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サウンドステーションの導入でクレモナの良さを発揮したい



 今回のT.Sさん宅へのクリニック訪問はサウンドステーションの導入を検討したいとのご相談を頂いたのがきっかけとなりました。勿論その前からインシュレーターの購入を初め、当社の試聴室へお越し下さったりとかで、少しずつカイザーサウンドの音作りに対して好感触を得られているようでした。

 その中でもスピーカーのスパイク受けインシュレーターとして導入したPB-JRU(H)の効果が特に大きかったそうです。また今回の場合は、オーディオシステムと部屋の写真を事前にメールで頂いていましたので何かとゆとりを持って対応出来ました。

以下はT.Sさんからご相談頂いたメールの内容です。


  ----- Original Message -----
 
From: T.S
 
To: info@rosenkranz-jp.com
 
Sent: Saturday, December 03, 2005 6:18 PM
 
Subject: サウンドステーションの導入を検討しています


 
貝崎様

 T.Sと申します。昨年の9月11日に試聴室にお邪魔させていただきました。覚えていらっしゃるでしょうか、残念ながら丁度アンプの調子が悪くて一方のチャンネルの音が割れ気味でした。それでも、ごく普通の部屋で大音量・小音量にかかわらず大変豊かに響かせていられて大変感銘を受けました。当時、クレモナ用にPB-JRU(H)をアキュフェーズのDP85用にPB-BIG JAZZを購入し、しばらくしてからお伺いしたのでした。お伺いした後で、貝崎理論に従ってスピーカーから壁までの距離を10cmくらいの範囲内(最初の状態±5cm)で丁寧に比較して決めてやったところ驚くほど音がよくなり驚きました。

 さて、クレモナの下に サウンドステーションU を導入しようかと思ってご連絡しているのですが、まず現状のシステムや状況を説明いたします。CDPのみ当時のアキュフェーズから変わっています。

 現状のシステムは:
 
スピーカー: クレモナ 
 
CDP: ソニーSCD-DR1
 
プリアンプ:  ジェフ・ロゥランド シナジー2i
 
パワーアンプ: ジェフ・ロゥランド モデル201
 
ラック: ターゲット・オーディオの4段、キャスター付き(かなり古いタイプ)

 CDプレーヤーは奥行きが43cmもあって収まらないので、イルンゴのアピトンボードをラックの段のうえに置き、その上に設置しています。クレモナの脚にはPB-JRU(H)を履かせてアコースティック・リバイブのボード(箱の中に粒を詰め、真鍮ボードで蓋をした仕組みのもの)の上に置いています。Jeff モデル201は床にじか置きしています(いろいろ試した結果これがベストでした)。 ラックにはこの他、
安物のDVDプレーヤーやビデオデッキなどがのっています。映像は特に重視していません。

 
電源コードはプレーヤーとプリアンプがJPSカプトベータ−、それ以外はスピーカー・ケーブル、ライン・ケーブルも含めAETの製品。SCD-DR1はアンバランス出力専用に対しシナジーはバランス入力専用なので、AETのケーブルで両端がバランス−アンバランス になったものを使用してます。また、 ACパワーディストリビューター としてシュンヤッタのハイドラ 8を使用しています(コンセントからハイドラまではシュンヤッタの付属コードで、コンセントパネルはPAD)。

 CDプレーヤーをSCD-DR1に替えて以降、PB-BIG JAZZを使っていません。使いたいのですが、SCD-DR1のインシュレータを素人がはずして大丈夫か心配で、触らずにそのままにしてあるのです。かれこれ1年弱になるのですが、買い替え当初からエージングが済んだら貝崎さんに見てもらうのが一番だろうと思いながら随分時間が経ってしまいました。

 部屋は賃貸マンションでフローリングの床、12畳くらいのリビングです。スピーカーはほぼ真正面に向けて設置しており、背面にはQRDのボードを置いています。音ですが、基本的には求めている方向とは思うのですが、超高域にキツさがあり、相性の悪いCDだと聞いていて辛くなります。

 また、小音量だと面白みが出ないことが多いです。とりあえず、サウンドステーションを導入することによって、クレモナの良さを発揮できるようになるのではと期待しています。聞く音楽はクラシック(古楽から現代まで)、Jazz、ロック・・・、要するに最近のJ-pop以外は何でも聞きます。

