トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅ウイルソン・システム6のモディファイ

ウイルソン・システム6のモディファイ



 暇が結んでくれたご縁


 9月に入って暇になり一段落しました。商品開発等の仕事は自分で作ることですからやろうと思えば幾らでも仕事はあるのですが、お客さんからの依頼の仕事が途絶えるなんてここしばらく無かった事です。

 一体どうしたんでしょう。こんな調子だと他所様はさぞかし暇なんだろうと推測いたします。連休でもあるし、大田区のHさんに電話を入れてみました。彼はウイルソン・システム6を持っているので、いつか暇があれば本格的にしごいてみたいと思っていました。

 「H さん!?、この最近暇なので、遊び方々クリニックにお邪魔しても良いかしら?」。

 『は、はい、結構ですよ・・・』。

 「じゃあ!、今日は如何ですか?」。

 『えっ、今日ですか?、今日は、都合が悪いので明日は如何でしょう?』。

 と言うような調子で、15日の敬老の日に訪問の約束をしました。その電話を切った直後に、今度は茨城県のI さんというお客さんから同じ日の午前中に試聴に行きたいとの連絡が入りました。えてしてこうしたもので、にわかにその日は忙しい日に早代わりです。畳の部屋で上手く鳴ってくれないとの悩みをお持ちのI さんには、サウンド・ステーションの注文を頂きました。


 大変高性能で綺麗な音


 2時〜3時の間には、と約束していたHさん宅には少し遅れて3時半ごろに着き、色々とクリニックを終えて失礼した時には夜中の1時を過ぎていました。その10時間にも及んだクリニックの内容とはどんなものだったのか?。

 14畳ほどの洋間にかなり内振りにスピーカーはセットされております。部屋の後ろ半分の空間が使われていないように感じました。フラッターエコーが気になるからでしょう、部屋のあちこちには沢山の吸音材が目に付きます。

 私が感じた音の第一印象はと言うと、大変高性能で綺麗な音でした。しかし一番肝心な感情表現が埋没して音楽の中に見い出せないでいる状態にあるようです。システム6から牙を完全に抜いてしまったように感じたのです。

 ご本人はもっと澄んだ綺麗な音にしたいとおっしゃる。

 その言葉を聞いた私は、頭の中で・・・、

 「さらに音楽から遠ざかってしまうのになぁ・・・!?」と独り言。


 問題点を洗い出す


 おもむろにシステムの問題点を探って行きますと、スピーカーの下に敷いてあるタオックのオーディオボードの響きの方向が両方とも後ろ向きになっています。これを直さない限り、音楽のエキスが出ませんので何とか説得しなければなりません。

 幾ら私が歯に衣着せぬ語り口とは言っても、ご本人が不愉快に感じるような表現は避けなければなりません。

 「このベースを180度前後を入れ替えるだけのことですが、これをしないと何をやっても効果が出ないので騙されたと思ってやってみませんか?」。「もしも、悪くなったと感じれば元に戻せば済む事ですから」。

 彼は今ひとつ乗り気ではないようです。それはそうでしょう、そんな事で激変するなんて誰だって信じられるはずありませんもの。私が反対の立場でもそんな事を言う奴は怪しいと疑って掛かるでしょう。

 それでも強く勧める私の勢いに押されるようにして事が始まったのです。床やボードに傷をつけないように古雑誌の上に一旦スピーカーのスパイクを乗せ、二人で慎重にそのベースを外しに掛かります。

 その後、確認の意味もあって向きを変えた状態の音を聞いてみますと、充分に納得して貰えたみたいです。


 フラッターエコーを利用する


 色々問題点はあるでしょうが、私の診断では、もう一つの大きな要素は部屋とスピーカーとの位置関係が上手く取れていない事にあるようです。したがって、数ある処方箋の中から、先ずは既に買って下さっているカイザーゲージの正しい使い方の説明に入ります。その一番のポイントは、フラッターエコーが出やすいように敢えてスピーカーが壁面に正対するように置いて音出しすることです。

 オリジナル音楽波、反射波、後追い波の3つのカイザーウェーブが正しく重なれば、フラッターエコーが気にならなくなるのです。その為には激しくフラッターエコーが出てくれる方がそうでない理想のポイントを見つけるのに都合が良いのです。この発想が普通の人には出来ないのです。

 少しオーバーな表現になるのは承知で言いますと、相対する面がガラス同士であっても、「カイザーウェーブ」が上手く重なればフラッターエコーは気にならなくなるのです。このような説明をした後に、実際にスピーカーの位置調整を行います。


