は出来ません。こうした事は経験と感覚と勘がものを言います。やはり最後の最後は人の感性に頼るしかありません。  

 家を建てる機会には是非ともカイザー寸法を導入して欲しいのです。響きの美しい部屋を手に入れたなら、手持ちのオーディオシステムが生まれ変わったように見事な音に変身するはずです。これから音の良い長さとしての考え方の基本は「カイザーゲージ」が元になって行くのは間違いないはずです。オーディオ業界だけではなく、これからは建築業界にも浸透させて行きたいと思っています。分からない事がありましたらどしどし質問して下さい。

 部屋の音が良くないなら腕でカバー

 良い音を手に入れるには機材の性能よりも建物や部屋の方がむしろ重要だという事が分かっても、実際に家を建てるとなれば最低でも何千万円ですから簡単な話ではありません。その為に研究に研究を重ねた結果完成させたのが、部屋の特性に合わせた「カイザーウェーブセッティング」なのです。

 部屋が良くないなら腕でカバー、この事が一番当てはまるのが楽器と演奏者の関係です。安物の楽器でも腕の良い演奏家が弾くと見事な音になりますが、いくら音の良い楽器を手にしても、演奏技術が下手だとまったく音楽にはなりません。私などは楽器においてはからっきし駄目ですが、これがステレオとなると私の腕に掛かれば別物のように良い音になるから不思議です。

 最小のコストで最大の音の効果を手に入れる

 建物を楽器のボディーに例えるならば、オーディオ機器は弦と思って頂ければ話は分かりやすいと思います。いうなれば調律の狂った楽器で演奏したのでは美しい響きがしないのと同様に、ステレオにもそれと同じように良い音になる為の正しいセッティングが必要です。「カイザーウェーブセッティング」はオーディオシステムの調律と解釈して頂くと良いかもしれません。

 その理屈はスピーカーの設置場所を変えることによって部屋の振動の縦横比が変化します。ひとつだけ変わらないのは床から天井までの高さです。この三者の和音の美しい場所を探り当てる作業なのです。ですから根気よくトライして頂きさえすれば、わずか3,500円の「カイザーゲージ」を購入するだけで魅力ある音を手に出来る可能性が開けるのです。

 すべては貴方の耳次第です。 

A&Vvillage 3月号 第72号に掲載されています。

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