 よろしくお願いいたします。

 T.S



 お客様と私の間に生じる音の聞こえ方の整合を計ることの重要性


 ご相談頂いた内容と現状の音との間にどれくらいのギャップがあるのか実際に聞かせて頂く事から初め、S.Tさんと私の耳の聞こえ方の違いの中から整合性を取らなければなりません。要するにメガネを作る時に色々な度のレンズを入れ替えながら調整する作業と同じと思って頂ければご理解頂けるでしょう。先のクリニックとセッティングが生きるも死ぬも、その時の摺り合わせによる判断が決めるといっても過言ではありません。

 最初に聞かせて頂いた曲は木管楽器がまろやかな響きを奏でています。
 
 クレモナの面目躍如たる魅力ある音色です。

 「いいじゃないですか・・・」。

 『そうなんです、これは一番良く聞こえる部類のディスクなんです』。

 『じゃあ、次にこれを聴いてみて下さい・・・』。

 次はバイオリンの曲です。

 『最初はそうでもないんですが、次第々に嫌になってくるんです』。

 『特にこのディスクなんかがそうです・・・』。

 ディスクによってかなりの差が出ます。

 「仰るとおりこの鳴り方ですとちょっとイラつくでしょうねぇ」。

 S.Tさんの場合、幸いにも素材に恵まれておりますので楽勝です。

 「今日はお任せ下さい」。

 ディスクの音の良し悪しで聴きたくないと感じる状態はオーディオのコンディションが良くない状態にあると思っています。私の考えはどんなに古い音源であっても、また録音が良くない状態であっても、素晴らしい演奏のディスクは何度でも聴きたくなるようであって欲しいのです。過去においてクリニックさせて頂いた大半はそのように改善出来たと思います。回数を重ねる毎に腕が磨かれ、今ではよほどの状況でない限り何とかなります。



 超高域にキツさがあり、相性の悪いCDだと聞いていて辛くなります


 S.Tさん悩みの上記のテーマは多くの人が抱えている共通した問題点でもあります。多くの人々が悩んでいるという事は解決出来る方法が一般に知られていないという事になりませんか?。これこそが私が「空間の時間軸」という表現で取り上げております「カイザーゲージ」と関係するお話です。
 
 この問題に出くわした時にケーブルを入れ替えてみたり、能力が高いといわれる機器に目を向けがちなのが通常のパターンです。要するに物のすげ替えによる手法ですが、勿論改善され良くなる部分もあります。しかし、また新たな負にも直面します。それでは原因は取り除かれないままです。

 その音はオーディオ機器が原因ではなく、部屋とスピーカーの配置の相関関係によって起きているのです。同じ音楽を聴いても、スピーカーの置かれている位置の違いによって、とても同じスピーカーとは思えないほど音のバランスに違いが出るのです。

 その真相は部屋の空気の動き、すなわち反射のパターンが千変万化することによって色々な周波数のエネルギーにピークやディップが生まれます。その高い周波数の部分にピークが現われると耳に刺すようにキツく感じるのです。

 目に見えない音だから原因が分かりにくいのですが、それが光源の見えるような光の場合ですと簡単です。ちょっと角度を変えれば直接目に入る光から逃れることが出来ます。それと同じようにスピーカーを前後にちょっと動かしてやるだけで心地良い音に生まれ変わるのです。これで初めてスタート地点に立った事になります。

 スピーカーの前の床を見ると何ヶ所かテープでマーキングした跡があります。今の置いておるところもそんなに悪くはなく、むしろ3番目に良いところ位です。残念にもその数センチ前にマーキングしてあるところにもっと良いところがあったのですが、他との兼ね合いでS.Tさんは今の位置の方が良い鳴り方に思えたのでしょう。でもこの場所に置いているだけでも上出来です。

 こうして正しいスピーカーの場所を確保した上で、S.Tさんのシステムを素っ裸にし、問題点を洗い出します。さしずめオーディオの細木数子といった具合です。


 その他の問題点を図に描いて説明


 その1. 音響拡散パネルの調整

 図1のメモはスピーカーの背後の4枚の音響パネルQRDを表しています。この製品の音の効果と目的はスピーカーの背後に音像を定位させる事と無垢木の持っている音の響きの良さをプラスする事です。

 このQRDは私の判断では長所7割、短所3割です。長所は上述しましたが、短所は壁面のほとんどを覆い尽くすように多用した場合には反射波のほとんどを拡散してしまうので倍音を乗せることが出来なくなることです。今回の場合は壁面積の1/3位ですから適量です。
図1