 カイザーウェーブの合わせ込み


 右チャンネルのパワーアンプの電源を切り、左のスピーカーの音だけで適正なスピ-カーの位置を探り出す作業をHさんにも分かるように聞くポイントを説明してから始めます。誰でも分かり易いのは人の声です。

 「何でもいいですがメディアムテンポのボーカルを鳴らして頂けますか?」。彼が選んだのはホリー・コール。彼女の声は普通の女性より少し低いのが特徴です。下腹から声が出ているか?、あるいは喉の先からしか出ていない力のない声なのか?。

 いいですか?、よく憶えていてくださいよ。今まで置いてあった位置に近い場所ですが、これを任意のスタート位置と決めて始めましょう。次は、正反対のエネルギーバランスの関係になる青い波の半波長分後ろにずらした音を聞いてみましょう。

 「如何ですか?、どちらが良いですか?」。

 『明らかに今回の方が良いです』。

 じゃあ、これは如何ですか?。

 『う〜ん?・・・、やはり、2回目が良いと思います』。

 こうして、細かく前後調整をし、慎重に追い込んだ左のスピーカーと同じになるように「カイザーゲージ」を使って合わせます。この時点で出た音はかなり凄い音になり別物に変身してしまったようです。Hさんも相当気に入った様子で、正直に顔の表情に表れています。

 「実は、一番最初にボードを入れ替える時に今ひとつ乗り気でないようにお見受けしたから、今回はご縁がないのかなぁと思ったりもしたんですよ」。

 『いえ、いえ、そんな事ありません、とことんお願いしようと思っておりました』。


 ウイルソンのシステム6と真剣勝負


 この後、私はお客さんにとんでもない提案をしてしまったのです。

 「この最近、”加速度配線”とか”加速度筐体”、

 ”加速度組み立て”と言った訳の分からない言葉を連発しております私ですが、

 システム6を倍の価値のスピーカーに変身させるだけの自信があるのですが、

 思い切ってやってみられませんか?」。

 
 「ここにあるウイルソンのスピーカーユニットのエネルギーの方向を調べたところ、

 6本とも完璧に軸上に揃っております」。

 「これだけ管理されたスピーカーは滅多にあるものではありません」。

 「この状態の上に、更に”加速度組み立て”という私のノウハウを注入したらとんでもない事になります」。

 
 「今までのクリニックと併せて、全てひっくるめて10万円でやらせてもらいます」。

 「もちろん処置後の音がお気に召さなかった場合は代金を一切頂きません」。

 「その条件で如何でしょう?」。

 どこかの調子のいい物売りのような喋り口になってしまいましたが、

 腕を磨いたプロの出す音がどんなものか、私にとっては真剣勝負なのです。


 『分かりました、お願いいたします』。

 私の迫力に圧倒されたのか?、

 今日出して来た音に惚れてくれたのか?、

 今度は何の躊躇もなく毅然とした顔でHさんは返事をくれたのでした。


 そうとなれば、勢い私も気合が入ります。

 これからが本番です。

 いよいよ佳境に入ってきました。

 思わずポロシャツを脱ぎランニング姿になりました。

 本当にこれだけ気合が入ったのは久し振りです。


 加速度組み立て


 スピーカーユニットの全てのネジを外し、抜けの良い順番に組み上げて行きます。そのネジ締めのトルク管理にしましても、微妙にグラデーションを持たしながら締めるのです。固いところから緩いところへ向かってエネルギーは進みます。

 その自然の習性を利用し、心を澄ました状態で、ネジに加減を聞きながら組み上げて行くのです。これは誰でもが出来る事ではなく、真似をなさっても上手く行かないと思います。責任は取れない事をお断りしておきます。一番無難な方法はどれも同じトルクで均一というのがセオリーです。

 すっかり私を信用しきったのか、彼は食事の用意をするために買い物に出かけてしまいました。ちょうど片方のスピーカーが出来上がりかけた頃に食事の準備が出来上がったみたいですが、一気にやりきってしまわないと集中力が切れてしまってはいい音になりません。

 何とか、上手く仕上がったみたいです。慣らし運転をしている間に腹ごしらえをします。お寿司を用意してくれたのですが、仕事の出来栄えに呼応するかのように、これが美味いことこの上なし!。

 片肺飛行なので、この凄さはまだ充分に彼には分からないみたいです。しかし、いつも片方だけやっては聞き比べる事をしておりますので、それがこの私には手に取るように分かるのです。両方揃った時の音は腰を抜かすほどの音になるのは目に見えています。その時の彼の顔を見るのが今から楽しみです。

