トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅アルミコーンスピーカーの雄/AE2 signatureを調教

アルミコーンスピーカーの雄/AE2 signatureを調教



 AE2、このスピーカーには以前から興味が強くありましたが、じっくりと本腰をすえて聴く機会がありませんでした。T.S様より次のようなメールを頂戴したことで、”これは良いチャンス”と思い、どれだけの能力を秘めたスピーカーなのかお手合わせをしてみたいという気になったのです。


 ローゼンクランツ製品購入希望


 ----- Original Message -----
 From: "T.S"
 To: <kaisersound@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Friday, October 29, 2004 5:16 PM
 Subject: ローゼンクランツ製品購入希望


 貝崎様

 はじめまして、T.Sと申します。
 最近ローゼンクランツの製品を使い始め、そのすばらしさに驚いている一人です。

 今回「スピーカー」と「スピーカースタンド」の間に入れるものが欲しくお便りしました。
 使用しているスピーカーはACOUSTIC ENERGY の AE2 signature とそのオリジナルスタンドです。
 指定通り逆スパイクでスピーカーを支えています。

 「床」と「スピーカースタンド」の間にはBDRのスパイク受けを使っています。
 これもいずれローゼンクランツの製品に代えるつもりです。

 どのような製品がいいか併せて教えてください。
 よろしくお願い致します。

 T.S


 情熱を傾けて完成させた製品は人々に感動をもたらす


 電話をかけて内容をお伺いしますと、この最近インシュレーターのBOSSとCOUSINを買って下さり、その音の向上に相当満足をしているとの事です。特にBOSSのこのところの人気は素晴らしく、『ステレオでこんな熱い音楽を聞かせてくれるなんて信じられない』という言葉を多くの方達から頂戴します。T.Sさんも例外ではなく一気に音楽が誕生したようです。

 「私自身AE2 signatureには大変惹かれるものがありますので、クリニック方々お伺いして勉強させてもらえませんか?」とお願いしました。すると、『願ってもない事です、当方とてカイザーさんのノウハウでAE2の能力を発掘して頂けるのなら是非お願いいたします』と二つ返事で話が決まったのでした。話はとんとん拍子に進み、電話をかけて僅か二日後にはお伺いすることになりました。

 引っ越して間もないのでオーディオシステムは未だ充分に調整出来てはいないそうです。ベランダに通じる掃き出しの窓側にセットしてあるのと、僅かに狭いものの縦長気味のリビングはローゼンクランツの東京試聴室と瓜二つの環境です。音はやはり良く似た傾向であります。この手の部屋の音は毎日聴いておりますので、調整するのはお手のものです。



 「カイザーウェーブ」の谷間の音とは?


 お聞かせ下さる音は低音と高音がかい離したような鳴り方をしておりますが、これは部屋とのマッチングの関係で「カイザーウェーブ」で言うところの谷間にある状態の音です。
 
 クラシックの楽章でフォルテになると高音がきつく耳につき、うるさく感じるというのが今日のT.Sさんの一番の改善希望点です。これを解決するには「カイザーゲージ」で説明するのが一番です。今のスピーカーの位置が音の良くない場所だと仮定すると、「カイザーゲージ」の青い波の谷間をスピーカーの図りやすい場所に先ずあてがいます。その青い波の半波長前か後ろの山に相当するところが、今鳴っている正反対のプロポーションの音がするのです。

 とりあえず良い悪いは別にして、今の音と正反対のプロポーションの音を聴いてみて欲しいのです。そうするとどちらの音が好きか、また良いかの判断が二者択一ですと簡単に判断がつきます

 
 「如何ですか?」。

 『いやぁ〜文句なしにこちらがいいですネェ・・!』。

 このようにしてさらに半分の位置の音と次々に聴き比べをしていただくだけで、

 その部屋における理想の音のするスピーカーポジションを見つけ出すことが可能になるのです。

 目からうろこが落ちます。


 スパイクとスパイク受けの重要性


 T.Sさんにとっては、この一件でカイザークリニックの効果を信じるに余りあるものがあったようです。ご自身よりの希望でもあったスピーカースタンドのスパイク交換を始めます。私のイメージでは現在使っているBDRのスパイク受けは音質的に使えそうです。エコブラススパイク交換作業の一環としてBDRを加速度設置をしようと思い、床に傷をつけない為にBABY(E)Uを臨時に履かせたのです。それがどうでしょう・・・?!、『この音は私にとって好みの方向に変化したので、このままBABY(E)Uとエコスパイクを使って聴きたい』と口にされたのです。

 合計8本のスパイクの序列も決め、適材適所に組み上げていきます。この地味な作業こそが、後で大きく素晴らしい音が出来上がっていくのに欠かせない作業なのです。とにかく徹底的に基本には忠実に、時間と手間を惜しみません。