 しかし、無垢木を使っているので響きの方向性が音に強く出てしまいます。置き方の向きによって上下あるいは左右に偏ってしまうのです。ひとつひとつ集中して聞きますと私には分かるのですが、音場がきれいなバタフライパターンになっていないのです。それを整える為に図に示し改善方法を提案致しました。

 高さ方向に関しては左に置かれている2枚が下向きなのに対して、右の2枚とも上向きです。音場の形成としては左チャンネルは下向きに音が出ているので良くないパターンです、右はまずまずです。広がり面においても同じことが言え、両側共に内向きですのでこじんまりと音が中に集まり広がりはありません。

 その処置は右の外側のパネルを左から2番目に、右の内側のパネルを一番左に持って来ました。左のパネルは上下とも反対にしたうえで外の物を右の外に、内の物を右の内に持って行きました。これで音場は内から外にそして下から上に部屋一杯に満ようになりました。


 
その2. 粒子が充填されたスピーカーベースとサウンドステーションの考え方の違い

 砂やケミカル粒子が摩擦し合う間に振動を減衰させ、スピーカーに逆起振動を戻さないという発想の元に作られた物です。床とスピーカーとの間に起こる振動の不要なぶつかり合いを遮断し解決しようとしているのでしょうが、スピーカーの発する音楽振動というのは想像を遥かに超えるエネルギーがあります。次から次に襲ってくるわけですから休む事など許されません。特に激しい曲などの場合はいくら振動減衰力が高くとも、限られたサイズの箱に充填された量の力で抗しきれるものではありません。静かなメロディーラインの楽曲等であれば問題を露呈する事はないでしょう。
図2

 方やローゼンクランツのサウンドステーションは素早く振動を移動させる事に重きをおいています。タイミングが命と心得、サウンドステーションは好んで音楽エネルギーを受け止めようとします。性善説的考え方です。リズミカルなテンポを更に魅力ある和音に乗せ、床や壁の力を借り、そして家具等までも仲間に取り込み、皆で一緒に楽しく歌いましょうというものです。 

 組み立てにも細心の注意を払いネジの順番を見た上で組み上げて行きます。どこを叩いても均一な響きになるように、何度も何度も締めては叩いてみるを繰り返し、ピアノの調律をするのとそっくりな手法です。気持ちを込めて完成させた物は何ともいえない雰囲気が漂うものです。今日はいい音が出そうな予感。

 
 その3. スピーカーその物の左右のペアリング調整

 スピーカーユニットの持っているエネルギーの方向性をチェックし左右のスピーカーのバラツキを説明致します。右チャンネルの二つのウーハーは時計でいうところの7時の方向に強く押し出すようになっています。左チャンネルは何もしなくても良さそうです。ホコリの状態を見ればお気付きでしょう、下側のユニットを上下反転するように向きを変えて取り付け直す途中の写真です。最終的にはスピーカー本体を左右入れ替えた方がバランスが良いのでそうしました。
図3
 




 ワイヤリングを中心とした最終調整


 以上のような項目の大手術を施しましたが、私の予想を下回る音しか出てくれません。何ヶ所か足を引っ張っているところがあるようです。基礎工事だけは手を抜かず時間とお金をかけましたのでここから先何段階も音の向上ぶりを確認出来るはずです。

 症状として一番気になるのは音抜けの悪さです。しかし幾らなんでもそれは無いだろうというほどひどい状態なのです。さてどうする事がS.Tさんにワイヤリング問題の謎を解って貰えるのだろうと考えた時に、ふとひらめいたのが最少の費用で最大の効果を上げる事でした。

 わずか3,600円/mのミュージックスピリットのスピーカーケーブルに変更してみます。これは効きました・・・。堰を切ったように音楽が流れ始めたといった形容がピッタリです。周波数全域にわたって音のスピードが揃っているのが特徴です。高価なケーブルなど全く必要無しといった空気です。

 この時点で3枚ほどテストディスクとして決めた物で確認試聴して頂きます。ポップスの女性ボーカル、無伴奏バイオリン、そしてピアノ曲、どれも結構なバランスに仕上がっているようです。かなりの改善になりましたが、決定的な詰まった感じは拭えきっていません。


 電源ケーブルの真打登場


 まだ上手のスピードに下手のアンプがついて行けてない感じです。伝送系の加速と失速に起因しているのがほとんどなのですが、多くの場合こうした症状に対してアンプのパワー不足という判断を下してしまいます。今日の場合はパワーアンプに使っているACケーブルが足を引っ張っているに違いありません。この手の症状はワイヤリングのやりくりや配置換えでかなりの音質改善が出来るのですが、今日の場合はそれにしても落差が大きいようなので予定の順番を繰り上げてでも強力な武器を使ってみることにしました。

