トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅ソナースファベールのクレモナでオペラ三昧

ソナースファベールのクレモナでオペラ三昧



 第二の人生は大自然に囲まれて


 中央道の小淵沢インターで下り、自然が一杯の白州というところへ参りました。この地は八ヶ岳や中央アルプスの裾野が広がる雄大な景色が本当に素晴らしいです。また、水がとても美味しいので、近くには地場のワイン工房やサントリーの工場がありました。

 M.Uさんは都会のサラリーマン生活を卒業され、充実した第二の人生を過ごす為にこの地を選んだそうです。誰もが憧れるような人生ですね。ナビにも出ていない所だからという理由でインターチェンジまで迎えに来て下さいました。案内されるまま車の後ろをついて行きましたが、完全に別荘地として開拓されたようなシチュエーションのところにお住まいがありました。


 相反する二つの音をどうまとめるか?


 その中でも一番奥地のようで、建物は見たところ築後20年は経っているでしょう。その一部を書斎兼オーディオルームとして増築されたとのこと。無垢木をふんだんに使い、天井も張らず梁が剥き出しになっております。これが音にとって相当効いていそうです。

 スピーカーやアンプ類は振動に対して苦労された様子が随所に見受けられ、見た目に不安定な感じのものが結構あります。私の目から入った最初の情報はこの二点でした。早速現状での音を聴かせていただきました。その音の中にも完全に二つに分離した形の情報として認識出来ます。

 その二つとは、「すごく魅力のある音」と「ストレスとして感じるもの」です。その中でも今日の音はその魅力の度合いが相当に高く、かなりの可能性を秘めてある状況にあるのは間違いありません。ですから、こうしたクリニックという形でお伺いさせて頂いた時に、その効果や結果を大きく目に見える形で表す事が出来るのです。わたしにとっては腕による差を提示しやすい環境なのです。


 最初のインパクトが全て


 クリニックにおいては最初のアクションが一番大切です。やった行為としては何でもないようであっても、音が飛躍的に良くなる。ポイントはこれです。訪問した先で手を付けるところや順番が違うのはその為なんです。音を聴いた時にどこの部分がこのような音にしているのかの分析能力が全てなんです。それが感覚として感じ取れなければ、処置のしようがないわけですから、セッティングの良し悪しは診断能力に全てが掛かっていると言っても過言ではありません。今日の場合のそれはスピーカーケーブルの方向性でした。

 私がやるよりご自身でやってもらった方がより集中力が増しますので、横着のように見えてもお客様にやって頂きました。その時既に、私にはそのケーブルも左右を入れ替えた方が更にスムーズになるのは分っていたのですが、敢えて同時にする事は避けました。それは、一度に二つの事をやってしまうと「何がどう作用してその音になったのか?」の判断がつかなくなるからです。

 方向性の効果というものは、製品の能力の違いによって物理的な音の質的向上が得られるのとはちょっと違っていて、感情面や気持ちの伝わり方がより一層明確に分りやすくなる点です。言ってみれば左脳と右脳の働きの違いのようなものです。何かの抵抗が取れたように、スムーズにスッと音楽が心に届くようになってくる感じです。嬉しくなるような気持ちになるんですね。

 この効果に、『カイザーさんは繋ぎ変えもしないでどうして分るんですか?』というご質問を頂戴しました。半端でない経験から得た情報量の多さから分析出来る力が身についたのですが、そこに至るまでには物凄い厚い壁が立ちはだかっていますので、努力によって誰にでも出来るものではありません。私の場合は執念にも似たものがありましたから出来たのだと思います。

 次にスピーカーケーブルの左右を交換した上で音の確認をしていただきますが、また一段階音に魅力が出てきました。オペラを好んで聴かれるM.Uさんですから、この人の声の感情の微妙な聞き分け力は一般の人とは桁違いに敏感です。私もその部分が長けているのですが、その私が驚くほどですから本当に凄いですね。


 機材の活かした使いこなし


 次に手を打ったのは機材の配置です。特にエソテリックのP-2、D-2は普通のコンポの半分の幅しかありません。従いまして同じ棚板に載せた場合、重心が片寄りするのが理由で振動の煽り現象が大きく、一般の40数センチ幅のコンポに比べてその点で不利になります。そこで私が目に付けたのは、お手製の2枚のスノコ状の形をした台です。現状ではそこにはデンオンのDVDプレーヤーが載せられており、またP-2、D-2は一枚のボードに載せられているのです。すなわち、どちらもが相性の悪い使い方になっているのです。

 簡単に言えばその機材の配置を入れ替えただけなんですが、その効果は想像をはるかに超え、とんでもない音となって私達二人の前に姿を現したのです。してやったりです。この時点で相当良くなりました。当然でしょうね、お互いが苦手なところから得意なところに配置転換したのですから・・・。