 このスパイクとスパイク受けの効果はS/Nの向上に大きく成果を上げました。静寂の中から音楽がすっと浮かび上がってくるのが嬉しくなります。この差をアンプやCDといった機材で出そうと思えば物凄い金額を必要とするでしょう。


 機材の買い替えによって得られるものではない


 先ほどのようなスピーカーポジションの状態で、音が気に入らないからといって機材を買い換えたり色々なアクセサリーを試しても解決が図れるものではありません。仮に解決が図られたとしても、それは凸凹の逆のパターンの物が偶然重なった時が合った時ですから健康な状態とは言えません。そんないびつな音のプロポーションであるその原因の99%は、部屋とスピーカーとのポジショニングにあるのです。

 何も他にする事はありません。このウェブをご覧の皆さん!、とりあえず、「カイザーウェーブ」の青い波の半波長分動かしてみて下さい。その音から必ず解決の糸口が見えるはずです。騙されたと思ってやってみてください。今日は時間が充分に許されているわけではありませんので、スピーカー間の間隔などの微調整は確認作業を省き一気に理想のポイントまで持っていきました。


 ユニットの取り付け角度の問題点


 それともうひとつ今日の音の特徴は、左側にそれも下方にいびつに引っ張られるような鳴り方をしております。これはスピーカーのマグネットの方向性から生まれる症状なのです。スピーカーユニットに耳を近づけ念入りに調べますと、両チャンネルの4個のユニットすべてが時計で言うところの7時〜8時の方向にエネルギーが強く出ているのです。これが左に偏って定位する原因だったのです。


 これを是正するには左側を90度、右側のユニットを180度右に回転させ取り付け直してやればいいのです。そうすると音像は左右できれいに揃うのです。この時にネジの締め付けトルクが問題になってきます。ここで提案です。「見違えるような音に変身しますので、スピーカーの加速度組み立てをこの際なさいませんか?」。万が一気に入らなければ元に戻せますから安心して下さい。
 
 『このスピーカーは気に入っていますので、これからも大切に付き合っていきたいと思っています』。『・・・そんなに良くなるのであればお願いしましょうか』。ちょっと躊躇するような感じもお見受けできましたがやる事になりました。


 PB-BOSSの試聴


 次にはスピーカーの下に今話題沸騰中のインシュレーターPB-BOSSを入れて試聴です。もう驚きの連続です・・・。聞こえていなかった音がいっぱい耳に入ってくるんです。熱い音楽がこの小型スピーカーから信じられないように怒涛のごとく押し寄せて来るんです。迫力面もさることながらもっと嬉しくさせてくれるのはピアニシモの豊かさです。これで小音量でも十二分に満足出来ますので近所に気兼ねする事もなくなるでしょう。

 スピーカーの前に押し寄せてくる迫力はもちろんの事、スピーカーの後ろに展開する二次三次と重なる間接音の豊かさは、何のルームチューニングも施していないごく普通のマンションのリビングから出る音とは誰が思うでしょう・・・。

 少ない時間と限られた予算でここまでの音が出てしまっては、この後何も買う必要など無いのではと思ってしまいそうです。

 
 結果は如何でしょう?。

 ものの見事に化けました!。

 物凄いエネルギーで音楽が部屋中に満ち溢れました!。



 振動周期を見極め相乗りさせる


 こんなに凄い音が出るようになるとついつい欲が出てきます。右のスピーカーの後ろにあるオーディオラックの位置を15ミリほどスピーカーに近い方に動かします。スピーカーから発する振動の周期に同調するような位置に合わせるのが目的です。これによって、音の面で人馬一体となったような動きが可能となるのです。具体的には音の押し引き揺らぎ等が何とも気持ちよく感じます。



 こちらこそありがとうございました

 
 ----- Original Message -----
 From: "T.S"
 To: <kaisersound@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Thursday, November 11, 2004 2:52 PM
 Subject: こちらこそありがとうございました


 貝崎さま

 昨日は大変有り難うございました。


 自分のシステムを貝崎さんのような方に聴いてもらうのは光栄な反面、

 とても恥ずかしいのですが、

 名医に診てもらえるチャンスを逃したくな い病人の心境とでも言いましょうか、

 思い切ってお願いした次第です。

 診断、そして処方がはじまり、それは魔法をみているような感じでした。

 生き生きとしてくる。音が音楽に変化していく。

 言葉でいうと、どうしても大袈裟で胡散臭い表現になってしまいますが、

 しょうがないです、そうとしか言えません。

 と、また胡散臭い言い方になります。

 今回は短い時間の中、また限られたわずかな予算の中でのクリニックでしたが、

 ここからスタートで、一歩一歩着実に進化していける確信みたいなものを得ました。


 どうか、今後ともよろしくお願い致します。


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