 DAコンバーター専用のACケーブル「AC-DA614」をCDプレーヤーに入れて試聴して貰います。さすがに結線と同時にモノが違うといった鳴り方で、先の期待が大きく膨らむとともに夢を見せてくれるような鳴り方です。

 しかし、5分もするとお決まりのリバウンドの症状が出始めます。位相が崩れて行く様が目の当たりに出来ます。この先10分ほどは下降線をたどり、何をやっても正しい音の判断は不可能なのでしばらく小休止です。その時、”ピンポーン”とチャイムの音がしました。夕食に寿司の出前を取って下さったのが丁度到着したようです。

 音楽談義に花を咲かせながら寿司をご馳走になります。想像以上の音の改善ぶりにS.Tさんは満足そうな表情を見せてくれます。寿司を食べ終わった頃にはかなりエージングが進みクレモナもすっかりリズミカルになりました。

 調整も最終章に入ります。プリとCDプレーヤーに使っていたJPSカプトベータ−をパワーアンプに、そしてパワーに使っていたケーブルの1本をプリに入れ替えました。音がビタッと決まりました。O.K!です。計算通りです。思わず親指を立てました。

 私にしてみれば予定通りですが、この領域までの音を積み上げ導き出すのはランディージョンソンの球を打つより難しいかもしれません。結果として私の読みより少し良い音が出るようになり今日も良い仕事が出来ました。



 ----- Original Message -----
 
From: S.T
 
To: info@rosenkranz-jp.com
 
Sent: Wednesday, December 28, 2005 9:39 PM
 
Subject: Re: 有難うございました


 
貝崎様

 
先日は長い時間ありがとうございました。結果は予想を遥かに越えるものでした。
 
「70年代にLPレコードで聞いていたロックの作品のCDが、
 
音が妙にきつかったりチャラチャラしていたり、
 
細かい音はよく聞こえるがなんだかうるさかったりしてなぜか楽しめない、
 
将来リマスターされたりSACD化されたら少しは良くなるだろうか・・・。
 
LPレコードの頃はそれほど高価なシステムでもなかったのに、
 
聞いていて十分ハッピーだったのに何が違うのか?」
 
「期待して買った最新録音のクレーメルのBachだが、
 
バイオリンの音がきつくて聞いていられない」といったような悩みが嘘のように解消されてしまいました。

 
さて、積み残しの課題であるラックですが、年明け早々にでも導入できればと思います。


 
都合の良いスケジュールをお知らせください。またいろいろ提案お願いします。

 
S.T





 2度目の訪問


 4段のカイザーウェーブラックを配達に行って参りました。T.Sさんは目の付け所が大変良く一番効果の大きいところに気がついたようです。もっとも今までお使いになっていターゲットオーディオの物は棚板も薄くお手持ちのコンポーネントと比べると性能が追いついていません。今日お持ちしたラックに載せれば機材全てに効果が出るわけですから私の目から見ても一押しです。

 他にも音の提案をするべく今朝は6時に起きXLRタイプのケーブル作りです。その後3時間近い時間を掛けてラックを組み立てました。先週広島に帰った際に太田川の清流の川砂を採取してきました。砂時計に使えそうなぐらい粒子が細かくとても綺麗でサラサラしています。組み立てながら”さぞかし良い音になるだろうなぁ”って思いました。


 美しい白木のラックに機器が生えます


 アンプ、CDプレーヤー達の新居への引越しです。特にパワーアンプはそれまで床に直置きでしたのでいかにも気持ち良さそうに見えます。プリとパワーが上下に揃ったジェフローランドのカップルは見た目にも凄くカッコ良くなりました。CDプレーヤーのみBIG JAZZのごっついインシュレーターを履いておりますがとりあえずアンプはそのままです。


 次に各コンポーネントを”カイザーループ結線”にします。長さの余った部分をケーブルの癖に沿ってエネルギーが抜けやすいように信号の流れの順に、上にしたり手前にしたりしながら一定のルールに則ってループ配線する手法です。別名加速度配線とも言います。これが音に凄く効きます。



 一瞬何が起こったのか、ビックリ!