 緊張感を切らさないように、もう片方も仕上げることが出来ました。安堵したのか、正直言って一気に全身の力が抜けていくような感じです。でもそれは、なんとも言えない快適な脱力感なのです。


 神や仏の領域の音


 いや〜、本当に凄い音楽です!!!!!!。

 とんでもないスピーカーに変身してしまいました。

 重低音から超高域まで抜け切っていますので、

 聞こえていなかった数々の音が聞こえて来るんです。

 聴覚が何倍も覚醒されたかのようです。

 紛れもなく、神や仏の領域の音と言ってよいでしょう。

 あまりにもその音が凄いので、スピーカーベースを含めて床の問題が一気に露呈される格好になりました。その速さ、そのエネルギー、その表現力、全てについて行くのが精一杯の状態です。さてさて、これだけのスピーカーとなった強力なパートナーと、Hさんは今後どう格闘していくのでしょうか?。その日は寝なかったのでしょうか朝の5時過ぎに次のようなメールを頂戴したのです。


 昨日はお世話になりました。

 
 ----- Original Message -----
 From: "K.H"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Tuesday, September 16, 2003 5:18 AM
 Subject: 昨日はお世話になりました。


 昨日は深夜までありがとうございました。

 貝崎さんを自宅に招くにあたり、私には最初大きな戸惑いがありました。それは他でもなく「オーディオは自分自身で調整してこそのもの・・・」といった考えが強くあったからなのです。そして、それはほとんど全てのオーディオファイルに共通した考えだと思います。

 ところが、今回貝崎さんの訪問を受け、私の考えは少し変わりました。いや、柔軟になったとでも言うのでしょうか。根底の部分は今でも「自身で」の考えに違いはありません。ただ、私は今回の訪問で貝崎さんに教えていただいた様々なノウハウの中で、私は自分の中で、自分ができる事とできない事の明確な”線引き”ができたように思うのです。

 「できる事」は私のオーディオ人生の中で今後も活用しうる莫大な財産となったと言っても過言ではありません。また「できない事」は少々オカルトっぽい(失礼、俄に信じがたいという意味で)所はありますが、結局のところ、全ては結果(演奏される音楽)が物語っていました。

 その卓越した技の数々、素直にこれは「認めざるを得ない事実」としか言いようがありません。いろいろ感じるところはあるのですが、前向きに考えるのみです。貝崎さんに教えていただいたこと、見せていただいたことのうち、そのうち3割だけでも自分の血となり肉となればよいと思います。

 最後に、このホームページを読んでいる方に言いたい。もしあなたがオーディオに対して貪欲であるのならば、貝崎さんの訪問から必ず何かを得られるものと思う。自分にプラスな部分だけを得ればよく、マイナスな部分は無視して捨てればよいだけのことだ。

 オーディオは行動し考えることに意味があるのだとよく言われるが、彼とのコンタクトはまさにそうした好機なのではなかろうか。私はそうした志を生涯忘れたくないと思う。

 K.H


 本年は大変お世話になりました。


 ----- Original Message -----
 From: "K.H"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Monday, December 29, 2003 12:26 AM
 Subject: 本年は大変お世話になりました。


 カイザーサウンド
 貝崎 様

 こんにちは、貝崎さん。

 先日はお世話になりました。大田区のHです。ホームページのお知らせ見ました。「ナイアガラJr.」のバージョンアップの件、実に楽しみです!。年明けにもぜひとも申し込みしたいと思いますので、よろしくお願いします。あれだけ激変したウィルソンの音が、ナイアガラのアップによって、さらに強力になりえるとは、今から考えただけで興奮します。

 また、本年は本当に、貝崎さんにはお世話になりました。私にとって今年貝崎さんに出会えたことは、オーディオを趣味としてきた今までの十数年の人生の中で、間違いなく最大の出来事だったと思います。

 その中でも特に、貝崎さんの訪問を受けたこと。これは私のオーディオ観を360度変えるものになりました。

 今まで機器や部屋のせいにしていた自分が恥ずかしいほど、今ここにある身近なシステムが、まさに人による使いこなしだけで、あれだけ激変する音楽と、貝崎さんのオーディオに対する厳しくも真摯なプロ意識に、私は今までの自分のオーディオへの打ち込み方の浅はかさを深く思い知らされたわけなのです。