 次なる処置は電源タップのどの位置にどの機材を使うのが良いか?、また、何種類かあるACケーブルですが、どの機材にどのACケーブルを使ってやるのが一番良い結果が出るのか?というものです。これも音楽の流れが一段とスムーズになる形での変化として現れるのですが、何種類かの組み合わせが考えられます中から最悪と最良を聴いて頂き、その違いを判断して頂きます。

 目的はステレオが一つのチームとしてまとまりのあるものにしてやる事です。もう既に、お伺いした最初の時点の音とでは比較にならないほど素晴らしい音に変身しました。細かい事を言えばいくらでもありますが、スピーカーを除いて大まかな点では大体これでO.Kです。


 腕によるチューニングの全て


 1円もお金を掛けないで腕だけで音を良くする方法として残された大きなものは、スピーカーとその部屋に於ける相性の良い設置ポイントの探り出しです。言い換えますと、音を如何に上手く「カイザーウェーブ」に乗せるかです。私の場合、その音の問題点を処置する前にこう変わりますと明言した上でやります。

 現状での設置場所はかなり良い所にありますが、わずか2〜3センチピンポイントの位置から外れております。これが今の音の全てを物語っております。すなわち今回の場合は、低・中・高のエネルギーバランスが中域から高域寄りなんです。要するに低音のエネルギー不足となって聞こえる状態です。                
          
 この状態での改善方法として大半の方が思いつくのは、もっと大きなウーハーユニットの導入でしょう。それも全てが間違いとは申しませんが、真の解決にはなりません。一見低音不足は補えたようでも、何とはなくバランスの悪い鳴り方は依然として残ってしまいます。それより何より、時間軸のタイミングの悪い音、すなわち音楽のテンポやノリの良さがどうしても出て来ません。

 スピーカーが壁との間でその部屋の空気の毬つきをしているのと同じですから、そのタイミングを取ってやる以外に方法はありません。これこそが物理現象としての真理です。ご覧の写真のようにスピーカーのセッティングには苦心の後が見えますが、これでは振動の迷走があり、大地にシッカリと根を張ったような力強い音は望むべくもありません。その振動面に於ける音は後の問題として、とにかくこれからやろうとしている事は「空間の時間軸」のタイミングを取る試みです。

 集中力を働かし前後、左右の微調整をします。「ヨシ!、ヨシ!その調子!」。徐々にスピーカーが音の芯を食ってくる手応えが分るんですね!。特に打楽器系のアタック音が力強く聞こえる様になります。「来ました!、来ました!、ハイ!、これでO.Kです!」。

 この時点で力強い低音が素早く出て来るようになりました。もちろん、キツメに聞こえていたバイオリンの音なども、すすり泣くような細やかな音まで感じられるように変わりました。要するに、力強い基音と美しい響きの倍音が一本の軸上に乗っかった形で鳴るようになったのです。


 腕だけでなく物の良さも訴えます


 とりあえず腕だけで音を良くするにはそろそろ限界があります。ここから先はローゼンクランツ製品を導入して頂く量だけ音の質がそれに比例して良くなります。今日は車にはありとあらゆる製品を積んでありますので、実際にこの場で音を確認して頂く事が可能です。一つよろしくお願い致します。

 私ならスピーカーの設置に力を注いでやりたいと思います。サウンドステーションという製品はウェブをご覧頂いてご存知だと思いますが、既にお買い上げ頂いておりますスパイク受けのJRU(H)タイプとエコブラスのスパイクでシッカリと足場固めした音をいの一番に聴いて欲しいのです。

 『それなら是非お願い致します』。

 慎重にサウンドステーションをお客さんの目の前で組み上げます。ネジの適材適所を見ながら加速度組み立てを施します。その後スピーカーにエコブラススパイクを上と下の比率バランスを考えながら、これまたL.Rを区分けし、後ろの内側から前の外側までの順番を考えて取り付けしました。前後、広がり、奥行き、といった三次元の音の広がりに大きく効いて来るのです。


 最初の状態とサウンドステーションを履かせた時の写真を見比べてみて下さい。こうまで違いがあるのか!、美しくもあり見た目の安定感も抜群です。スピーカーが見違えるようです。デザインには特別に拘りを持ったイタリア人の作品ですから、それに合うだけの雰囲気を用意してやるのは必須項目です。


 ここから先の出来事は、恐らくM.Uさんから感想のメールを下さるでしょうから、敢えて私のコメントは差し控えます。


 それにしても、奥さんの作って下さった手製のおにぎりと味噌汁は美味しかったです。

 有難う御座いました。


 如何でしたでしょうか?


 ----- Original Message -----
 From: "M.U"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Monday, September 06, 2004 9:44 PM
 Subject: Re: 如何でしたでしょうか?