 ラックもスピーカーとの振動のモーメントが一つに揃う場所に配置します。あとは電源ケーブルを壁のコンセントに差し込めが全て結線完了です。「それではSさん電源コンディショナーのケーブルを壁のコンセントに差していただけますか?」。とわたしがお願いした瞬間です。

 ”バチッ”という音とともに部屋の明かりが消えました。何が起こったのか!?、ビックリしました。よく見ると壁のコンセントプレートが緩んでいて、差込プラグの+、−両ブレードの上に落ちてきてショートしたのでした。幸いにも機材にトラブルもなく無事に機能しましたのでホッとしました。


 前回と同じディスクでテスト


 モーツアルトのシンフォニーからスタートします。このディスクは元々良い音で鳴っていたのですが、ふっくらとした木管楽器の音が空気のじゅうたんに乗ってやって来るようです。同じディスクとはとても思えない美しくて潤いを持った響きです。

 ちょっとソフトフォーカス気味なのはパワーアンプのゴム足の成せる音のようです。これはあとテストして聴いて頂くとしまして、次はスチールドラムの入ったカリビアンミュージックです。このディスクも前回のクリニック後から楽しめるようになったと嬉しそうな顔でかけてくれました。


 『これは、もっと凄い音になっていますね!』。


 インシュレーターPB-BOSSのテスト


 それではパワーアンプから順番にインシュレーターを入れてその効果を確かめて頂きましょう。Sさんはこれ以上良い音のイメージは出来ないほど現時点の音に満足しきった様子ですが、私の頭の中にはまだまだ何段階もの出し物が用意されておりますので、こんな音で驚いてもらっては困るというのが本音です。

 アグレッシブで熱い音のするPB-BOSSを3X2の6個使用します。1個24,000円もしますのでこれだけでもう144,000円です。インシュレーターも電源ケーブルも2台分必要ですから、モノラルアンプは本当に高くつきます。

 しかし、アンプも良い、ラックも良いから、実に凄い良い音になります!。 これだけの大きな効果が現われるのなら、今までの失敗の数から比べれば、また費用対効果を考えてみれば『安いもの!、安いもの!』と自分に言い聞かせるのがマニアの性・・・。そんな風にT.Sさんの顔には書いています。


 AC-Music Conductorの出番です


 「次にロックでも掛けて下さいますか?」。おもむろに出してきたディスクはローリングストーンズです。大分ガツンとくる音が出るようになりました。ただトールボーイ型スピーカー特有のドロンとした低音はまだ若干残っています。これを解決するには前ノリ気味にスピードを上げてグルーブ感を出すしか他に方法はありません。スピーカーユニットに対してスピードを上げるといっても押しの強さだけでは駄目で、むしろ押しより引きの速さが大事です。

 こんな鳴り方の時こそ、その効果を分かって貰うチャンスです。AC-Music Conductorの出番です。強引とも思えるぐらいのドラマーが「俺について来い!」といわんばかりに突っ走るように変わるんです。

 「30分だけ時間を下さい」。

 「見違えるようになりますから・・・」。

 前回既にDAコンバーター専用のAC-DA614を買って頂いていますので思いの他進行具合が速いようです。この調子でしたら20分もあれば足並みが揃います。ほんの4〜5分ぐらいリバウンド状態があったぐらいで聴くに堪えないようなことはありませんでした。

 ソナースファベールの中にあってはクレモナはオールマイティータイプなのですが、それでも一般的にはクラシック寄りのバランスのスピーカーである事には間違いありません。

「それがですよ!、そのバリバリのロックが、JBL顔負けのような鳴り方もこなすようになるんです」。この音を現場で体験しない限りはどなたも信じてくれないでしょうネ・・・。


 クレモナ本来の品性の良さを引き出してみたい


 本来出るはずのない猛々しい音も出るようになり、大半の項目は合格ですが、ここは本来のクレモナの持つ品性とか雅(みやび)な音にもっと磨きを掛けたいものです。その役割を担うのは昨年の暮れに発表したインシュレーターPB-REXWです。

 これをジェフのプリに入れてやるのです。10センチほどしかない奥行きですので見た目の安定感も考慮に入れながら、広がり感をもう少し出したい気持もするので、システム全体の中でもここ1ヶ所だけは前2点後ろ1点支持にします。

 モーツアルトのバイオリンコンチェルトでテストです。

 ホッ・ホッ・・ホ・・・こう来たか!。

 どうやら成功のようです。

 ラックのメイプル材が効いていますね。胴鳴りの響き具合とその音色が実に本物の楽器のように聞こえます。REXもtype4になってそのフォルムがガラッと変わりました。薄くスマートになったのです。そうした華奢な控え気味の音の中にも芯のあるしなやかさが見えて取れます。ロックからいきなりバイオリンコンチェルトですからステレオにとっては過酷なテストを強いられるのですが、そんな心配もいとも簡単に払拭してくれました。一応これで振動面における対策は全て完了です。