 でも、私はあそこでこういう機会を得て本当によかったと思うのです。なぜなら、今、本当にオーディオが楽しくてしょうがないからなのです!。そして何よりも、あの時(貝崎さんの訪問時)以上の音が出せるようになった今の自分がいるからなのです。


 これまでは、本当につらかった!。

 迷宮に潜り込んで、のたうちまわっていた・・・。

 でも、貝崎さんは私にただ問題を投げかける(東京視聴室の素晴らしい演奏を聴かせる)だけでなく、

 きちんとその責任までとって(自宅訪問で様々なノウハウを教授して)いただいた。

 私にとって、これ以上の説得力は今だかつてありません。

 本当にありがとうごいました。

 
 最後になりましたが、貝崎さんのご健康、およびにカイザーサウンドのますますのご発展を、来年もお祈りいたしております。今後も素晴らしい製品と技で我々を驚かせてください。


 2004/06/11 サウンド・ステーションとリミティッドACケーブルの納品

 K.Hさんは音に大変研究熱心な方で、スピーカーの位置をカイザーゲージを使って何度も何度も調整しておられます。今回で3度目か4度目の訪問になるのですが、お邪魔する度に音が変わっていて私も戸惑うほどです。良かったり、崩れたりを繰り返しているみたいですが、それは必要であると同時に大切な事でもあります。体験した沢山の音を持っていれば、いずれ必要な時に引き出しから取り出せるようになるからです。

 ご自分でなされば、良い音を紡ぎ出すのがどれほど難しいかがよく分かるのも無形の価値の部分に眼が向く良い機会ではないでしょうか。そんな一喜一憂がオーディオの面白いところでもあるわけですね。


 信頼を得る為には地道な実演の繰り返し


 その時々に私がクリニックを施し、音の理屈や現象を実際に音出ししながら説明し、次なる目標の音を提案させて頂いております。その方法とは、今ある持ち物の使い方の場所や順番を入れ替えたりとかの、一見何でもないような小さな積み重ねの技やテクニックで音を良くする事を体験してもらうよう心掛けております。

 今日ご注文頂いたのは、スピーカーベースとしてのサウンド・ステーションとACケーブル=AC-1S(8NLimited)1.8kaiserを2本です。前回「ナイアガラJr.」をお買い上げ下さった時にACケーブルの加速度結線を実演してお見せした事がきっかけで、充分納得された上で導入に踏み切られたものと思います。Hさんとは出身が同じ中国地方という事もあってついつい私もサービス過剰になってしまうのです。

 結果からお話しますと、今日も20時から明け方の3時半までこまごまとお世話してしまいました。その中身をこれから披露させて頂きます。サウンド・ステーションにシステム6を移動させるのにそのまま滑らすという手もあるのですが、万が一スパイクで傷をつけてもいけませんので今日は安全策を採ります。

 あらかじめ要らない雑誌を敷いておいて、その上にスパイクの付いたスピーカーをザックリと載せます。一人がスピーカーの片方を浮かせている間にスパイク受けのJRU(H)をスパイクにあてがったままの状態でそっと下ろすのです。スパイク受けに向けてスピーカーを載せようとすると絶対に上手くいきません。これぞコロンブスの卵です。


 サウンド・ステーションの実力


 後はスピーカーをサウンド・ステーションの真ん中に物差しを使ってキッチリと決めます。もちろんスピーカーの位置決めは、メモに取っておいた数字を見ながら元と同じ場所に戻します。これで一旦試聴します。振動が粗方落ち着くまでには5分ほど掛かります。取り替えてすぐは色んな音が混ざったようで落ち着きはしませんが、それでも先ほどまで使っていたボードとは段違いの音がしております。まるでスピーカーが生まれ変わったように、その場にへばりついたような鳴り方から、堰を切って音楽が流れるように生まれ変わったのです。「今までの音が如何に鬱屈していたのか!」と再認識させられます。

 1曲終わらぬかという頃には、

 鯉の滝登りのように”グイグイ”と音に命が吹き込まれていくのです。

 ついつい要らぬ言葉を発してしまうのが私の良くないところですが、

 今日も次のような事を言ってしまったのです。

 「今のお手持ちのアンプを何百万円の物に変えたとしても、こうした変化は望めません!」。

 「このサウンド・ステーションの価値は400万円に匹敵すると思っております!」。

 ・・・と歌舞伎役者のように大見得を切ってしまいました。

 口にしなくても、その場の音がキチンとそれを証明してくれているのにもかかわらずです。

 「あ〜ぁ・・・、いやだ、いやだ」。


 AC-1S(8Nlimited)の実力


 一応スピーカーベースだけの音の違いを確認していただきましたので、次はこの度買って頂いた2本のACケーブルの接続です。使う場所は当然システムのトリを勤めるモノラルパワーアンプです。