 貝崎さん

 思いもかけず、音の専門家、貝崎さんに、クレモナの能力を精一杯引き出してもらいありがとうございました。そこそこの評判のSP、アンプを思い切って購入してみたが、出てくる音に満足していないオペラ好きの人々の参考になればとおもって、このメールをかきます。

 オペラを楽しみたくて、約2.5年まえに、伊ソナスファベ-ル社スピーカー「クレモナ」を購入しました。ステレオ雑誌を熱読精読し、少しでもよく鳴ってもらうと、アンプも買換えました、CDプレーヤーもセパレート型にグレードアップしました。更に、電源ケーブル、スピーカーケーブルも色々変えてみました。

 最終的にはアンプはジェフローランのコンチェントラ2、CDはエソテリックのP2s/D2、 DVDはデノンのDVD-A1のラインアップで、専らオペラCD/DVDをエンジョイしています。貝崎さんの訪問された昨日までは、贔屓目に判断して、クレモナの70%くらいの能力で鳴らしていると信じていましたが、どうもそうではなかったようです。

詳細は貝崎さんレポートご参照。

 SPケーブル、インシュレーター、電源ケーブル、RCAケーブル、etc、何かを変えるたびに、少しずつ音はよくなってきました(そう信じ込んでいました)。そうした不断の努力の結果、録音の良いオペラCDは、良くなってくれていました。

 オペラの醍醐味を味あわせてくれました。

しかし、よくならないCDも多々あります。とくに古いライブ録音のCDは音がわれたり、カサカサだったり、我慢してもききずらいものが多々ありましたが、総じてCDの音には満足していました。

 しかし、DVDから出てくる音は、CDに比べるとグレードが落ちるようで、不満でした。なんとかインプルーブできないのか? 別の機種に買換えたらどうか?しかし永年の苦い経験から、同じような値段での買換えは、大きな効果は期待できないとの知恵はありました。

 今回、貝崎さんに「サウンドステーション」を利用したセッティングをお願いしたところ、事態が一新しました。


 以下は、昨夜、貝崎さんが帰られた後の、我が家の状況です。

 オペラ愛好家、特にカラスふぁんなら良くご存知のCD、EMI「La Traviata」、ジュリ−ニ指揮、カラス,ステファノ、バスティアニーニ、1955年スカラ座ライブCDです。 我が家で、これまで何度も聴きかけては、かなきり声のようなオーケストラ、潤いのなくした人の声に、途中でやめてしまっているCDを聴きなおしました。 結果は、マリア・カラスの蘇生です。

 昨夜は、始めて、最初から終わりまで、中味に惹きずれれ通聴いたしました。1955年のスカラ座の雰囲気を、全盛期のカラス、バスティアニーニをたっぷりあじわいました。第1幕:カラスの全盛期のアリアを、第2幕:カラスとバスティアニーニの、息の詰まるような緊張感に充ちた歌声に酔いしれました。第3幕......フレッシュな音を聴くというわけにはいきませんが、かなきり声は消え、人の声は魅力十分、オペラを楽しむのに何の不都合まありませんでした。

 オペラファンに申し上げます。

 若し、あなたの装置でこのCDが楽しめなければ、セッティングの見直しをおすすめします。
 すでに楽しんでいる方、あなたの装置はなかなかのものです。

 アンプ/SP/プレーヤー/ケーブルなど何も換えずに、セッティングのやり直しでこれだけ「SPから出る音」がかわるのです。貝崎さんにいわせれば、マジックでもなんでもなく、やるべきこと、音の流れをスムースにさせただけで、これだけ大きな音の変化が生じました。

 貝崎さんにとって、SPから出てくる音は、一回かぎりの捉えどころのないものではなく、科学的に診断、処理、処方箋をかけるもののようです。「この,少し濁った音は、どこを、どうすれば、澄んだ音に変るとか、この高音よりの音は、....が原因だとか、的確に指摘出来るようです。

今日は、DVDをききました。
今まで、音がつまらないとおもっていたDVDです。
ムーティ指揮/スカラ座/シチリアの晩鐘 
今まで、魅力にかけていると感じていた、

ソプラノのスチューダ、テノールのクリス・メリット、

バリトンのザンカナ−ロの声がいきいきとしてきました。これなら十分、このDVDは楽しめる。

 貝崎さんの言葉を借りるなら、音が澄んできて、躍動感がでて、高域よりだった音がバランスよく低域もでてきた結果、ややのっぺらぼうだった声が、表情ゆたかな声に変貌してきこえるようになったと言うことのようです。

 こちらにとってだいじなのは、その結果、楽しめるCD/DVDの数がグーンと増えたことです。

 明日から、今まで、傍観放置されていた、音の悪いCD/DVDの聴きなおし、観直しの開始です。なによりもうれしいのは、オーディオ雑誌の購入が不要になったことです。


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