 カイザーウェーブ倍音の乗り方に不満


 それでも私の計算とかなり音の違いがたった1点だけあるのは初期の段階から大きく変わることはありませんでした。それは部屋中を幾重にも包み込むような倍音の欠落です。部屋の寸法比や形状はよく出来ている方なのでそれが出ない訳は絶対にないはずです。

 システムの基礎体力が上がる度に、ここまでで2度ほどスピーカーポジションをベター、ベストなポイントに動かしても普段の4掛けぐらいの反応しか現われないのです。

 「それでは、目の前にあるキースジャレットのマイソングを聴かせて頂けますか?」。

 ピアノもソプラノサックスの音ももう少しこのディスクはライブな鳴り方のはず。

 原因はどうやらスピーカーの後ろにある拡散パネルです。

 オーディオのセッティングが良くない場合には吉と出る割合が多いのですが、セッティングの完成度が高い状態の場合は劇薬であるが故に逆効果に変わり始めるのです。拡散パネルは音と音の重なりを許しませんのでこういう結果になるのです。

 何事もさじ加減です。もう少しせめてこの半分ぐらいの面積の物でしたら微調整が取りやすいのです。お客様の用意された物は出来るだけ使う方向の考えでセッティングをするのですが、意を決して口を開けました。


 「両脇の2枚をテストに外しても宜しいでしょうか?」。

 結果は如何でしょう!?。

 私の頭の中で計算した通りの音になりました!。

 直接音と間接音、そしてデッド&ライブな感じが丁度良い具合になりました。倍の音量になったような変わり方です。どの楽器も目の前で演奏しているような実在感があります。遠近感も良く出ています。そして演奏者が楽器に込めた力加減の微妙なタッチもよく分かります。もちろんイモーショナルな面もいうまでもありません。


 これでやっと胸をなでおろす事が出来ました。


 パッシブ型エネルギーバランサー


 これを出してしまえば今日は逆立ちをしても何も出ません

 そのこれとは何でしょう?。

 スピーカーアタッチメントです。

 T.Sさんはジャンルにとらわれずあらゆる音楽を聴くバランス感覚の優れた方です。私と全く同じオーディオの楽しみ方なのです。従いまして私の価値観通り音を作って行けば間違いなく気に入って下さるので私にとっては一番やり易い仕事なのです。

 ですから大変居心地も良い訳です。私好みの最後の仕上げは、さらにもっとリアルで実在感のある音にしたいのです。楽器の数が多くなればなるほどステレオとしての能力は高いものが要求されます。

 実はスピーカーユニット間に埋没して耳にまで入って来ない音が沢山あるのです。伝送経路の途中でそうなるのか?、ネットワークの持つ欠点なのか?。一つの線径で出来たスピーカーケーブルでは到底その情報をスピーカーから引き出す事が出来ません。

 その問題点を解決すべく私独自の地道な努力の積み重ねで得たノウハウグッズです。わずか5センチちょっとの小指ぐらいの物ですが、その中には太さの違う6種類のケーブルをブレンドしてあります。分かり易く言えばパッシブ型エネルギーバランサーなのです。

 叩く音、擦る音、引っかく音、息を吹き込む音、揺れる音、それら全ての緩急と強弱が精密に音となって映し出されなければなりません。その多種多彩な音を僅かでも漏らす事無く再現するにはシンプルな方式と複雑な物との融合があって初めて成せるものです。その最後のディテールの表現の為に誕生した物です。

 まるで演奏会場にいるようです。

 これが私が理想とする音です。

 あらゆる種類のディスクを走り聞きしてみてください。





 3度目の訪問

 ケーブル類の大幅なグレードアップ


 T.Sさん宅では試みる度に好結果が出ますので、お持ちして試聴頂いた製品のほとんどが導入につながっています。本当は5度目の訪問になるのですが、今回まとめて書いております。

 電源周りのグレードアップは、電源タップとパワーアンプのACケーブルを残すのみです。ナイアガラJr.3の給電とパワーアンプにはAC-RL(Maximum)を計3本用意しました。


 前回プリとCDにはローゼンクランツのACケーブルに変えていたので、それらとの相乗効果で素晴らしい結果になりました。安定度が増したというのでしょうか、リズム感も良くなりましたし、楽器の音色も随分と魅力的になりました。