 他のケーブルとの兼ね合いを考慮に入れながら何を何処にどう結線してやるかはしばし考えた上で、「ナイアガラJr.」の左から見て1にプリ、2に左のパワー、4に右のパワーと決めます。でも、もう一つリミティッドの実力が出ていません。

 現場では何があるか分らないので、ひそかにもう一つ同時に作ったケーブルを持って来ていたのをプリにも繋いで聴いて貰う事にしました。

 これが効きました。

 音楽のテンポが揃ってきました。

 これにはHさんも満足顔、ちょうど「乗り手に船」の如くもう1本追加購入となりました。

 これに気をよくしてもう1ヶ所空いているタップに意気軒昂とコンバーターを差してみました。・・・するとどうでしょう?。「Buuuuu〜n」と、けたたましい音のハムが出始めました。

 あ〜でもない、こうでもない、と調べて行く内にデジタル機器と同居させると、このチェロのパワーがノイズを拾い易い事が判明したのです。もう欲張るのは止めにしました。


 スピーカー間の間隔の調整


 この時点でスピーカーの配置は今までのままで、今日お持ちした製品による音の向上を確認して貰ったわけです。もうこの時点でかなり満足そうな様子ですが、これからが今日のクリニックの始まりです。

 それはスピーカーの間隔の調整です。お尋ねすると1.95kaiser(204.75cm)に設定してあるとの事。Hさん宅は普通の部屋に比べてかなり縦長ですから、それに見合うようにもう1波狭い1.8kaiser(189cm)の近辺で音の良い所を探し出す提案です。この最近の研究から割り出した数字(191cm)に合わせて鳴らしてみます。カイザーウェーブからは2cmずれています。色々な状況の絡み合いでカイザーウェーブから少しずれた所で上手く鳴る事が最近になって判明してきたのです。この事については別の所で詳しく述べますのでここでは省略致します。

 その結果はスピーカーから音が聞こえなくなったのです。そう言うと何か良い方向の変化に聞こえないようですが、実は目の前で演奏しているような自然な鳴り方に変わったのです。高性能なスピーカーの音から音楽に変わった瞬間でした。この音を体験された限りは、更に上の世界を知って貰わなければ今日私がわざわざ配達に来た意味がありません。


 スピーカーアタッチメントの実力


 このところローゼンクランツのウェブ上で話題になっておりますスピーカーアタッチメントです。つい最近発表したばかりのリミティッドモデルは製造が追いつかず品切れですので、一つ下のパーフェクトモデルを聴いてもらいます。伝送ロスという言葉がありますが決して無くなってしまった訳ではありません。埋もれて見えなくなっているだけです。これから出る音を聞いた人だけが体験する不思議な現象なのです。

 たった数センチ(52.5ミリ)の長さのケーブルをブレンドしただけの事なのですが、その中に「カイザーサウンド」の全てが凝縮されているのです。「カイザーゲージ」が生まれたのもこのアタッチメントが元になっております。「加速度配線技術」も然りです。色々な所で触れておりますが線径の異なる6種類のブレンドから成り立っているだけなのですが、生命体の持つエネルギーの根幹を成すノウハウがビッシリと詰まっているとしか言いようがありません。「ノウハウ」とは人が真似の出来ないものを言うと私は思っています。

 たった一つの線径の物を何百本撚り合せようと出ない音は出ないのです。それぞれの音にはその音を出すに適した太さのケーブルがあるのです。例えば太鼓に適した線径、ベースに適した太さ、人の声、ギターの音、バイオリンに都合の良い線、とこのように得て不得手があるのです。ならば「得意な者を集めて作ってやろうじゃないの」というのがアタッチメントの基本的考えなのです。

 エレクトロニクスを勉強している人ほど、普通はケーブルの先端にケーブルを継ぎ足すような事は絶対にしません。確かに基本的な考え方としては拙くはないのですが、馬鹿の一つ覚えで何事もやってみようとしないのはこれまた進歩がありません。先ず疑ってみる事も大事ですが、信じて賭けてみる事も大事です。

