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「私とローゼンクランツ」的なエッセイ



 ----- Original Message -----
 From: "K.H"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Friday, April 15, 2005 11:45 PM
 Subject: ケーブル試聴レポート
 
 カイザーサウンド
 貝崎 様

 いつもお世話になっております。K.Hです。「RGBケーブル発売記念、試聴レポートコンテスト」のレポートをお送りいたします。書いているうちに、ケーブルの試聴記というよりは、「私とローゼンクランツ」的なエッセイとなってしまったのが、少々お恥ずかしいです。どうかよろしくご査収ください。


 「ローゼンクランツ」から、この度RGBシリーズというケーブルが発売される。テーマは被膜の色による音の設計という、今だかつてない概念によるものである。この話を最初聞いた時には、正直言って驚いた。これを聞くオーディオファイルの中にも、きっと目を白黒させて、「素材や線材ならともかく、色でどうやって音を設計するのか?」とか「色と音の関連性ってあるのか?」などと面白おかしく話を濁すか、きっと聞く耳を持たず、ただ通り過ぎる人もいるだろう。数年前なら私もまさにその一人。そんな話はてっきりオカルトか何かだと、決めつけて疑わなかった。音も聴かずに。

 しかし、今の自分はちょっと違う。「普通の人(のシステムの使いこなしと耳)なら、その違いはわからないだろうけど、それがとてつもないレベルに達した時、(色による音の違いを再生できるケーブルが現れても)あり得ない話ではないな・・・」と素直に思うのだ。なぜ私がそう思うようになったのかというと、それは他でもない、貝崎さんの影響なのだ。しかし断わっておくが、私は聴きもしない製品の宣伝を、そのまま鵜呑みにするほど単純ではない。私は今まで彼に何度も会い、そのたびに彼のオーディオに対する「執念」ともいえるような情熱と、また何よりも、与えられた機器を使いこなすといった、彼のシステムセッティング能力に何度も感服させられてきたからだ。

 今まで一度でも、自宅クリニックや、デモでシステムをセッティングする彼の姿を見たことのある方ならわかるだろう。貝崎さんの凄さはその尋常ならざる「耳」にある。普段我々オーディオファイルは、自らの愛機のセッティングに、寝る間を惜しんで日々時間を費やす。位置や場所、物や長さ、重さやバランスを変え、時には電気そのものに手を出したりと、ありとあらゆる物事を試しては、その変化に一喜一憂している。
 しかも、それらはやればやるほどキリが無い。一長一短で決まるものでは決してないからだ。しかし貝崎さんの場合、こうした通常オーディオファイルが数年もかけて行う作業を、わずか数時間で行ってしまう。しかも、あらかじめ事の変化を予測した上でそれらを行ってしまうから、何とも「凄い」としか言いようがない。

 また、彼が何かをするにつれて、音の変化はまるでアンプのボリュームを回すかのごとく、リニアに、しかも終始一貫性を持って、継続的に感じられる。だから、普通の人はまずその変化に耳がついていかない。困惑するのだ。「こんなに急に音が良くなってたまるか!?」と。最初の音が脳で「正規化」される前に、さらなる音が紡ぎ出されるからだ。
 誰かがそうした彼のテクニックを「カイザーマジック」と言ったが、これほど絶妙な例えはないだろう。マジックといえば、大概どこかに「タネ」があるものだが、彼の使うマジックにはタネもない。それが証拠に、彼は今そこにある機器だけで「事」を行ってしまう。ハッタリも誤魔化しも効かない真実の世界なのだ。

 「こうした神のような耳を持つ彼が作る製品は、いったいどんなものなのだろう?」ある日、それを確かめたくなった私は、ローゼンクランツの代名詞でもあるインシュレータを手に入れた。見た目も特徴的なそれは、形こそ小さいが、魂のような存在感がある。何か、どこか貝崎さんご自身のような、とでも言えば、少々言いすぎだろうか。早速それを機器に履かせて聴き耳を立てた。

 音はどうだろう?確かに個々の音像はシャープに、「ハッ」とするような音場の細かいニュアンスもよく出る。が、しかし、音域バランスは高域よりに偏り、多少ピークも感じる。諸刃の剣だ。今度は貝崎さんがそれを行う。傍から見れば一見大した違いはないような数センチ、数ミリの調整を施す。貝崎さんは、まるでインシュレータと対話しているかのようだ。
 リアルタイムで流れる音楽の表情が、じわりじわりと精悍さを増した。まるで「空気のフォーカス」でも合せるかのように。それから数分経過しただろうか。ある時、自分の周りの空気が一瞬「カチッ」と切り変わるのに気が付いた。セッティングがピンポイントにハマった瞬間だった。「バランス」?「再生レンジ」?そんな言葉はいつの間にか、どこかへいってしまっていた。音楽だけがそこにはあった。

 「そうだ、自分はこれ(音楽)を聴くために、オーディオを始めたのだった・・・」


 そんな至極当然なことが、ふと心に浮かんだ。そして、オーディオシステムのことを自然に忘れることができた。こうして、自分の使いこなしの甘さと、ローゼンクランツの秘めたる能力を思い知らされた私は、ますますローゼンクランツにのめり込むこととなった。製品にのめり込んだのではない。その使いこなしの「奥深さ」に惚れ込んだのかもしれない。

 そうして、私とローゼンクランツとの「酒とバラの日々」?が始まった。くる日もくる日も耳を澄ませ、音楽を聴きながら、ほんの指先感覚で音を探る日々。それ以来、私は音楽とオーディオを、実に「だらだらと」することはなくなった。オーディオに向かう厳しさと、その道の険しさを知ることができたからかもしれない。「貝崎さんに一歩でも近づきたい」いや、それ以上に、「音楽にもっと近づきたい!」。忘れかけていた思いが、ぐっとこみ上げてきた。「この道を極めれば、必ず何かが見えてくる」そう思えるようになったのも、この時からかもしれない。私はその時、こう決心した。「ローゼンクランツを徹底的に使いこなしてやる!」と。

 私にとっての、「ローゼンクランツ」とは、まさにそういった製品なのだ。そして、そこから生まれたこのケーブルが、この先一体どんな音楽を聴かせてくれるのだろう。思いは膨らむばかりだ。


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