 最高級スピーカーケーブル/SP-RGB3


 一番安いMusic Spirit Basic1から一気にプラスマイナス分離型のローゼンクランツの最高級スピーカーケーブルにチェンジです。

 この音の差はカイザーサウンドの試聴室で経験済みなので、私は良く分かっておりますが、T.Sさんにとっては一番高鳴る瞬間でしょう。

 目にも鮮やかなRGB3の存在感は大いなる期待を感じさせてくれます。体脂肪率の低かった身体に、ふた回りほど筋肉がついてがっしりとした体型に変わったような音の変化です。

 本当に安定感のある音です。目をつむればとてもトールボーイタイプのクレモナの音とは思えません。ガツンと来るドラムの音などは実物大のようです。

 ホールの響きも出てきました。当然の如く楽器の位置関係もハッキリと見えるようです。一番は音楽のノリが良くなったことが大きいと思います。


 試聴にたっぷりと時間を取ります


 T.Sさんは色々なジャンルの音楽を楽しみますので、セッティングするよりも確認に時間を掛けております。二人揃って沢山のディスクを聴きますので、この最近ではどんな鳴り方に変化するのか大体の予想がつくようです。

 昔はこうした売り方が当たり前だったのですが、都会では見ることは無くなっりました。これがお客さんと店とのオーディオ本来の姿のはずなのですが・・・。





 4度目の訪問

 AC-DA(Maximum)


 数ヶ月ほど前にDAコンバーター専用のAC-DA614という素晴らしい電源ケーブルを買って頂いたばかりだったのですが、最上級のMaximumシリーズのラインナップ完成に伴い、AC-DA(Maximum)という新製品が誕生しました。

 今日はその比較試聴です。値段は倍ちょっとになるのですが、その価値は充分に感じてもらえるだけの自信作です。最上級シリーズに共通した音はといえば、それは風格にあります。そんな音を聴いたらオーディオマニアならひとたまりも無いといった感じです。


 SCD-DR1の加速度組み立て


 このモデルは初めての試みですが、アンプのTA-DR1は2度経験があります。それとほとんど同じような構造ですので、音のイメージは大体見えておりました。

 特に効果が出るであろうと思ったところは、ボンネット部分のワッシャとネジのマッチングを取るのと合わせて、ワッシャの水平方向までチェックした上で加速度組み立てを施した事でした。


 その結果は物凄い音となって生まれ変わったのです。お客様の目の前でやる作業は何一つ隠す事が出来ませんので、正真正銘の実力が試されるのです。

 加速度組み立てというのは、ネジの適正を見極めた上で配置転換し、その締め具合によって楽器のように音を調律するものです。処置後の音質向上の評価で価値が決まるのですから時価とするしかありません。

 今回は120万円の商品のモディファイですから、ある程度は理解が得られますが、定価そのものが低い場合は、いくら好結果が出たとしても3万以上はお願いし難いところがあります。


 今日の仕上げはSound Extractor


 さらに恐ろしいほどの音に化けたのが、たった7,350円のサウンドエキストラクターをそのCDプレーヤーの上にセットした時でした。

 

 部屋中が物凄い密度の音楽で溢れ始めたのです。正に音楽の洪水が起こった瞬間でした。特に素晴らしいのは官能的な部分の表現がぞくぞくするほどリアルになります。





 5度目の訪問

 信号ケーブルをBasic1からRefarence1に


 信号ケーブルをグレードアップすれば今の機器のままでは全てが完了することになります。ジェフローランドのアンプは、製造時期によってバランス端子のホットが3番だったり2番だったりで厄介なんです。


 プリのシナジーが(3番HOT)でパワーの201は(2番HOT)です。

 CD→プリ・・・・・RCA→XLR(3番HOT)
 プリ→パワー・・・・・・XLR(2番HOT)→XLR(2番HOT)
 信号系は上記の通りですが、Basic1の時はアンプの出力側のスピーカーケーブルの結線をプラスとマイナスを逆にして繋いでおりました。

 今回はどう結線する事が音にとって一番良いのか思案しました。S.Hさんは気を利かせてくれて、アメリカのジェフローランドまでメールで問い合わせてくれたのです。



 ----- Original Message -----
 
From: "T.S"
 
To: <info@rosenkranz-jp.com>
 
Sent: Thursday, November 23, 2006 12:08 PM
 
Subject: インターコネクトケーブルの件(Jeff Rowlandの極性)