 同じ者(物)にずっと任せていてもそのままですが、それよりも能力の上の者(物)があったとしたら、バトンタッチした方が良い結果に繋がったり大きな効果が期待出来るのは簡単に分りますよね。当然逆の事も考えられます。ですから、同等若しくはそれ以下のものならば余分に繋がない方が良いに決まっています。


 本領発揮し始めたシステム6


 今回一番強く感じたのはシステム6はなかなか首を縦に振ってくれません。スピーカーアタッチメントを入れたあたりからロデオではありませんが、やっとカウボーイの言う事を聞き始めたという感じです。その瞬間から計り知れないような期待が胸を膨らますのです。

 すっかりカウボーイの気分になった私は最後の隠し玉に持ってきていた発売前のインシュレーターをTEACのトランスポートの下に入れてみました。そこには既にDADDYが使われています。無謀とも思える行動に敢えて出たのは果たしてどれだけの差を描き切るのか?今日のシステムのお手並み拝見といった気持ちで私自身が一番興味のある事をやってみたのです。


 ”音楽の感動”という焼印が押された瞬間


 「凄いですネェ!、ウイルソンシステム6は!」その差を見事なまでも描いてくれました。音楽の持つ迫力をそのまま出したいと願って開発したものですから、その名もPB-BOSSです。価格は未定ですがDADDYの上に位置づけされるインシュレータールネッサンスの担い手です。ダイアナ・クラールの息づかいまで聞こえてくるようになりました。また、ギターの弦の爪弾く音は今まで決して聞こえなかった音です。スピーカーアッタッチメントとのコラボレーションでしか出ない音です。

 『凄いです!』。

 『音楽を感じます!』。

 『とにかく、凄いとしか言いようがありません!』。

 この禁断の音世界に足を踏み入れたHさんの脳には克明に焼印が記されたようです。今後どんな音を聞こうとも満足出来ないほどの凄耳に成ってしまったと言っても言い過ぎは無いでしょう。ここからが本当の意味での音楽を聴く喜びの始まりなのでしょう。


 2004/06/16 アタッチメントに強烈なインパクト!


 ----- Original Message -----
 From:"K.H"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Monday, June 14, 2004 10:48 PM
 Subject: 先日はありがとうございました。K.Hです。


 カイザーサウンド
 貝崎 様

 貝崎さん、先日は大変お世話になりました。

 自分のシステムが写真入りで事細かに紹介されるのは、何か自分の(ない)手の内を見透かされたようで、恥ずかしいものですね。それにしても、先日はいい音、いや、いい「音楽」を聴くことができました。サウンドステーションの効果も凄かったのですが、あの日、私が強烈にインパクトを持ったのは、何と言っても、あの小さなアタッチメントに尽きます。

 何度か使用者の方の感想を見て、その効果は知ってたのですが、どこかに「まさか、こんなもので・・・」といった気持ちがあったのでしょう。心の隅に追いやられていたその製品は、その華奢な容姿とは似ても似つかず、あっと言わせるような存在感を見せつけました。

 
 スピーカーケーブルに何かを継ぎ足すことで音がよくなるなんて、

 まず一般的なオーディオでは、そうない話。

 でも、この効果は絶大でした。

 音が楽器の生音に変わり、異様なくらい、その場の雰囲気が再現されるのです。

 音楽に「命が宿った」とでも言えるでしょうか。

 
 その表現力は圧倒的で、スピーカーの存在が意識の中から無くなります。

 しかし、いくら美辞麗句を並べても、

 残念ながらこの効果は体験者だけしか伝わらないことを、ここに白状しておきます。

 まあ、それだけ強烈な効果なのです。

 「オーディオって、本当にまだまだわからないものだらけだなあ〜」

 そう思わないではいられない逸品でした。


 さらに、その後試した新型インシュレーター(PB-BOSS)とのコラボレーションも凄かった。人は本当によい音を聴くと、天上の幸福感に包まれるんですね。ここまで「くる音」にめぐり合えたのは、東京試聴室以来のこと。実のところ、あれ以来、私の耳はあの音にリセットされたままなのです。それからは、今の音がスカスカで薄っぺらな音に聴こえる始末。。。

 貝崎さん、図星ですね。あの音を聴いたからには、今の音、果たしてどこまで我慢できるのやら。

 PS.

 今度の貝崎さんの来訪で、実は私が一番学んだことは、やはりスピーカーセッティングの大切さに尽きます。今回のアタッチメントやインシュレーターの効果も、これがおざなりでは、明確にここまでの変化は認められなかったでしょう。改めてその重要性と難しさを認識することができました。

 ありがとうございました。  K.H


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