 貝崎様

 先日の件、Jeff Rowlandより返事がきました。日曜の夜にすぐメールしていたのですが、時差の関係で週末は先方が後にくるので時間がかかったようです。

 回答はいたってシンプルなものです:
・Synergyプリアンプは極性をもちません。インプットからアウトプットにそのまま極性を伝えるだけです。
 
 普通のバランス・インターコネクト・ケーブルと同じです。あなたの場合であれば、CDPから2番ホットでつないでも良いですし、どこかで極性がひっくり返るのであれば、フェーズ・リバースボタンで逆相にして対応しても大丈夫です。
 
 ある環境下では極性の違いを見極めるのが難しかったり、不可能であったりする場合があります。また、絶対的極性のはっきりしないコーディングがかなりあります。

 Jeff Rowland氏の署名がありました。

 質問では、「基本的にはどちらもOKだとは思うが、例えば3番ピンが同軸のコアにつながれていて厳密には対称ではないなどがあるかもしれないので・・・・」といった質問の仕方をしたのですが、あまりつっこんだ回答は得られませんでした。少なくとも設計上区別する意図はなかったということと思います。

 ということで、すべて貝崎さんの判断でお任せいたしますので、CDP−PreとPre−Power間のラインケーブルをお願いします。

 T.S



 ----- Original Message -----
 
From: "T.S"
 
To: <info@rosenkranz-jp.com>
 
Sent: Saturday, November 25, 2006 11:40 AM
 
Subject: Re: インターコネクトケーブルの件(Jeff Rowlandの極性)

 貝崎様

 先日のメールを読み返して見ましたところ、誤解を与える表現になってるのではないか気になったので補足させていただきます。

 Jeff Rowland氏はCDP−Pre間を3番HOTでつないで、Pre−Power間を3番-2番のバランスでつなぐやりかたには言及していませんが、とくに否定もしていないと思います。

 彼の言いたかったことは特に「もともとシナジーに極性がないので、どうやっても最後のつじつまがあっていれば良いよ」というだけのことと思います。

 前回のメールでRowland氏がCDP−Pre間を2番Hotでつなぐことにこだわっているように読めてしまうのではないかと気になりメールを差し上げました。

 よろしくお願いいたします。

 T.S


 Reference1ケーブルの製作に当たって


 色々と考えた結果、セオリー通り機器の極性に忠実に結線する方法でやる事を前提に考えました。

 CD→プリ・・・・・RCA→XLR(3番HOT)
 プリ→パワー・・・・・・XLR(3番HOT)→XLR(2番HOT)
 パワー→スピーカー・・・・・・プラスはプラス、マイナスはマイナス

 こうしてバランスケーブルだけ極性が3番と2番をクロスする形で特別に作りました。それと正規の物と両方用意し、試聴の結果良い方法を取る事にしました。

 先ずはCD→プリ間のケーブルのみBasic1からReference1に換えて聴いてみます。さすが銀より高い銅だけのことはあります。情報量にかなりの差があります。

 音楽表現は基本設計がほとんど同じなので本当に良く似ています。例えていうなら、高三の兄と小六の弟といった感じでしょうか・・・。

 CINDY LAUPERのAT LASTなるアルバムを聴かせて貰いました。信じられないほど歌が上手くなっていました。ロック歌手から本格的な大歌手を狙って見事な変身を遂げているのです。それにディスクの録音バランスが素晴らしいのでついつい最後まで聴き入ってしましました。

 思い出すのはリンダ・ロンシュタットが名プロデゥーサーのネルソン・リデゥルによって大歌手になったのを思い出しました。このディスクはすぐに買わなくっちゃ!。

 
 次にプリパワー間もReference1のレギュラーバージョンに交換してアンプの出力を逆相にして聴いてみます。さらに素晴らしい音です。やっぱり信号ケーブルが揃うと良いもんです。CINDY LAUPERの声がもっと魅力的になりました。


 電気的にどこで極性調整しても良いと言ってはいたものの、果たしてどう変わるのか・・・?。一番良いと睨んでいた結線です。すなわちHotが3番と2番がクロスしたタイプです。これで初めてアンプとスピーカーの両者が正相になります。


 6曲目のバラードIf You Go Awayを聴きます。「これは凄い!全く別物です」。彼女は紛れもない大歌手です。本当に聴き惚れてしまいました。

 Jeff Rowland氏自身からあった手紙の内容とは大違いでした。何故、『それぞれのアンプの極性に忠実に結線して下さいと』言わなかったのだろう?。大いにいぶかしがりました。


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